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甲賀忍者、甲子園へ行く[地方大会編]  作者: 山城木緑
10. レフト副島とピッチャー藤田
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2

 副島が二年に上がると、待ちに待った相棒が現れた。


 入学式後に甲賀高校では校舎出入口から正門まで、部活動の勧誘ブースが設けられる。サッカー部……テニス部……陸上部……と、部員数の多い順に出入口から長机のブースが並べられる。野球部は運動部最後尾になる正門前にひとつだけ長机が与えられた。


 正門に辿り着く前には部活動を決めているか、帰宅部か。正門まで歩いてくる新入生はどちらかだ。


 次々に新入生たちが通りすぎていく。野球をやる子供は最近では場所の無さから減っている。子供の頃に野球をやっていた子たちは少しでも甲子園に出られる可能性の高い学校を目指す。


「準絶滅危惧種だな……」


 そんなことを呟きながら、長机の上で手を組んだ副島は、諦めるように通りすぎる新入生たちを眺めていた。少しあくびを噛み殺した時だった。


「あの……すみません」


 ひょろりとして優しそうな顔をした新入生が話しかけてきた。帰宅部か文化部に決めている子だろう。


「ああ、駅までの道かな? この正門出て右に曲がって……」


 


「あ、いや、違うんです……」


「ん? どこかの部活探してるん?」


 ひょろりとした新入生は、顔をきょとりとして困っている。


「いや、僕、野球部入りたいんです」


 副島はしばらく何を言われたか分からず目をぱちくりさせ、理解するとその新入生に抱きついた。


「ちょ、ちょっと、どうしたんですか、先輩!?」



 新入生は藤田と言った。


 撫で肩でほっそりしていて、とても中学で野球をやっていたとは思えない。部員が入ってくれたのは涙が出るほど嬉しいが、甲子園を目指していくぞ! という目標は夢のまた夢だな。副島はそう思った。


 翌日。ユニフォームに着替えた副島が、一人にしては広すぎる部室を出る。ひとつ小さな息を吐き、副島は嬉しそうにグローブをはめた。藤田が入部してくれた。甲子園に行くのは置いておいて、とにかく今は二人で野球を楽しもう。それに、せっかく入ってくれた藤田をがっかりさせないために、これからは部員集めを頑張らねば。


 グラウンドには既に着替えた藤田が待っていてくれた。


「わりい、藤田。ストレッチしよか」


「はいっ!」


 二人で背中を合わせて身体を伸ばす。副島は背中合わせになったとき、涙を流しそうになった。二人って良いな。


「藤田ぁ、キャッチボールすんぞー」


「はーい、了解です! お願いしまーす!」

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