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私、イセカイで冒険者やってます!(旧題:私、ソロで冒険者やってます。)  作者: 青咲りん
第一章 私が卒業するまで。 ゴブリン侵攻編
41/47

私、眠り姫になる。

 どうも。

 サエルミアとお喋りしてたら先生に怒られて、なぜかルークと模擬試合をすることになってちょっと困惑しているイトーです。


 いやぁ、授業中にお話ししてたのはいけないと思うんだけど、相手が成績トップっていうのは流石にイジメじゃないかなぁ?

 ……まあ、何とかしますけど。


 私は、杖のグリップを強く握ると、作戦を立てることにした。


 まずそもそも、相手と私じゃあまともに打ち合えるわけがない。

 筋力と体力はもとより、絶対的に敏捷が足りない。

 敏捷が足りないということは、反応できないということで、つまり避けるも受けるもできないってことだ。


 ……さて、それをどう補うか。


(隠蔽スキル一択だな)


 分身に身代わりさせて、んで姿と気配を消して、バックステップで回避しつつ、隠蔽スキルで気配を消しながら突きで胸当てを狙う。


「よし、両者共に構えたな。

 んじゃ、復習試合一本勝負……始め!」


 アーサー先生の声が聞こえた瞬間、私は保健室でのあの猫の獣人と戦ったときにも使った分身を配置すると、そのまま隠蔽スキルを使って姿と気配を殺してバックステップを踏む。

 と、次の瞬間にはその場に配置していた分身が切り裂かれ、その姿が掻き消える。


 一瞬、ルークの顔が驚愕に歪む。


(いけるッ!)


 その隙を突くように、私はその分身が霧散するタイミングで、肘と手首を伸ばして隠蔽スキルを乗せた突きを放った。


「──ッ!?」


 杖そのものの気配や姿のみならず、私の動きすら見えなくなるほどの隠蔽スキルが乗せられた突きは、しかしルークの杖によって上方へと弾かれることになった。


 絶対いけると思ったのに。完全に気配も姿も消していた筈なのに、ルークはそれに反応して見せた。


 結果、弾かれた私の杖は、私の頭上でルークの杖に押さえ込まれ、胴や脛はもとより、脇やその他の関節までもが露になった。


「うわっ!?」


 反射的に、それが危険な状況だと判断するが、思考に体が追い付かない。

 圧倒的に瞬発力が足りなかった。


 次の瞬間、私の視界はグルリと百八十度回転すると、きれいな青い空の風景を最後に気を失った。


 ……ホントに私、今日はついてないなぁ。


⚪⚫○●⚪⚫○●


 あ、どうも。

 昨日、絶対イケると思ったらまさかの反撃で気絶させられましたイトーです。


 まさか、完全に不意打ちだったのに弾かれるとは思いもしなかったぜ……。

 ていうか、あの一撃で気絶したお陰で、気がつけばもう既に護身術基礎の授業どころか放課後だったのはほんと許せない。


 お陰でちょっと楽しみにしてた給食も食べ逃すし。


 あいつ手加減をするってことを知らないのか?

 仮にもこっちはか弱い女の子だぞ?


「……いや、まさかあれくらいで気絶するとは思わなかったんだよ。

 あと、か弱い女の子はそんな汚い口を聞かないんじゃないか?」


「お前ホントムカつく奴だな」


 私はルークを睨み付けながら、ぷくりと頬を膨らませる。


 自分の身体能力の低さは、組分けテストの時に実感して知っている。

 だけど、あれくらいでって言うけど、あんなものすごい勢いで大外刈り?みたいなことされて、私の体が追い付くわけないじゃないか。


 ……まあ、そんなことは知らないんだろうけどさ。

 でももうちょっと優しくしてくれたって良いじゃないか。

 私初めてだったんだぞ、対人稽古。


 閑話休題。


 今日は、学内にある闘技場で、魔法を用いた戦闘訓練が始まる日である。

 先週まではどうやら座学で魔法の基礎的なルーンの暗記とかをしていたらしいが、それに関しては既に『ツィトの街』で学習済みなので問題はない。


 今日は昨日の護身術基礎の授業の時みたいなイレギュラー(?)は発生しないだろう。


 ……うん。

 発生しないと願いたい。


 私は、ちらりと隣に座るハーフエルフの方に視線を向けた。


「……何よ?」


 すると、そこには緑色の長袖のジャージを着たサエルミアの姿があった。


 現在私たちは、魔法の暴発による怪我を防ぐためと言う理由で、長袖の体操服を着ている。

 一年を通して温暖な気候なためか、この長袖の体操服はそれなりに生地が薄い。

 それでも、やはり怪我をすることが多いこの学校の体操着だ。

 防護性を重視しているため、この暑い日差しの下できるには二重の意味でちょっとあつい。


 心なしか、彼女の首もとにもうっすらと弾の滴が見える。


 ……正直に言うと、ちょっとエロい。

 体操着の襟のところから見える鎖骨も、和服に負けないくらいヤバい(語彙力)。


「いや、サエルミアの魔法の腕って、そういえば全く知らないなと思って」


 この娘の魔法の実力、まだまだ未知数だしな。

 魔法での戦闘の相手になるなら、色々警戒が必要だろう。


 私は、自分の視線をごまかすようにそう答えると、視線を彼女の顔に移した。


「やっぱり、ハーフでもエルフだし、それなりに使えたりするの?」


 エルフといえば、魔法に関してはエキスパートという設定をよく聞く。

 彼女にもその血が流れているのなら、やはり魔法の腕はここにいる誰よりも高いのだろうか?


 そう思って尋ねてみると、ふるふると彼女はその綺麗なエメラルドグリーンのツインテールを、でんでん太鼓のように揺らした。


「それ誤解よ。

 たしかに、エルフは他の人類に比べれば魔力の総量も多いけど、エルフが魔法に特化しているのは、精霊魔法が使えるってことと、純血のエルフだけがもつ眼の力、それと長い寿命の中で研鑽してきた努力の結果によるものよ。

 子供の私には、長い寿命の中で研鑽してきた力はないし、里から離れて暮らしてるから精霊と契約もしていない。ハーフだから眼の力も持ってないの。

 今の私は、ちょっとみんなより魔力が多いだけの子供にすぎないわ」


 まさか、エルフが魔法に強いというのが単なる種族特性ではなく、ちゃんとした理由があっただなんて思っても見なかった。


 さっき私がしたみたいな質問をされて、エルフの血が流れているからと受けたくもないプレッシャーを受けたことは、彼女の答え方を鑑みると、たぶん一度や二度じゃないのだろう。

 きっと、親の才能を引き継いでいるだろうとかいう、周りからの無責任な期待を常に背負ってきたに違いない。


 そう考えると、なんだかちょっと悪いことを聞いてしまった気がして、私は謝罪を口にした。


「……なんか、ごめん」


「いいわよ、慣れてるから。

 それに、私は周りの子たちよりも、魔法に関しては十分勉強してきたわ。

 それに関しては、確かに自信があるもの」


 しかし、彼女はそれほど気にもしていなかったのか、ニコリと勝ち気な笑みを浮かべてそう返した。


「見てなさい、イトー。

 きっとビックリさせてやるんだから!」


 サエルミアはそう言うと、ふんすと息を巻いて、授業に集中するのだった。

 

 ……なんだか、彼女が負けず嫌いな理由がちょっと分かった気がする。


 閑話休題。 


 そんなやり取りをしているうちに、授業はどんどんと先に進む。

 魔法基礎の先生であるアルヴィンは、各々座学で覚えた魔法を実践して練習していた生徒たちを一ヶ所に集めると、ニヤリと無精髭の口端を吊り上げて、次のステップに踏み出した。


「それじゃあ体も魔力も温まってきたってことで、早速模擬試合してみるか。

 誰か、やりたいやついるか?」


 彼の呼び掛けに、一番早く手を挙げた二人がいた。

 勿論、それほ私とサエルミアだ。


「んじゃあ、イトーとサエルミア、前に出ろ。

 で、他のは……まあとりあえず安全のため観戦席まで移動な」


 彼の指示に従って、生徒たちは各々観戦席まで後退し、私はサエルミアと一緒に舞台の真ん中辺りまで移動する。


 初めての対人魔法戦闘演習だ。

 自分の魔力の総量は、『ツィトの街』で魔法の練習をしていたときにある程度把握している。

 エレオノーラさんの話では、普通の人よりちょっと少ないくらいの魔力量みたいだけど、まあ要は使い方を工夫すれば魔力の問題なんてどうにでもなる。


 私は、少し離れたところから勝ち気な笑みを浮かべてこちらに手を向けるサエルミアに注目しながら、頭の中でルーンを組んだ。


「よし、二人とも準備できたみたいだな。

 一応ルールを言っておくが、殺すことは元より、顔面への攻撃は無しだからな?」


 アルヴィン先生は私たちの顔を交互に見やりながらそう言うと、スッと片腕を振り上げ、『いざ尋常に』と声を張る。

 私は、その言葉にあわせて足に力を込めると、開始の合図と同時に手が振り下ろされるのを横目に、分身をその場に残して隠蔽スキルでその場を離れた。


「開始ッ!」


 こうして、私史上初の対人魔法戦闘演習が始まるのだった。

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