2
「次ぃ、月掛ぇ! セカンド行くぞ!」
月掛充は地面に両手をつき、膝を曲げ、まるで陸上のスタート体勢のようだ。
くっ、いちいち突っ込んでたら心がもたねえ。副島は何も言わずにセカンドへゴロを打った。少し緩めの詰まった当たり。セカンドとして、このゴロは捌いて欲しい。そんな打球だった。
「参る」
月掛が跳ぶ。ボテボテのゴロを目指してグラブを差し出し、捕球した。距離にして4mほど飛んだか。月掛は捕球したまま、くるくると2回転し、着地した。どうだと言わんばかりに、にやりと笑う。
「いやいやいや、ちがーーう」
月掛が首を捻る。確かに最短の距離でボールを捕ったはずだが? そんな表情だ。
「一塁に投、げ、る、の。ランナーがいたら二塁とかホームとか。打球にどんだけ早く追いつくかじゃねえの。何度も教えてるだろ」
月掛は口を尖らす。
「なんだ、文句あんのか、月掛ぇ!」
「ゴロは面白くねえっすよ。上、俺の上のボールは死んでも捕ってやりますわ。それはノーバンで捕りゃアウトでしょ?」
グラブをばしばし叩いて、まるで頭上へライナーを打てとでも言っている。
「てめえ、じゃあ捕れなかったらジュース奢りだぞ」
副島は月掛の遥か頭上へライナーを打った。ノックの手元が狂って、ほぼライトライナーだった。とてもセカンドが捕れる高さではない。
先輩を挑発したお前が悪い。副島がそう思いながら打球を見送ると、ロケットのように月掛が空へ飛び上がった。副島はジャンプした人間が太陽と重なる姿を人生で初めて見た。がっちりとボールを掴んでいる。
「っしゃー! 捕ったった!」
「……お、おし、オッケーだ」




