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蝶の缶詰  作者:
9/10

缶詰 終

「あの村から脱走して、ある雑誌を見て一目惚れしました。よく一目惚れって鐘の音があるっていうじゃないですか? 鳴ったんですよね。びっくりしました。だって瞬時にこれが恋なんだなあって思いました。けど、これが叶わない恋って気づくのにも瞬時にわかっちゃいました。それから見つかっちゃったんですけどこの恋が諦めきれなかったので説得しまくりましたらお前は解剖するのが1番上手いから定期的に解剖すればいいよって言われました。しかも沢山のお金もくれるそうなので最高です。自由と共に恋がもっと出来るようになって幸せなんです。産まれてきた時から空っぽだった心の中が彼の活躍する姿を見たら満たされていくんです。こんなの初めて。出来るだけ彼の事知ろうとしました。たくさん知ってもっと好きになれました。努力家で真面目で、少し女遊びもしてたみたいですけどやんちゃで可愛いじゃないですか。何より顔もいい。生きているだけでもありがたいのに危険も伴うアイドルをやってくださってるんですよ。私のお家にくればずっとゴロゴロしててもいいのに......。でもアイドルしてる彼がすっごい好きなんですよね! 良かったら見ますか? あ、同担にならないって約束してくれるならなんですけど。彼のユニットのメンバーもかっこいいので良かったらおすすめです! ダンスも歌も雰囲気も全部全部全部かっこいいんですよ! 今度幕張メッセでツアーやるのでよかったら全部見ませんか? 私お友達がネットの友達しかいないから貴方のようなリアルの人間とお友達になって遊びたいなあなんて思ってるんですけど、遠慮しときます? ああそうですよね! いきなりツアーは難しいですよね。すいません。それじゃあ鑑賞会しましょ! ラブホテルって最近オタク専用の女子会も流行ってるんですよ!キンブレもあるしなんならデリバリーもあるし、お金なら全部私が出すので! 見るだけならタダですよ? 時間はタダではありませんけど、よし、こうなったら今から行きましょ!ね?いいでしょ? あんな村の、缶詰の、話の雑誌なんて誰も読まないし、今は彼の雑誌記事書いてくれたら私沢山積みます! もちろん彼の表紙にしてくれたらどの同担よりも積むので、是非彼のことよろしくお願い致します!」





メイクよし! 髪型よし! 持ち物よし! キンブレの電池よし! 万札よし!うちわよし!推しへの愛よし!


今日はツアー1日目、気合が入る、人生の中の尊い日。


今となっては人気アイドルのまるくんは私の初恋の相手で、私はファンなのだけれど私は本気の愛を貢いでいる。

今日のチケットは愛の力で当たったが全通する為転売にも手を出したので合計100万もかかっちゃったけど彼の活躍する姿を眼球に収めるためならなんだってする。

死んだっていい。それぐらい本気って書いてガチ。


現場につくと全員が推しアピールでメンバーカラーの服や、推しのうちわを高々と掲げている。

同担、推し被りは死ぬほど嫌だが彼に金を落としてるのにも変わりないので包丁を振り回すわけにはいかない。

やっぱり無理かも。落ち着いて、私。


「彼が一番好きなのは私、彼が一番好きなのは私、彼が一番好きなのは私、彼が一番好きなのは私、彼が一番好きなのは私、彼が一番好きなのは私、彼が一番好きなのは私、彼が一番好きなのは私、彼が一番好きなのは私」


動機と身体の震えが止まらない。気持ち悪い吐き気がする。いつもの言葉で心を落ち着かせる。

そう、彼のファンの中で顔も可愛いのも私だし服装も彼の好きな清潔感ある中でも少しエロスを感じる服だし香水もいい石鹸の匂いがするものをつかってる。

十分マウント取れてる。一番好きなんだって思える。

田舎から出てきた芋が簡単に彼の旦那とかいってんじゃないよ。


この、にわかが。許さない。


不細工な同担を睨めつけた後物販へと向かった。

事前通販があったので買うものは無いがお金を落としたいので彼モチーフのキュートにしたぬいぐるみを買ったのだがやっぱり可愛い。

好き好き大好きやっぱり好き。

幸せだ、私。


SNSで繋がってる強いオタクと写真を撮り、キャーキャー騒ぐのも楽しい!オタクって楽しい!

好きな人がいるって本当に女の子は最強になれる。


そろそろ、開演が始まる。


もちろん私はアリーナ。

一気に湧き上がる会場に私の心もわくわくする。


彼が現れた。


黄色い悲鳴と共に私も猛獣にもなったかのように叫びまくった。


あぁ、好きだ。

完璧すぎる、好き。


誰がアイドルに届かないっていったの? 私と彼は手を伸ばされば届く距離にいる。


涙という涙が止まらない、感情という感情が止まらない、いつだってみて君は完璧だ。


血まみれの世界をきっと見た事ない純粋な君が大好き。大好き。大好き。


産まれてきてくれて、ありがとう。

これからもずっと生きてる間、ずっーと応援するね。



さて、幸せハッピーになれたから仕事しなきゃ。

私が幸せになれた分、あなたも幸せだったんでしょ?だからあなたには不幸になってもらわないといけないの。

それに同担は増えた分殺さなきゃいけないしね。監禁するのも一苦労だけどしたがない。


じゃあ、ガチ恋でも歌いながら削ぎますか。


「言いたいことがあるんだよ」


まず、皮を剥ぐ。

固定はしてあるから身動き取れなくて少し反抗するぐらいだから最近は簡単に解剖できる。機械で髪、爪もついでに取る。

解体はもう慣れたもんだけど部屋が汚くなるから清掃員雇おうかな。


「やっぱり○○はかっこいいよ」


私の缶詰の高く売れる理由は鮮度がいいから。おー、まだ生きてるね、いい子だね。

同じ人好きになったのがいけないんだよ。


「好き好き大好きやっぱ好き」


死ぬって一瞬で意識なくなるんだよ、多分。

ピクリともしなくなっちゃった。


「やっと見つけた王子様」


死体は重い。

普通解体は複数人でやるものだが、他の奴らに金を渡したくない為一人でやってる。

1番取れやすい肉を削ぎ、ビニール袋にいれていく。


「私が生まれたきた理由?それは貴方に出会うため! 私と一緒に人生歩もう」


こんな事小さな頃からやってきたから抵抗はないし、お金の為だったらなんだってするけどこんなの一石二鳥すぎる。

だって、邪魔な奴が消えてくれるんだもん。

あんな芋しかいない里から出てよかった。だって彼に出会えたんだもん。


「世界で一番愛してる!」




愛してる!


愛してる!


愛してる!


愛してる!


愛してる!


愛してる!



...


















...え?


これが終わり? 最終話?

そうだよ、これが最終話。私のお話で終わりなのこれは。この後この子は諭吉になるの。

どうせ、錯覚と作り物の世界なのだから。忘れてしまう話なら最後は貴方にとっては胸糞悪くていいじゃない。ただのアイドルの追っかけのガチ恋話でいいじゃない。


缶詰になんかならない貴方の方が憎らしい。


いいよね、どうせこれ見ても内容分かってても分からなくても忘れてまた次の他の世界にも行くのだから。ここまで見といて気持ち悪い、つまらない、もう見ないって言ってもう来てくれないだから。

誰かに見るなって言われた癖にここまで見てるの性格悪いよね。けど分かるよ。見るなって言われたら見ちゃうよね。


けどねけどね。忠告は何回もしたはずだよ。


決してここまで見たあなたを私たちは許さない。


だって貴方が見なかったら誰も死ななかった筈なのだから、みんな文字で殺されたのだから私は誰も殺さずに済んだのに。

本当の終わりなんて与えないよ。いつおわりがくるって、まだ来ないけどさ。


だってまだ彼は引退しないんだもん!


じゃあね、貴方がこのページ閉じる前に、最後にもう一回、みんなも一緒に!


言いたいことがあるんだよ!やっぱり君はかっこい......。


あ、ごめん。私同担無理でした。

というわけで、またツアーが終わる時に暇つぶしに書いてる新作で会いたいね。


多分その頃には、私は彼と結婚して人妻になってて3人子供産んでてー。


でね、この話をハッピーエンドに迎えるんだ。


それがこの話読んでる人の望んでる結末なんだよね?こんなに好きな人と、彼と結ばれないなんてありえないもん。そんなの耐えられない。

いつか彼が輝き終わったその日にプロポーズされるの。私がお姫様になれる、この救いようがない世界なのは貴方達が1番知ってるでしょ?

けど私だけでも最高の終わり方をするのだから。




もし仮に違うとしたら、相当残酷で悪趣味な方々だよ。

 

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