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 僅かな休憩を挟むと、明らかにナインの顔色が華やいだ。次はフリーバッティングだ。我、先に、と打席で小競り合いが起きている。


「おい、こら。打順決めただろ。打順通りだ」


 子供をあやすように打席に群がるナインを引き離す。


 打順はほぼ決めている。


 1 センター 犬走和巳


 2 セカンド 月掛充


 3 ショート 桐葉刀貴


 4 ファースト 道河原玄武


 5 レフト 副島昌行


 6 キャッチャー 滝音鏡水


 7 サード 蛇沼神


 8 ピッチャー 白烏結人


 9 ライト 東雲桔梗


 藤田はピッチャー、ライトもしくはセンターとして、控える。左打者が犬走、桐葉、東雲、藤田と実は左右のバランスが良い。


 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、月掛が打席に立つ。


「1人20球な。最低でも10球はヒット打てよ。じゃあ、道河原から下はそこでトスバッティングか素振り」


 副島は大忙しだ。ノックにバッティングピッチャー、野球の基礎知識も入部した順に教えている。それでも副島の表情は晴れやかだった。本当に野球がやれる。たった10人しかいない(犬走が戻ったとしてだが)。ただ、こうして練習していると、とんでもなく粗削りたが、信じられないポテンシャルを秘めた奴らが集まった。


 副島は月掛に投じる前に空を見上げた。兄ちゃん、見てるか? 俺ら、ひょっとしたらひょっとするかもしんないぜ?


 月掛が打席に入る。独特のリズムで副島が投げるボールを嬉しそうに打っていく。

 月掛はパワーこそないものの、器用に流し打ち、20球中10本はヒットゾーンに打球を飛ばした。


「月掛、バントだ。5球、全部決めろよ」


「へいへい、分かってますよい」


 月掛がバントの構えを取る。月掛のバントはこのチームの生命線の1つと副島は考えている。


 犬走には人とは思えぬスピードがある。ちなみに非公式ながら全世界で一番速い。フェアゾーンに転がせば、塁に出られるのではないか。そこから2盗、3盗と成功させ、月掛のスクイズで生還し、あっさりと点を奪うことができる。


 よって、月掛にはバントの指導を徹底してきた。最初は嫌がったものの、勝手にライバルだと思っている広島東洋カープのとある選手がバントの達人と知ってからは、急にバントに目覚めた。もともとセンスの塊とも言える月掛にとってバントは容易だったみたいだ。


 月掛は見事に5球とも打球を殺した良いバントを決めた。


「よっしゃあ、俺、天才」


 月掛は気持ち良さそうにバットをくるくる回して打席から離れた。

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