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「みんなっ! 一旦集合してくれ」


 ナインがのそのそとベンチ前に集まってくる。


「これから今の時点でのポジションと打順を発表しておく。午後からはケースバッティングとサインの確認をしていくから」


 副島がそう言ってオーダーを読み上げようとすると、滝音が口を挟んだ。滝音はその頭脳から副キャプテンに任命している。


「待ってくれ、副島。まだそれは早くないか? 俺らに時間が無いのは分かってる。けど、まだまだ俺らは基礎練の反復の時期だ」


 副島はその言葉に頼もしさを覚えた。滝音が副キャプテンでキャッチャーというのは、かなりの安心感がある。皆も納得するように滝音の意見に頷いていた。


「分かっとる。勉強でも何でもそうやが、今の自分にできんことをハッキリさせる方が近道や。みんなには言うてへんかったけど、実は明日、練習試合を申し込んどるんや。そこで付け焼き刃でもどこまでできるんか、やってみる」


 一気にざわざわと皆が色めき立った。月掛のテンションが上がって、ぴょんぴょんと飛び跳ねている。


「静かにせえ。じゃあ、スタメン。あ、先生から読み上げてもらうわ」


 麦わら帽子をかぶった橋じいがひょこりと副島の後ろから出てきた。「あれ、橋じい居たんだ」と、桔梗が呟き、白烏が桔梗の胸辺りを小突いた。それを藤田が歯軋りしながら見ている。


「では、一番、セエエンタア、犬走和巳くん」


「あ、先生。犬走いないんで、こっちの紙です」


「ほほっ、そうかそうか。では、改めて……一番、セエエンタア、藤田拓也くん」


 藤田が戸惑いながら、はいっと答える。次々に相撲の呼び出しのようなスタメン発表が続き、明日のスタメンが決まった。


 1 センター 藤田拓也


 2 セカンド 月掛充


 3 ショート 桐葉刀貴


 4 ファースト 道河原玄武


 5 レフト 副島昌行


 6 キャッチャー 滝音鏡水


 7 サード 蛇沼神


 8 ピッチャー 白烏結人


 9 ライト 東雲桔梗


「副島、練習試合は分かった。目的も分かる。ただ、相手はどこなんだ? 俺らの現在地を知るためにも、中堅どころの学校だったら良いが……」


 滝音が訊ねた。


「ああ、相手は…………理弁和歌山だ」


「り、り、理弁和歌山ぁ?」


 皆が一斉に声を揃えて叫んだ。橋じいがほほっと髭を撫でている。野球をやっていなかったこいつらでも充分知っている超名門、理弁和歌山。春夏通じて34回の甲子園出場、春1回夏2回の全国制覇を成し遂げている超強豪だ。


 実は理弁和歌山の監督である高鳥さんは昔、橋じいの教え子だったのだ。

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