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お互いに向かい合った選手同士が握手を交わす。副島は資定と、月掛は伊賀崎と握手を交わしていた。
「今日はわざわざありがとうございました」
副島が資定に頭を下げる。
「こちらこそありがとうございました。お互い甲子園に出て、そこでまた会いましょう」
資定が握手に力を込め、二人は離れた。
「あ、それと……」
資定が振り向いて、副島を呼び止めた。
「甲賀さんはまだまだ短期間で強くなる。ただ、県大会で対戦することになったら、滋賀学院には気を付けて」
「滋賀学院? うん、もちろん強豪やしね。気を付けるよ。遠江さんと同様」
資定は少し迷ったような表情をして、口を開いた。
「今年の滋賀は遠江さんが大本命と言われてる。けど、最近、遠江さんに苦杯をなめてきた滋賀学院さんに突然、一人の選手が入っていた。俺らは先々週その選手にかなり苦戦したんだ」
「そっか、ありがとう。俺らなんか一つ勝てるかすらままならないかもしれないけど、当たった時は気を付けるよ」
もう一度、副島と資定はがっちりと握手を交わした。
一方の月掛と伊賀崎はナインがお互いのベンチに戻った後も火花を散らしたまま、ホームベース上にいた。
「お前には負けへん」
「素人がいきがんなよ」
「その素人の打球取れへんかったやんけ」
「お前らなんか遠江か滋賀学院に負けて終わりや。TVで甲子園観とれ」
握手がいつの間にか掴み合いになり、滝音と資定がお互いの問題児をベンチへ引き摺っていった。
「ほっほ、ナァイスゲエイムじゃよ」
橋じいと高鳥監督が立ち話に興じていた。副島が帽子を取ると、高鳥監督も帽子を取って頭を下げてくれた。
「副島くん、これ、役に立つかは分からないけれど……」
「えっ? はい、ありがとうございます」
高鳥監督は副島にメモ用紙を何枚かちぎって手渡した。こ、これは……。副島はメモ用紙を見て、感動で震えた。理弁和歌山にとっても選手を見極める大事な試合だったはずなのに、高鳥監督は甲賀ナインへのアドバイスをそのメモ用紙にしたためてくれていたのだ。
「すげえわ」
副島が感動で指先を震わせていると、橋じいがふぉっふぉと嬉しそうにメモを覗きこんでいた。
「高鳥くんに、余裕があるなら頼むとお願いしたんじゃよ。ふぉっふぉほ。わしはアドウバイスができんのでな」
メモには背番号と一言ずつ丁寧に具体的なアドバイスが書かれてある。例えば、背番号1。これは白烏のことだが、こう書いてある。
『球の指持ちが良い。もう足ひとつ分だけ前に踏み出すことで、その分バッターはもっと差し込まれる。コントロールは足の爪先をキャッチャーに向ける基本を反復すること』
「橋じ……橋爪先生、ありがとうございます。おかげで良い反省会ができます」
「ほっほっ、そりゃ良かった。わしはもう10人も覚えきらんからの。誰が誰か分からんのじゃ。ふぉっほっ」
「…………そ、そうですか」




