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私、イセカイで冒険者やってます!(旧題:私、ソロで冒険者やってます。)  作者: 青咲りん
第一章 私が卒業するまで。 ゴブリン侵攻編
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私、馬鹿にされる。

 どうも。

 これからサエルミアとルークとの三人で、気晴らしにゴブリン狩りにいくことになりましたイトーです。


 この異世界に来てから初めての冒険者らしい仕事ができるという事で、ちょっと興奮しています。

 ……たぶん、これが俗にいう『ドキがムネムネ〜♪』というものなんだろう。


 ……え?

 何か違う?


 ……ともあれ、まぁそんなこんなで私たち三人は冒険者ギルドへと歩を進めていた。


「そういえば、まだパーティでの役割を決めてなかったな。

 イトー、お前って志望のジョブ何にするか決めてるのか?」


 冒険者ギルドまで向かう道すがら、不意にルークがそんなことを聞いてきた。

 ので、私はとりあえずの展望を正直に答えることにした。


「んー、とりあえずメイジ目指そうかなって。

 遠くから高威力の派手な魔法をバカスカ撃って無双したい」


「「……」」


 途端、唖然というか呆然というか、何か信じられないものでも見たかのような、そんなちょっとバカにしたような顔で、二人が私を振り返った。


 ……え、何?

 私、何かおかしいこと言った?


 二人が向けてきた視線の意味がわからなかった私は、そんな彼らに眉を顰めて頭上に疑問符を浮かべる。


「……ずっと思ってたけど、お前って絶対馬鹿だろ?」


「……へ?」


 ルークの口をついて出た唐突な暴言に、思わずそんな声が漏れる。


「そんなことできるメイジがいったい、この世の中にいくらいると思ってるの?

 それに、そんな燃費の悪い魔法の使い方なんかしてたら、戦闘中に魔力切れになって最悪死ぬわよ?

 パーティで戦うのなら尚更迷惑極まりない行動だわ」


 言われて、はたと気がつく。


 確かにそうだ。

 この世界はゲームじゃない、現実なんだ。

 どこかの頭おかしい変な名前のロリっ娘魔法使いみたいに、爆裂魔法を一発撃っただけで魔力切れを起こしてぶっ倒れでもしたら、確かに迷惑極まりない上に非常に危険だ。


「それに、そんな高威力の魔法を使う時なんてそうそう来ないわよ。

 どんな魔物だって、心臓を射抜けば死ぬし、よほど硬い相手じゃないとそもそも使うことなんてないわ。

 この辺りの魔物なら、せいぜい《風刃》くらいの威力で十分よ」


「じゃ、じゃあさ。

 ワイバーンとか来たらどうするの?

 流石にその魔法じゃあアレの鱗は抜けないよね?」


「イトー。

 あなたヘイト管理って言葉知らないの?」


「そ、それくらい知ってるよ!」


 馬鹿にするな!

 ヘイトってのは、アレだろ?

 あの、ダメージ与えていったら溜まってくるやつ。


「ならわかると思うけど、魔法職って火力高い分、基本的にパーティで戦う際は壁役になる前衛が魔物に与えるダメージより多く攻撃しちゃダメなの。

 もしメイジが与えたダメージ量が壁役を上回ってたせいで、術式を組んでる間に襲われでもしたらどうするのよ?

 前衛職のメンバーから見れば仕事増えるしやりにくいしで迷惑極まりないわ」


 彼女はそう言うと、呆れたようにため息をこぼした。


 なるほどなぁ。

 私、特にそこまで考えてなかったや。


 自分だって、魔法が使えない時に身体能力じゃどうしようもない相手が襲ってきたときの危険さは十二分に理解しているし、今の私じゃ魔法の発動速度以前に、高威力の魔法を放てるだけの魔力も無い。


 私は、数日前に獣人のテロリストに拉致されたあの日のことを思い出しながら、自分の軽率な展望に反省する。


「やっぱり、私にメイジは向いてないのかな」


「そうだな。

 どちらかといえばお前の戦闘スタイルは、その透明人間になれるスキルで隠れて、不意をついて攻撃する方が似合ってるだろ」


「あー、確かにそうね。

 となると、目指すならアサシンが向いてるんじゃない?」


 アサシン……アサシンか……。

 それはそれでちょっと格好いかもしれないなぁ。


 しんと静まり返った暗闇の中、どこにいるかわからない暗殺者。

 ふっと目標が影の中に足を踏み入れた瞬間、その命は──みたいな。


 ……うん。

 安全性と言う面で、さらに自分の特技を活かせると言うことを加味すると、やっぱりこっちの方が向いてる気がする。


 それに、私は強奪スキルで倒した魔物のスキルをランダムで奪うこともできる。

 いろんな魔物からいろんなスキルを盗って活用していけば、いずれ最強のステータスが組み上がるんじゃ無いだろうか?


 そう考えると、なんだかちょっと楽しくなってきたな。


「ムフ、ムフフフフ……」


「「……」」


 突然笑い出した私に対して盛大に引いた態度を取る二人に気づかず、私は一人、小さく笑い声を漏らすのだった。


⚪️⚫️○●⚪️⚫️○●


 冒険者ギルド。

 そこは、冒険者たちが依頼を受諾したり、また冒険の成果を報告したりするための、彼らにとっての事務所のような場所である。


 常に危険と隣り合わせな仕事を民間人の代わりに請け負い、剣を振るって時には危険な怪物に立ち向かう彼らにとって、そこは仕事と日常の凱旋門のようなものである。


 故に、彼らの情報交換や憩いの場として酒場が内設されたこの冒険者ギルドが、その成果たる魔物の体の一部──討伐部位より発せられる血生臭い臭いや、彼らの一日の楽しみである酒宴のエールやラガーの臭いが混ざりあって、むせ返るような臭気に包まれているのは仕方ないことなのかもしれない。


「《消臭デオドラント》」


 あまりの臭気に耐えかねたサエルミアが、鼻を覆いながら術式を組み立てる。


 すると、その魔法の効果なのか、直ぐにその臭いは感じなくなった。


「たすかったよ、サエルミア」


「簡単な生活魔法よ。

 このくらいどうってこと無いわ」


 当然のことをしたのだから、褒められるほどでもない。

 口ではそう言いつつも、どこかに嬉しげに目をそらすサエルミア。


 ……と、そんなやり取りをしているときだった。

 三人の後ろに何人かの人影が現れたかと思うと、後ろから肩に腕を回すようにルークにのしかかる人物がいた。


「よぉルド──ルーク。

 両手に花たぁ、いいご身分じゃねぇか」


 桜色をした少し長め髪を、ツンツン逆立てた筋骨隆々の大男。

 黒い色をした金属製のプレートアーマーを着込んでいるからか、さらに体のサイズがデカく見える。

 ……そして、その背中には見たことの無い武器が吊り下げられていた。


 柄の長さと刀身の長さが大体同じくらいである日本の武器で、長巻という武器がある。

 もともと大太刀だったものが派生してできた刀の一種で、薙刀に似た形状をしている。


 彼が背負っているのは、その西洋版といったところだろうか。

 長巻の刀身は肉厚で巨大。

 剣先は扇状に広がっていてまるで斧の刃を縦に着けたみたいに見える。

 刺突のための機素は無く、剣身はエクセキューショナーズソードとグレートソードを合わせた形をしていた。

 そして、その刀身の根本から延びるヒルトは長く、大体刀身と同じくらいの長さがあるのではないだろうか。


「こんな可愛い花を二輪もつれて、これからお楽しみか?」


 絡んできた冒険者が、私とサエルミアにチラリと品定めでもするかのように視線を送ってくる。

 しかし、その視線は劣情を孕んだ嫌らしい目ではなく、どこかからかっているような、そんな気配が感じ取れた。


 ……でも、気持ち悪いことには代わり無い。


 私は反抗するように目を細めて睨み返した。

 すると、それに気づいた大男は、ニヤッと目を細めるだけですぐにルークの方へと向き直った


「違ぇよ、ただ気晴らしにゴブリンどもを狩りにいくだけだ」


「……なんだ、俺はてっきりこの二人をゴブリンの巣にでもぶちこんで、苗床にされているのを遠くから眺めて楽しむつもりかと思ってたぜ」


 反論する彼に対し、大男は何やら残念とでも言いたそうに肩を竦める。


 なんて奴だコイツ。

 気持ち悪い男だとは思ったけど、性癖狂ってるだろ。


 私は睨み付けていた目を軽蔑の眼差しに変えると、身を引いてサエルミアの後ろに隠れさせてもらうことにした。


「趣味悪ぃぞオッサン……次同じこと言ってみろ、殺すぞ」


 と、その時だった。

 彼のその言葉を聞いたルークが、突然そのブレストプレートの下から出ているキルトの襟をぐいと引っ掴むと、その顔面を自分の目と鼻の先にまで引き寄せて、鬼のような表情で凄んだ。


「おぅおぅ、昔から威勢がいいねぇ君は」


 対する大男は、そんな表情で迫られているにも関わらず、まるで柳に風と受け流して見せる。


 さすが冒険者ってところだな。

 私だったらあんな風に流せる自身か無い。

 たぶんちょっとだけフリーズしてたかもしれないし。


「チッ、ムカつく野郎だ」


 ルークはそんな、反省するつもりが毛頭無い大男を突き放すと、吐き捨てるように呟いた。


 ……にしても、どうしてルークはあそこまで怒ってるんだろう?

 やっぱり、私に一目惚れしてた説は意外と当たっちゃってたりするのかな?


 まあ、惚れられてても困るんだけどね。

 私に男を愛でる趣味はないから。


「まぁなんだ、ゴブリン狩りにいくなら、あまり森の奥までいかないことだ。

 ……──」


「……ッ!?」


「じゃあそういうわけだからルーク、くれぐれも巻き込まれるなよ?」


 大男は最後にルークの耳元で何かぼそりと呟くと、最後に一言添えてギルドの奥へと立ち去っていった。

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