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 県予選まであと1週間となった。


 副島はメンバーが揃った直後に奈良の合宿場を押さえていた。個々の能力はなかなかのものがありそうだが、ここまでルール説明に費やしてしまっている。三日ほど野球漬けにして、叩き込んで、それでもどうなることやら……。


 とにかく時間がない。だいぶ、ない。


 心配した雨もなく、合宿場は晴れ渡ってくれた。突然の合宿にもっとぶーぶー文句を言われるかと思ったが、手作りで作った行程通りに全員がグラウンドに早朝から集合していた。


「副島が一番遅いじゃないか」


「すまんすまん。もう時間がない。決めたポジションについてくれ。野球は守りだ。徹底的にノックいくぞ!」


 全員がグローブを叩きながら、守備位置につく。


「ノックいくぞー! ボール、ファーストォォ! よし、サードォー!」


 蛇沼神(へびぬまじん)が華麗に強めのゴロを捌く。さすがに二年生から野球をやり始めてメキメキ上達しただけはあり、スローイングまでのステップも良い。蛇沼の糸をひくようなボールがファーストへ。


 パーーン


 とてもミットで捕球した音ではない生々しい音が鳴った。ノックした副島がファーストを見ると、道河原玄武(どうがわらげんぶ)が、素手でボールを掴んでいる。


「いやいやいや、道河原、駄目だって! ファーストミットの使い方教えたやん」


 ファウルゾーンにミットを放り投げている道河原に駆け寄る。


「いや、こんな防具に頼っていては伊賀者には勝てん」


「……ぼ、防具……。そうかよ。………………し、試合出られないからよぉ、ミット使ってくれな。よ、よーし、次ショートォー!」


 副島がノックバットを構えると桐葉刀貴(きりはとうき)が目を閉じて腕組みしているのが見えた。


「おいおい、桐葉! ショートいくぞって! 目つぶってんじゃねえぞ!」


 桐葉の体勢は変わらない。


「……構わん。打て」


「…………う、打つぞ。じゃあ」


 気持ちの乱れか、副島の打球はセカンドベース付近へ強く転がった。


「あ、ごめっ」


 桐葉は打球音とともに目を開き、全く無駄のない動きでセカンドベース後ろへステップを踏んだ。ステップというより摺り足と言った方が近しいかもしれない。そのまま流れるように捕球し、一塁へ投げた。

 パーーーン。例により、道河原が素手で掴む。さっき言ったばかりなのに……。


「う、うん。まぁ、うん……オッケー」


 夢に描いた各ポジションへのノック。副島は嬉しいやら虚しいやら複雑な気持ちを抱いてバットを握る。まさか忍者たちと甲子園を目指すことになるとは思わなかった。

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