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跳ぶぜ
幅も高さも跳ぶに関しては負ける気がしねえ。
保育園の頃から水溜まりは全てジャンプで越えてきた。田んぼを挟む用水路は6歳で越えた。みんながうんしょうんしょと木登りするのを横目に、飛んで枝へと飛び移っていく。
いつか雲へ。
月掛充は毎日、空を目指して跳んで翔んで飛んだ。
月掛家は城へ潜入する隠密部隊の急先鋒を担ってきた。城門を越え、瓦を素早く飛び、天守閣へ飛び移っていく。
飛んで負ける者など、鳥以外にはいない。
充は背が低かった。ずっと低いままで、「チビ、チビ」とからかわれたが、クラスで一番背の高い者の遥か頭上へ飛び、空中から延髄斬りを食らわせた。
「俺はチビじゃねえ。お前らよりよっぽど高い景色を見れるぜ。背なんか関係ねえよ」
充はからかった奴らには必ず飛び蹴りを食らわせて、その台詞を頭上から言い放った。
充は猿飛佐助に憧れていた。
小さな身体で駆け回り飛び回る佐助は、忍者としての憧れだった。佐助は甲賀の英雄だ。忍者としての格好良さに惹かれた。
何度も体操教室などからスカウトの話がきたが、全て断った。月掛家は忍者の急先鋒なのだ。この跳躍力は忍者としてのものだ。スポーツのためではない。
月夜に充は家を出る。
家々の塀に昇り、塀から塀へと飛び回っていく。パルクールの大会にでも出れば、間違いなく世界一を狙えるその身のこなしは満月に映えた。
ある日、跳びながら街を抜けていくと、この街の外れにある裏山へ出た。たくさんの木が覆い繁っている。充は山に入り、高い木を小気味良く飛んでいった。ここは良いな。木の位置、高さ、ともに修行にうってつけだ。
木から木へ飛び移り、どんどんと山を登っていく。枝に手をかけ、くるりと回り、背筋と天性の柔軟さで数メートル先の枝へ踊るように着地する。
ところどころに大小さまざまな的があった。なんだ、こりゃ。猟銃会のこさえた的とかなら厄介だな。気を付けないと。でも、この山で鍛えよう。明日もまた来よう。
いつの間にかたどり着いた頂上の木のてっぺんまで昇った。街の明かりが綺麗だ。上には満月が大きく光っている。
待ってろ。お前にも届きそうだぜ。




