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「ちっ、俺はここで修行してんだ。私有地だかなんだかしんねえが、お前らが出ていけっつーの」
充がぺっと唾を吐いて、目の前の男を睨むと、男は静かに笑った。
「てめえ、何笑ってやがる」
「危ないぞ、足もと」
男はそう言って、くいくいと顎で充が立つ枝を指した。
「あぁ?」
充が更に睨むと、音もなく、足もとが無くなった。立っていた枝が、無い。慌てて隣の枝に移ろうとしたが、その枝が大きく揺れた。その枝がある大木自体が根本から音なく切られ、崩れ落ちる。
充が慌てて他の木に飛び移ると、大木は大きな音をたてて地面に倒れた。
「あーあ、刀貴、もう斬るなって言ったのに」
倒れた大木の麓に長い刀を持った男がいた。
「ここは、我らの修練の場。帰れ、小僧」
目をつむったまま、刀の男が言い、充はその男に飛びかかった。
「小僧って、言う、なあぁぁぁ!」
刀の男めがけて蹴りを入れに飛ぶ。だが、脆くもその小さな身体ごと充はその体勢のまま大木に張り付けられた。充の服が手裏剣に穿たれ、そのまま大木に刺さって宙ぶらりんにされていた。
「……くっそ、なんなんだ、お前ら」
大木にぶら下げられながら、充が悔しそうに言った。
「君も忍者だろ? どこの流派か知らないが、俺らは滝音家、白烏家、桐葉家、甲賀三家だ。そして、ここは甲賀三家の修練場だ。だから、ここからは危ないから出てくれ」
「……ふうん、お前らが。噂より大したことなさそうだな。3人で群れやがって」
そう言った充の目、いや、眼球の前にいきなり剣先が現れた。
「小僧、帰れ。その跳躍力、おそらく月掛家だな。親に連れてきてもらえ。そうしたら入れてやらんこともない」
充がぎろりと桐葉刀貴を睨むが、刀貴はいまだ目を開けない。
「ちっ」
充は服を穿った手裏剣を取り、地面に着地した。
「覚えとけよ、お前ら。俺は現代の猿飛佐助だ。いつかお前らは俺の前にひれ伏す」
「ふんっ、君ごときが佐助様? 笑わせるね」
そう滝音鏡水が言うと、手裏剣が飛んできた。鏡水は月掛が投げ返したその手裏剣を簡単に掴む。
「くっそ、ばーか」
充は舌を出して、素早く枝から枝へ飛びながら帰っていった。
「元気なガキだな」
手裏剣を引き上げにきた白烏結人が、鏡水に笑いながら言った。
「ああ。そういや、あいつ見たことある。子供かと思ったけど、あいつ俺らと同じ高校だ。ひとつ、下かな」
「へえ、また会うかもな」




