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 五番は副島が打つ。長打力はないが、兄譲りの勝負強さが副島にはある。上位で出たランナーを必ず返す。その心だけは胸に秘め、今は部員の底上げに努める。


 六番には滝音と考えている。とても素人とは思えないほど滝音は成長している。明らかにそれは滝音の頭脳からくるものだった。


「副島、各コースに投げ分けられるか?」


 打席で滝音が副島にそう要求した。


「俺、ピッチャーじゃねえから、そんなん無理やわ。藤田に投げさせるか?」


「ああ、そうしてくれ。副島も少し休め。ちょっと試したいことがある」


 素振りしている藤田をマウンドへ呼び寄せる。副島はベンチで少し休憩をし、滝音のバッティングを見守った。


「藤田、まずは四隅にストレートを投げてくれ」


 滝音が藤田に注文をつけ、藤田がこくりと頷く。藤田が柔らかいフォームからまずは内角高めに放る。バックネットに刺さるファール。外角低めの二球目。一塁線へのファール。内角低め。詰まった三塁線へのファール……。


 打つ度に滝音は首を傾げ、軽く素振りをして何かを確かめている。


「滝音、内角は腕を畳むように打つんだ」


 副島がベンチから声を出すと、滝音は頷きながら何度もバットの出方を確認していた。


「分かってる。俺はあまり時間が無い中でデータ収集したいと思ってる。コース、球速、変化によって、どこでどうバットを出せばヒットになるか。そのデータを蓄積して、振る球と振らない球を絞りたい。そうすると自ずと打率は上がるはずだ」


 滝音らしい答えに副島は感心した。もしかしたら大会中に俺より滝音を五番、もしくは四番に据える日が来るかもしれない。


 しばらく試すような打球が続き、ヒット性の当たりは少ないながら、滝音は可能性を感じさせて打席から離れていった。



 蛇沼は打席でも一番さまになっている。


 副島は蛇沼を七番に置くことは決めていた。七番打者は意外性がある方が良い。クリーンアップを終えてホッとしたところで悩まされる打者を迎えると、相手は嫌がる。下位打線から始まる回でも、先頭で蛇沼を迎えると相手側は戸惑うはずだ。


 蛇沼はおとなしい顔をして、それでいて突然パワーを発揮したりする。打席での表情も可愛らしいような表情から、突然蛇のような恐ろしい顔に変わったりする。そして蛇沼の極めつけは、相手の裏をかくことができることだ。


 こうしてフリーバッティングをしていても、蛇沼の魅力は気付かれない。ごくごく平凡、もしくはそれ以下の打者でしかない。あくまで試合になってから蛇沼の真価は発揮されるのだ。


 一度、こんなことがあった。


 実践形式の練習をしていた時のことだ。滝音が藤田とバッテリーを組み、1番から順に打席に入っていく。犬走も月掛も、桐葉ですらバットに当たらないか、つまらない凡打かで押さえられていた。滝音が一人一人の性格から癖、打席での待ちを読んでいたからであった。唯一ヒットを打ったのが蛇沼だった。塁上の蛇沼を眺めながら、滝音はしきりと首を傾げた。


「蛇沼、さっきの打席でお前の待ちは外角のスライダーたったんじゃないのか?」


 滝音が練習の休憩中に蛇沼に問いかけた。


「うん、そうだよ。でも、生まれつき僕は思ったことと反対のことができるんだ。だから、ああやって内角のストレートを投げ込まれても平気なのさ。まさか人を欺く癖がこんなところで活きるとはね」


 蛇沼はそう言って笑った。蛇沼のこの特技は試合でおそらく相手バッテリーを混乱させるだろう。曲者の七番は蛇沼で決まりだ。

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