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蝶の缶詰  作者:
1/10

いちわ!


部下がとある手帳を拾ったと言う。

拾った、それは単なる好奇心によるものでしかの行動である。

が、しかしその好奇心は悪くない。

この仕事は好奇心の塊である、この部下は才能はあるようだ。

才能を無駄にするのがこの仕事でもあるがな。

そう、運が悪かった。

こんな日記を見つけてくるなんて。



はちがつににち、てんきははいいろ。

あたらしいにっきをおばあちゃんにかってもらった。

おばあちゃんはかわいそうなめでぼくをみてくるけど、かおになにかついているのだろうか?


はちがつさんにち、てんきはわたあめ。

おなかがすきました。

ぎゅるるる、ってぼくのおなかにいるむしはないています。

うるせぇむしはきもちわるいきもちにさせます、ぼくだっておなかすいているのに。

やめてよ。

おかあさんはまたおとこのひととあそんでいています。

あついよ。こころのなかも。

さむいのはいぶくろだけ。


はちがつよんにち、てんきはなみだ。

くるしい、からだじゅうがくるしんでいる。

うぶごえをあげたあかちゃんか、ぼくは。

おなかすいた。


はちがつきゅーにち、てんきはおれんじ。

きょうはうれしいことがあった。

おかあさんがおかゆをぼくにくれた。

ふうをあけ、くちのなかにいれる。

ごくごくとのみほす、むしたちはむらがってからだにあびている。

かわいたこうらがしめってきもちいい。

おかあさん、ありがとう。


はちがつじゅうにち、てんきはえがお。

おかあさんのおとこのひとをまたつれてきた。

ぼくをけいべつしてくる。

さげすんでいる。わらってる。

ふたりともはだかになってかさっている。

ぼくはそこにかなしみとうれしさをまぜあわせていた。

いみわかんないや。


はちがつじゅうはちにち、てんきはゆうれい。

しゅくだいはきょうでおわらした。

なんでこんなにもかんたんな、くだらないもんだいしかださないんだろうせんせいは。

いやらしい。

さいきんはおとこのひとがぼくをけるようになった。

ぼくはせをむけまるまる。

きがすむまでじゅうりょくをおとしてくる。

いんせきおじさん。

こわい。けどおかあさんはわらっているからだいじょうぶ。

いんせきはせかいをかえて、おおきなせかいをつくりあげたんだから。


くがつなのか、てんきはちだまり。

おとなのひとがぼくとおかあさんをひきはなした。

あのひとたちはぼくをたすけた、とかいっているけどぼくはおかあさんとはなれたくない。

かえして。

いえにかえりたい。


くがつここのか、てんきはわらう。

たくさんいる。

にくのかたまりがたくさんいる。

うじゃうじゃうじゃ。

ぼくはここにのみこまれてしまうのだろうか?

たすけておかあさん。


くがつじゅうにち、てんきはてんき。

ごはんがおいしい。

にくのかたまりとはかぞくになれた。

せんせいがぼくにいろいらちえをくれる。

おかあさん、ぼくはげんきにしているけどおかあさんはいまおとこのひととかさなっているのかな。そうかんがえるとぐにゃっとするからぼくはやなんだ。


くがつはつか、てんきはでんき。

いつのまにかここはぼくのいばしょになっていた。

みんなやさしい、けどここはこわい。

こんなしあわせでいいのだろうか。

こわい。




こわい、ねえ。


「じゃがいものような字だな......」

「俺はアスパラガスに見えます」


野菜ぽい字で書かれた文章には世界があった。

よくも悪くも、母の愛情を貰ったことがない子供の日記であった。

多分、文章からみた感じであるととある事情で施設に行ったのだろう。

最近、虐待問題が取り上げられいる。

部下は流行に乗ろうとでも言っているのか?。

が、これくらいじゃあんまり記事を書けない。

確かにこれは酷すぎる虐待だ。

理不尽すぎて吐き気もする。

親も子供も依存しあって生きているといるのは、あまりにも醜い。

でもこんな子供の悲鳴の叫びの材料はたくさんあるから、あまり金にはならない。

ここからは少しページが破かれている。字も歪だったため、部下がわざわざ書き直した紙をくれた。

そこには、ミミズがくねているかのような汚い字が走っていた。



3月9日、天気は雪。

あまりの臭いに嘔吐してばっかで隣のおじさんに罵倒されてばっかだったけど、最近はしなくなってきた。

けど、やっぱり嫌悪する臭いだ。

いずれか僕もこんな臭いになるだろう、いや、僕はなりかけているかもしれない。


3月10日、天気は晴天。

やっぱり、どうやら僕はとうとう腐り始めたらしい。

生ゴミやおじさんや虫に感染したんだ。

まあ雪溶けだからちょっとはキラキラのして綺麗かもしれないけど、醜い感じになっているだろう。

だとしたら。


3月11日、天気は晴天。

ゴミと出されてから××くらいたつだろうか。

徐々に僕は腐ってきた、皮膚が剥がれ落ち、ハエたちが群がってきた。

大量に肉につき、かなり気持ち悪くグロテスクだ。

しかも直に触れらると痛い。

神経はまだ生きるって意味だけど、それにしてもこんなに群がってくるものなのか。

肉が丸出しだとこんなに群がってくるものなのか。

こいつらは、あの人たちと同じじゃないか。

ハエたちは嘲笑って足をちょこちょこかいた。


3月12日、天気はまたもや晴天。

ハエのせいで身体に違和感が感じる。

全身がかゆい。かゆいかゆいかゆい。

かゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆい。



「おい、なんだこれは」

「先ほどの続きですが」

「こんな急にフィクションな、いや、よくわからない文章見せられても困る。ってきり私は虐待問題についてのすげえ資料を期待していたのに、なんだこれは。くだらなすぎらる、新人だからってこんなデタラメで三流の雑誌みたいなクソネタ持ってくんなし、ふざけんなし。うざ。なんだよこれは。気持ち悪いなあ。嘔吐しそうだよ」

「先輩は知っているんですよね」

「いや、私は何も知らないぞ。自分のこと以外は全くほとんど知らないぞ」

「先輩」

「信じてくれよ、私は知らない知らない。いやあ、うん、あははっ。そういえば最近のアニメ見てる? 魔法少女アニメでね、実は魔法少女じゃなくて魔法少年だったという衝撃アニメがあるんだけどそれを記事にしたら大儲けは出来ないけど最先端を掴めると思うんだな」

「先輩」

「ああ、お前はアニメ見なさそうだもんな。AVしかオカズにしてなさそうな、あっAVってのはアニマルビデオだからね! 私は少年のふくらはぎでお腹いっぱいになるんだからな。ショタコンではないぞ、実は私はペドだ! 幼女とか美味しくいただけるという雑食系ロールキャベツが好きな乙女なのだよ!。なんかキャラ崩壊やばいし!」

「先輩、話していただけませんか?」

「私は幼女に興奮を抱くのは可愛いからだ。可愛いは正義、ブサイクは悪だ。つまりこの世界は悪に満ちている」

「先輩っっ‼︎」

「......なあ、なんで、私がこのことを知っていると知っていたんだ?。確かに私は缶詰めになり損ねたけどそのことはずっと隠して生きてきたつもりだ。妊娠だって中絶したし、少年を性的恋愛感情でずっと見てきたし。ねえ、なんでお前は知っている? このことについても」

「わかんないですか、先輩は」

「え?」


言葉をナイフにして、突き立てられたら痛いんですよ。

と、文章と同じく、支離滅裂で噛み合わない言葉を交わし合う。

私は続きを読むことにした。

私は手を震えながら、ページをめくる。

血の海に飲み込まれているみたいだ。



最近はおじさんと仲良し。

昨日は嗅覚が壊れて、マトモに喋れるになった僕にいつも罵倒してきたおじさんと楽しくおしゃべりしている。

おじさんは元々怒ってなかったんだ。

逃げてって、こんな子を連れてくるなって怒っていたんだね。


おじさんは優しいね。


涙が流れて肉に流れて染みて痛いや。

けど暖かい気持ちがいっぱいだよ。




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