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そんな副島と藤田が頑張り続けて迎えた冬の日。
グラウンドに三人目の野球部員が現れた。各部の主将たちは目を疑った。
「え……蛇沼?」
三人目の野球部員は、ひねくれ者の蛇沼神だった。いつもひねくれていじめられていた蛇沼が、にこにこしてボール回しをしている。
「どういうこった」
皆が不思議そうにグラウンドの隅を見つめていた。
「蛇沼ってあんなに大きい声出せるんだな。ま、でも、副島良かったやん。三人目入って」
「まぁ、それでもあと六人か……。もう他に部活やってなくて運動神経良さそうなのって、どの部活も誘って断られてるからなぁ。あとは一年とか誘わないと厳しいだろうな……」
来年、副島は最終学年を迎える。
夏の全国高校野球選手権大会、県予選登録メンバー締切まではこの時点で半年もない。どの運動部の主将もここからあと6人を集めるのは至難の業だと思っていた。
桜が三年生を見送り、二年生たちに三年生の椅子を譲る。
今年も副島は新入生を前にして、野球部員募集のブースに座っていた。今年も校門に一番近い不利なポジションだ。
それでも今年は藤田と蛇沼がいて、心なしか雰囲気も明るい。ここで一年生さえ集まってくれれば……。副島、藤田、蛇沼は大きな声を出して勧誘し続けた。
「一緒に甲子園目指しませんか!」
「俺らと一緒に野球やりませんか? 初心者歓迎!」
だが、結果は残酷だった。
甲子園を目指せる訳じゃない。かといって、気軽なゆるい部活でもなさそうだ。新入生は、一人も野球部への入部届を出さなかった。
「かわいそうに。終わったな、野球部」
各運動部の新主将たちは、副島の甲子園を目指す物語が終わったと確信した。
野球部の部室ではさすがに下を向く三人がいた。
「すまん、蛇沼、藤田」
「仕方ないっす。今は野球やらせようって親も少なくなってきてるし……」
藤田がうなだれてそう返した。




