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6

 続いて桐葉がゆっくりと静かに打席に入る。


 スパイクを履いて摺り足で歩く様はやはり異様だ。だが、打席に入る姿はもっと異質となる。桐葉は打席に入ると、グッと腰を落とし、右手で逆手に持ったバットを腰に差すように構える。云わば、居合いの構えだ。


 この構えを見て、副島は桐葉のバッティングには期待していなかった。そんな構えで打てるわけがない。副島はバットの持ち方、構え方を教えたが、桐葉はゆっくり首を振り、その構えを通した。しょうがねえな、と副島が投げて初めて桐葉が打った打球に副島は度肝を抜かれた。3番、クリーンアップは桐葉から始めようと副島は即決した。しかも、その打球はこの僅かな間にどんどん速くなっていく。


「桐葉、いつも通り。飛ばせると思ったら飛ばしてくれて構わん」


 居合いの構えのまま、こくりと桐葉が頷く。


 副島が投げた外角低めの球に桐葉は鋭く反応し、右手一本でボールを芯でとらえる。まるで刀に真っ二つにされたようなボールは、あっという間に三遊間を抜けていく。内角高めも、緩いカーブも右手一本でコンスタントに外野へ飛ばしていく。


 ここまで17球中17本ヒット性の当たりを続けている。構えからは想像できないくらい、正確にボールをとらえ、当たれば糸を引くような鋭い打球ばかりだ。


「副島……最後の3本は本塁打を打っていいか?」


「ああ、いいぞ」


 桐葉はそれを確認すると、すっと落としていた腰を上げて、バットを高く構えた。



「水月刀だ」


 滝音と白烏がそう声を上げた。


 そう。副島には信じがたいことだが、桐葉はここから一回転しながら打つ。


 副島は敢えて早めのストレートを投げた。

 副島の指から離れる瞬間、桐葉の身体も急速に回転し始める。上段に構えたバットが竜巻のように中段、下段と移動し、猛烈なスピードのせいでバットは曲がって見える。ホームベース上でバットがボールをとらえると、爆発音のような激しい音が鳴る。


 セオリーならば、ボールを上から叩く方が打球に角度がつき、ホームラン性の当たりは出やすい。だが、桐葉の水月刀は下からカチ上げる。力が弱いと高いフライになりやすいが、回転によるインパクト時の力が強いため、高い弾道のままスタンドまで運ぶ。


 結局、桐葉は残り3球のうち、2球をスタンドに、うち1球は空振りして悔しがっていた。


 転がすか四死球ならば自動的に三塁打になりそうな一番の犬走。パワーは無いが、器用な二番月掛。ボールをとらえる力は随一のものがあり、パワーも兼ね備える三番桐葉。


 ここまでは計算がたつ。問題はここからだ。副島はここからの打順を迷っていた。

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