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翌日も充は見つけた山へ夜な夜な出掛けた。違うコースから登ってみようと、反対へ回ると、大木がところどころ切り倒されていた。
「なんて綺麗な切り株だよ。ノコギリとかチェーンソーじゃこうはならねえぞ」
切られた木の表面は、やすりで研いだように凹凸が無かった。
ところどころ切り倒されているので、木と木の感覚が遠い。充は嬉々として飛んだが、さすがに時々は届かず落ちた。
「くっそ、こんな距離で」
また木に登って、跳びながら頂上を目指す。木の下から上へ、上から下へ飛び移る。月が照らす場所と影になる場所に充の小さな影が蠢く。
段々と登るにつれて、充の感覚が何かを拾った。この上に誰かいる。しかも、常人ではない。そして、一人じゃない。とてつもない気が頂上付近から充を圧していた。
満月からわずかに欠けた月が、飛び回る充を照らした瞬間、充の頬の横を何かが通りすぎ、そのまま幹に刺さった。
見えなかった。後ろの大木に手裏剣が刺さっていた。
「ねえ、きみ」
何の気配もなく後ろから声をかけられ、充は大きく後ろへ飛んだ。
「……な、なんだよ」
気配を消して、端正な顔をした装束姿の男が枝の上に立っていた。
「ごめん、ここは修練の場として使っている私有地で危ないんだ。手裏剣が飛んできただろ? 危ないから子供は帰った方がいい」
咄嗟に充は跳んだ。子供という言葉に反応した。
「俺は、子供じゃ、ねえぇぇ!」
問いかけた男の頭上まで跳び、延髄斬りの体勢になると、正面に殺気を感じて宙で跳ねた。今度は明らかに顔を目掛けて投げられた手裏剣が、また別の幹に刺さった。そのまま延髄斬りにいけば、おそらく討たれていた。
「ほら、危ないって言っただろ?」
手裏剣が飛んできた方を睨むが、どこから投げているのかも分からない。




