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「次ぃ、月掛ぇ! セカンド行くぞ!」


 月掛充(つきかけみつる)は地面に両手をつき、膝を曲げ、まるで陸上のスタート体勢のようだ。


 くっ、いちいち突っ込んでたら心がもたねえ。副島は何も言わずにセカンドへゴロを打った。少し緩めの詰まった当たり。セカンドとして、このゴロは捌いて欲しい。そんな打球だった。


「参る」


 月掛が跳ぶ。ボテボテのゴロを目指してグラブを差し出し、捕球した。距離にして4mほど飛んだか。月掛は捕球したまま、くるくると2回転し、着地した。どうだと言わんばかりに、にやりと笑う。


「いやいやいや、ちがーーう」


 月掛が首を捻る。確かに最短の距離でボールを捕ったはずだが? そんな表情だ。


「一塁に投、げ、る、の。ランナーがいたら二塁とかホームとか。打球にどんだけ早く追いつくかじゃねえの。何度も教えてるだろ」


 月掛は口を尖らす。


「なんだ、文句あんのか、月掛ぇ!」


「ゴロは面白くねえっすよ。上、俺の上のボールは死んでも捕ってやりますわ。それはノーバンで捕りゃアウトでしょ?」


 グラブをばしばし叩いて、まるで頭上へライナーを打てとでも言っている。


「てめえ、じゃあ捕れなかったらジュース奢りだぞ」


 副島は月掛の遥か頭上へライナーを打った。ノックの手元が狂って、ほぼライトライナーだった。とてもセカンドが捕れる高さではない。

 先輩を挑発したお前が悪い。副島がそう思いながら打球を見送ると、ロケットのように月掛が空へ飛び上がった。副島はジャンプした人間が太陽と重なる姿を人生で初めて見た。がっちりとボールを掴んでいる。


「っしゃー! 捕ったった!」


「……お、おし、オッケーだ」

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