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「つ、次。外野行くぞ! ライトー」
東雲桔梗が、帽子を取りふわりと髪をかきあげた。
「馬鹿、髪型気にしてんじゃねえぞ」
副島が東雲に怒声を浴びせる。東雲がしゅんとして、目をうるわせている。と、後ろから声がした。
「先輩、言い過ぎっす」
副島が声がした方へ顔を向けた。トス役の藤田が睨んでいる。
「は? どうした、藤田」
「……あ、いえ。少し言い過ぎかと」
「女でいられたらたまんねえんだよ。俺は野球やってんだ。ほれ、ボール」
藤田はなかなかボールを渡さない。なんだかごにょごにょと言っている。
「桔梗さんは俺が守る。俺が……」
…………藤田……。色気に完全にはまってやがる。とにかく、東雲を見つめずに、ボ、ボール、くれ。
副島が打ったライトフライは少しセンター寄りに逸れた。桔梗は帽子に入りきれない髪の毛を気にしながらも、ひらりと舞ってフライを捕った。やっぱり運動神経はたいしたもんだ。
「桔梗さん……ナイスキャッチ」
隣で藤田が呟く。
「…………」
だが、確かにあの打球を拾ってくれるなら計算が立つ。打撃には目を瞑るとして、これでスタミナに難のある藤田を、完全なリリーフとしてベンチに置いておける。無理にライトで使い続けないで良いのはありがたい。あとは、男としてしっかりと騙しとおさなければ……。ふと見ると、さらしを巻いたはずの胸が張り出してるように思う。
「おい、東雲ぇ! お前、よく捕ったけど、さらしは? バレたら終わりだぞ、お前」
「だって……痛いんだもん」
桔梗が口を尖らせて甘えたように上目遣いを寄越している。ユニフォームのボタンを上から数個外してはだけさせ、パタパタと煽っている。
「ふざけんなよ、お前! すぐ巻いてこい!」
と、副島の袖が引っ張られた。
「先輩!!!」
荒ぶる声に副島が驚いて仰け反る。
「……な、なんだ藤田」
袖が信じられない力で引っ張られている。とても後輩だとは思えない。
「先輩……明日から桔梗さん巻きますから。今日だけ、今日だけは勘弁してください」
あれだけ野球に純粋な藤田が明らかにエロい目をして訴えかけている。
「先輩、今日だけで良いですから……」
「わ、分かった分かった。もういいよ」




