私、ピカピカになる。
何日かペース乱れましたけど許してください。
どうも。
昨日ようやく『はじまりの街』に帰ってくることができましたイトーです。
さて、今日から学校が始まるわけですが(というか、本来なら先週から既に始まっているんだけど……)正直緊張感が半端ないです。
学校始まってからちょうど一週間といえば、クラスでそれなりにグループが固まっている時期。
もはや、時期遅れな転校生みたいなポジションに入ることもできない、めちゃくちゃビミョーな時期だ。
……正直、友達とかできる自信ない。
(……まあ、できなくてもそんなに気を病むことはないんだけど)
むしろ魔法の勉強が捗りそう。
……いや、それでも友達がいてくれた方が、何かといろいろ助かるので諦めたくはないのだが。
私は、同じく冒険者育成学校に通う生徒たちに混ざって校門を潜り抜けながら、小さくため息をついた。
……にしても、先程から周りの視線が痛い。
もうこの門をくぐるのは二度目なのだが、この視線とヒソヒソ声の中を通り抜けるのは、非常に気まずい気分になる。
私は、苦い顔をしながらちらりと私を遠巻きに噂話をする生徒たちに意識を傾けた。
「見てあの娘、髪きれい……!」
「銀髪って珍しいよね、どこから来たんだろう?」
「目鼻立ちも整ってるし、まるでお人形さんみたい……」
――というのは、女子生徒の弁。
まあ、テンプレといえばテンプレな反応である。
だが、テンプレだからといってそう簡単に割り切れるわけではない。
正直なところ、ジロジロ見られるのはにがt──
「きっとオフニーも上手に違いないわ!」
「そうね!
今度見かけたら教えてもらいましょう!」
「……」
……さっきの台詞は聞かなかったことにしよう、うん。
ていうか、オフニーの話ホントに浸透してんのな。
あの女の子だけかと思ってただけにめっちゃビックリだわ。
あと、オフニーの指南を求めにくるのは止めてください困るから。
閑話休題。
うーん、こういうときフードとか被れたらいいんだけど、校則で学校指定以外のものを身につけることを禁止されてるからなぁ。
視線を避けるのが難しそうだ。
――と、その時だった。
私の頭の中に、天啓の如き閃きが舞い降りた。
「……あ、そうだ」
物理的に視線を避けられないなら、スキルを使って隠れればいいじゃないか!
幸いなことに、今の私は隠蔽スキルが使える。
人に見られた状態から発動しても上手く行くかどうかはわからないけど、試す余地はあるはずだ。
私はピタリと立ち止まると、意識を落ち着かせるようにグッと握り拳を作り、隠蔽スキルを行使した。
「……っ」
一瞬、私に向かう視線が途切れる。
どうやら私の姿を見失ったようだ。
私はその感覚を感じ取ると、周囲の視線が途切れた隙きに、その場から走って昇降口まで向かうのだった。
⚪⚫○●⚪⚫○●
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
私は昇降口で上履きに履き替えながら、呼吸が整うのを待った。
一か八かの賭けだったけど、どうやら周囲にこちらを見ている視線があってもこのスキルは問題なく発動するということがわかった。
これは収穫だ。
これなら、狩りをするときだって敵に気づかれずに一方的にダメージを与えることもできそうな気がする。
名付けて、疑似透明人間戦法だな。
私は、ふふっと小さく笑いながら、昇降口を後にする。
これなら、あの恥ずかしくも鬱陶しい、珍しいものを見るような不躾な視線に悩まずに済みそうだな。
(あー、でもそれだと話しかけてくれる子も居なくなっちゃうってことなんだよなぁ……)
そうなると、学校で友達を作るなんてこともできそうにない気がする。
むぐぐ……。
視線にさらされて友達を作るか、それともそれを避けて友達ができる可能性を捨てて、自主的にボッチに成り下がるか……。
いや、成り下がるも何も、まだお友達できてないんだけどね?
「友達……かぁ」
前世の自分にも、友達と呼べた人はいたのだろうか?
ふと、つい二週間ほど前の、私がこの世界で目覚める前の前世の自分のことが気になった。
私が覚えている前世の記憶は、東京のスクランブル交差点だ。
でっかい街頭テレビがあって、その前を沢山の人々が横断歩道を渡っている。
私の……俺のいた場所の向かいに……ちょうど待ち合わせの場所に彼女は立っていて、俺は交差点の横断歩道を駆けながら彼女の元へと向かっていた。
そして……それからフッと影が走って……信号を無視したトラックに轢かれた。
たぶん、あの勢いなら俺は潰れた缶詰トマトみたいにぐちゃぐちゃになっていた事だろう。
彼女には申し訳ないことをしたと思ったが、もうあの場所には戻れない。
俺は――私はふるふると首を振ると、追憶を切り上げて顔を上げた。
兎にも角にも、前世の自分に友達がいたかどうかはわからない。
今の私に至っては友達の作り方すらよくわからない状況だ。
と言ってもまぁ、とにかくまずは知っている人が同じクラスにいることを期待するしかないかな。
(……知っている人と言っても、ルークかサエルミアくらいしかいないんだけど)
私は職員室に向かいながら、そんなことを考えて苦笑いを浮かべた。
「ここか」
昇降口正面の十字路になっている廊下をまっすぐ進み、『Thuff llum』と書かれた札が吊られた扉の前に立つ。
Thuff llumは、この世界の言葉でスタッフルームと同じ意味だ。
つまり、ここが職員室ということである。
相変わらず、この世界の言語はなぜか理解できるが……たぶん、イトーがギンコだった頃にでも読み書きを習っていたからだろうな。
閑話休題。
(めっちゃ緊張してきた……)
私は、職員室の扉が持つ異様な威圧感に気圧されつつも、しかしあの時の獣人程ではないと深呼吸をして心を落ち着かせる。
……あの頃は、一歩間違えてたら死んでたかもしれなかったからな。
それに比べればこんなもの、どうということはない。
「……よし」
私は意を決すると、職員室の扉をコンコンコンと三度ノックした。
「失礼します」
先週まで欠席していた理由は、ミラさん曰くルークのお陰で教師中に知れ渡っている。
つまり私が自分のクラスも担任の先生の顔も名前も、何も知らないことは向こうにとって周知の事実。
だとすれば、まっさきに私がここに訪れるであろうことも、理解しているに違いない。
そう予想を立てながら、職員室の扉をくぐった。
「先週まで欠席していたイトーです。
先生方に挨拶に参りまし──」
「おっはよーイトーちゃぁん!!」
すると、その直後だった。
目の前に見覚えのある紫色の魔法陣が展開したかと思えば、私が反応するよりも遥かに早く黒い何かが私に向かって突進してきたのだ。
「ぐぼへっ!?」
想定外の事態に、私の口から、およそ少女が立ててはいけない奇妙な悲鳴が漏れた。
しかし、私はその正体が何かは把握できた。
あの特徴的な紫色の魔法陣……。
間違いない、アイツだ。
「待ってたよイトーちゃぁん!
今日からピカピカの一年生だねっ!」
耳元に届くソプラノの男声に辟易した顔をすると、私はぐいっと彼を押し返した。
「ミラさん、いい加減鬱陶しいので見かけ次第抱きつこうとするのほんとやめてくれませんかね?
ギルドに討伐依頼だしますよ?」
「酷ッ!?
イトーちゃん、それはさすがに酷すぎるよ!?」
私の諫言に、大層ショックを受けた表情で仰け反るミラ・アドルミニ。
しかし、一度はそんなオーバーリアクションをとって見せたものの、すぐにコロッと顔を変えてピースサインをこちらに見せつけながらこう続けた。
「でもイトーちゃん。
ボクを討伐したいなら古竜を二十頭ぐらいつれてこないと無理だよ?」
「それはさすがに法螺吹きすぎでしょ」
スキルを使うまでもない、絶対これは嘘だ。
(だけどまぁ、転移魔法をバンバン使って逃げられでもしたら、確かに討伐は難しいかも……)
そんな風にミラさんと談笑していると、彼の後ろから見覚えのある一人の少女が現れた。
彼女の身長は、少年といっても差し支えのないミラよりも低く、もっと言えば私よりも幼い見た目をしていた。
「何かしら騒々しい……あら、貴女たしか先週の?」
そこに現れたのは、もう一週間程も前になる組分けテストの日に、『おっふ』と奇妙な喘ぎ声を発していた──彼女曰くオフニーをしていた──レズっ娘変態金髪幼女だった。
オフニーの再来




