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甲賀忍者、甲子園へ行く[地方大会編]  作者: 山城木緑
13. いざ初戦 甲賀者、参る
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27

 両手で顔を覆いながら犬走がベンチ裏へと運ばれていく。すまねえ、みんな。そんな言葉を残して。


 一塁ベース付近で、去り行く犬走の姿を皆で見つめていた。


「すまねえ……じゃないよ。犬走くんの執念で繋いでくれたんだ」


 蛇沼が唇を噛み締めながらそう言った。無言でみんなが頷く。


 甲賀忍者は任務のため、自分の死を厭わない。皆にその血が流れている。あとは残された者がその犠牲を胸に秘め、任務を確実に遂行すしていく。それが、甲賀の掟だ。


 犬走の分、必ず逆転する。その任務を今、遂行する。皆、そういった目をしている。


「白烏っ、代走だ」


「おうよ」


「犬走の分、ホーム、踏んでくれ。頼む」


「無論」


 白烏の目も鋭さと集中力に溢れている。


 副島は込み上げるものを感じていた。半ば強引に野球部に入れたと思っている。こいつら忍者たちは、それにここまで賭してくれるというのか。


 副島が皆の目を見ながら語った。


「俺はお前らが野球部入ってくれて、こんなんまでやってくれるなんて、思ってもみいひんかった。俺もお前らとおんなじ気持ちや。一回戦で負けてたまるかよ」


「おおぉっっ」


 打席に月掛が入る。


 必ず、繋げてやる。バットでヘルメットを叩き、グラウンド一番の小兵は気合いを入れた。


 ベンチでは、伊香保が目に涙を浮かべていた。


「アキレス腱、両足ともだなんて……。そんな無理をして……」


 滝音が伊香保の肩にそっと手を置いた。


「大丈夫だ。うちには東雲がいる。なあ、そうだろ?」


 桔梗が滝音にウインクした。


「ふふ、さすが滝音家。よくご存知で」


 伊香保は溜まった涙を拭いて首を傾げた。

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