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私、イセカイで冒険者やってます!(旧題:私、ソロで冒険者やってます。)  作者: 青咲りん
第一章 私が卒業するまで。 ゴブリン侵攻編
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私、窮鼠になる。

 どうも。

 隣でオフニーの秘訣という意味のわからない講義を盗み聞きして耳を真っ赤にさせていたルークを横目に、初限目の授業を乗り越えたイトーです。


 あ、ちなみに月曜日の今日の初限目は『冒険者基礎 マナー』という内容だった。

 なんでも、より高位の冒険者になると、貴族やそれなりの資産家(つまりお金持ち)からも依頼を受けることになるので、その対策なんだそうだ。

 あと、冒険者の依頼には、潜入捜査まであるらしく、もし貴族の役になりきらなければならない時、大いに役立つのだそうだ。


 ……ちなみに、これは初代理事長の一代目リンカーイさんの体験談なのだとか。

 リンカーイさん、たしかこの国初めてのAランク冒険者って言ってたし、色々あったんだろうなぁ。


 さて。

 時は過ぎて二限目の授業も終わり、少し長めの休み時間が訪れた。

 次は、元の世界で言うところの体育の授業に相当するものらしく、以前武器屋で買ったじょうを使って、近接武器の取り扱いについて学ぶらしい。


 そういうわけで、現在私は、目の前に立ちはだかる扉を前にして立ち竦んでいるのだ。

 ……話飛びすぎ?

 いやいや、次体育(授業名は『護身術基礎』)なんだから、体操着に着替えるのは当然でしょ?


 ……え?

 だったらどうして入らないのかって?


 いや、だって女子更衣室だぞ?

 いくら私が女の子の姿してるとは言え、中身は多感な十七の男の子だ。

 一度マーリンさんの裸を見たりとか、自分の体を見たことがあるとは言え、やはり歳の近い(?)女の子の着替え姿を見るのは、元男としてはちょっと抵抗があるというか……。


 正直、めちゃくちゃ背徳感あって興奮してます。


「ヤバい、緊張してお腹痛くなってきた……」


「更衣室に入るくらいで、どうしてそんなに緊張するのよ?」


 と、そんな風にうじうじ渋っていると、突如背後から話しかけてくる声があった。


「うわっ!?」


 見た目に似つかわない悲鳴と共に振り向いてみれば、そこにはエメラルドグリーンの髪を黒いリボンで二つに結っているハーフエルフの姿があった。

 サエルミアだ。


「ど、どうしてサエルミアがここに?」


「どうしても何も、次『護身術基礎』でしょ?

 同じクラスなんだから当たり前じゃない」


 彼女はそう言って、『こいつなに言ってんの?』とでも言いたげに眉を顰める。

 髪と同じ色の細いエメラルドグリーンの眉を眉間に寄せる様子がめっちゃかわいい。


 ……じゃなくて。


「え、サエルミア……同じクラスだったの?」


「……もしかして気づいてなかったの?」


「ごめん」


「謝ること無いわよ」


 彼女はそう短く答えると、さっさと更衣室に消えていった。

 ……私も、いつまでもここにいても仕方がないので、思いきって彼女の後ろについていくことにした。


⚪⚫○●⚪⚫○●


 あー、眼福だったぁ。

 あ、どうも皆さん。

 女子生徒たちのお着替えを目に焼き付けて、今朝の自己紹介の緊張で貰ったストレスが完全に消えたイトーです。


 ……え?

 お着替えシーンほ無いのかって?


 ( ´,_ゝ`)ふっ。

 坊やたちにはまだ刺激が強すぎるでな。

 あの楽園の風景は、私の脳内写真フォルダにのみ永遠に記録しておくことにしたのよ。


 まぁ?

 君たちもあの更衣室の中がどんな感じか知りたいだろうし?

 ちょーっとだけなら教えてあげなくもない。


 ……サエルミアの下着は、薄い緑色の上下で、フリルがかわいいブラにはチョコレート色のリボンとトランプのクラブが水玉模様に配置された、それはそれはとても可愛らしいデザインだった。


 と、そんなわけで三限目に突入。

 三限目開始のチャイムと同時に、グラウンドにやって来た人影を私は捉えた。

 赤い髪と目の下の傷痕以外に大した特徴のない男性教師だ。

 彼の服装は、白い麻製の服に黒いハーフパンツといったラフな格好で、その手には一本のじょうが握られている。


「よぉし、お前ら!

 全員ゴム鎧着てるな?」


 彼の名前は……たしかアーサーだったと思う。

 教室の時間割り表のところに名前も書いてたんだけど、ちょっとうろ覚えだわ。


 ……て言うか、こいつうるせぇな。

 声でか過ぎて頭割れそう。


 生徒達は皆、運動着の上にゴム製(例のクリーパーゴムと同じ素材らしい)の簡易的な鎧を着けている。

 これは個人支給ではなく、『護身術基礎』の授業の時に貸し出される共用品だ。

 ……なので、ゴムと他人の汗の臭いがかなりキツい。


 正直吐きそうだ。

 剣道部員の使ってる籠手の中は異常に臭くて、知らない人が嗅げば悶絶するほどだと聞いたことがあるが、慣れれば臭くなくなるという。


 ……できれば慣れたくはないが、そう言えば以前冒険者登録に出向いたとき、ギルドの中が異常に臭かったのを覚えている。


 嫌でも慣れてしまうという未来は避けられないわけか。


 私は、トホホと静に涙を流しながら、アーサー先生の方を見上げる。


「今日は先週と違って、休んでた奴もいるからな。

 昨日のおさらいも兼ねて、軽く練習試合といこうか。

 ……そうだな、昨日の成績でトップだった奴にするか。

 ルーク、前に出ろ」


 アーサーの指示に従って、私からやや離れたところに座っていた、やや色の薄い茶髪の男子生徒が立ち上がる。

 ルークだ。


「へぇ、ルークってやっぱり運動神経よかったんだ」


 組分けテストの時も結構目立ってたしなぁ。

 上から目線に威張るだけあって、やっぱりそれなりに実力があるんだろう。


 と、そんな風に誰ともなく呟いた声に、隣に座っていたサエルミアが相槌を返してきた。


「そうね。

 だって彼、下級とはいえ貴族なのよ?

 小さい頃から教師に剣術を習っていても不思議じゃないわよ」


「え、あいつ貴族だったの!?」


 知らなかった……。

 あの門番さんめちゃくちゃ優しかったし、どちらかというと平民っぽかったイメージがあったからわからなかったや……。


「ほとんど平民と変わらない準男爵なんだけどね。

 きっと才能があるからって図に乗ってるのよ」


「なるほど、それであの鼻につく態度なのか」


 俺はお前とは違うとか言ってたしな。

 そりゃ、小さい頃から才能があって、それを誉められたりしてれば増長もするか。


 ……これがテンプレートなら、あいつはいつか絶対に強者にぶつかって鼻をへし折られるに違いない。


 と、そんなことを考えていると、ふとこちらを向いている視線に気がついた。


「おいイトー。

 そんなに余裕なら、ルークと対戦してみるか?」


「……え?」


 思わず、そんな声が出る。


「鼻につく態度なんだろ?

 そんなにしゃべってるってことは、こんな授業必要ないくらい強いんだろうな?え?」


「……」


 私、多分今日はついてないや。


⚪⚫○●⚪⚫○●


 ──という経緯いきさつがあり、私は現在、ルークと相対して剣に見立てたじょうを握って構えていた。


 彼は片手剣の基本的な構えで、体を半身に開いて、正中線を剣で守り、空いた左手は腰の後ろに回しており、彼の持っている杖には、卜の字型の鍔が填められていた。

 横につき出している一本はフィンガーガードと言って、持ち手の指を守るものなのだが、もう片方にない理由は、そこに指を添えて剣身をブレさせないようにするためなんだとか。


 対して私は、違う構え方をしている。

 私はとりあえず、剣道をイメージした、いわゆる正眼の構えだとか、人の構え、水の構えと呼ばれている奴だ。

 剣道の構え方は知識として持ってるけど、いかんせん経験がない。

 完全に見よう見まねだ。


 ……なぜこの構え方にしたのかっていうのは、まあ単純に片手じゃ持てないっていうのが理由なんだけどね。


 だってこれちょっと重いし。

 毎日素振りしてる真刀の『桜吹雪』よりは軽いけど。


 あ、ちなみに局所強化のスキル使って、腕力と脚力は底上げしてます。

 まあ、底上げしたところでルークの平時の筋力には遠く及ばないだろうけど。


 それでも、まあとりあえずやってみるか。

 やってみたら意外といけるかもしれないし。


 こうして、私の初めての対人稽古が始まるのだった。

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