7
その一際大きな身体は、現代の武蔵坊弁慶とでも言ったところか。大袈裟に言えば、バットが箸のようにも見える。
道河原はボールを破裂させるほどのスイングをした。
バットがとらえた打球は、スタンドを遥かに越えていき、レフトスタンドの向こうに見えていた深い森へと消えていった。150m? いや、それどころではないだろう。
野球部全員が各々の動きを止めて、道河原の打球に見入っていた。凄まじいパワーに圧倒され、皆が言葉すら発しない。
四番、確定である。
と、言いたいところだが、この特大ホームランをかっ飛ばしたのは19球目。つまり18球目まではホームランは出ず。それどころか、18球目まで全て空振りであった。
副島がマウンドで苦悩の表情を浮かべている。
「道河原、今のインパクトしっかり覚えといてくれ。お前は当たればホームランや。ただ、当たらんと何もならへん」
「そんなん、副島が正々堂々真ん中にずばーんと投げんからやで。正々堂々と勝負に来たら俺はなんぼでも飛ばしたる」
うーむ。
副島は初めて人生でうーむと呟き、最後の20球目を投じた。ほんの僅か外角にずれると、飛行機のジェットかと思うような音が鳴り響き、道河原のバットは空を切った。
「こらあ、副島! ちょっとずれとんぞ!」
ダメだ、こりゃ。思わず副島の口からため息が漏れる。
だが、この道河原のこの図体と威圧的な顔、それに豪快なスイングが相手ピッチャーに与える恐怖心は相当なものだろう。何とかど真ん中以外を打てるようにすれば……。暫定だが、やはり四番に置くことにした。
あとは、何かのきっかけを見つけるしかない。




