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私、巌窟王になる。2

 投稿遅くなってしまってごめんなさい!

 投稿までの時間が長かった割にはいつもよりボリュームが少ないですが、目を瞑ってくれるとありがたいです。

 どうも。

 拉致られたと思ったら変な実験室みたいなところに連れて行かれて、ケダモノにベッドに押し倒されているイトーです。


 全く、本当にどうしてこんな事になっているんだろう。


 実験?

 研究?

 そんなものは知らん。


 彼ら誘拐犯グループ曰く、私は2年前に脱走した被験体なのだとか言うのだが、一体何の被験体だったのか。


 何をするつもりか聞いても、おとなしく従えば解毒剤をくれてやると言うばかりで、全く答えにならない返事しかしてこない。


 もう絶体絶命だわ、これ。

 諦めるしかないよ。


 そう思っていたのがさっきまでの話なのだが――


「良い娘だ」


 彼はそう言うと、満足そうに口端を吊り上げ――次の瞬間、その顔色は一転して真っ青になり、苦渋の表情を浮かべて冷や汗を流し始めた。

 同時に、私の足の甲から足首にかけて、なにか柔らかいものが潰れる感触が伝わる。


(……あ、クリーンヒットだ)


 記憶がないので知識でしか知らないが、これはきっと、非常に痛いに違いない。

 証拠として、彼の顔も真っ青だし。


 ……え?

 何の話をしているのかって?


 なに、さっき思いついた“いい考え”ってやつだよ。


 今の私の状態は、ベッドの上に両手を片手で押さえつけられた状態で押し倒されている形になっている。

 ベッドと私の位置関係は、ちょうどアルファベットのTのような関係にあるため、態勢的には私の下半身は自由が効く。


 これを利用して、局所的に筋力を強化させた足で、思い切り奴の息子を蹴り上げたのだ。


 私はらニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべる。


「やっぱり、どれだけ力が強くてもここ(・・)だけは鍛えようがないよな?」


 青褪め、力が抜けていくアインズバーグ博士に語りかけながら、このままではすぐに復活されてしまうことを気取った私は、そのまま強化されて黒く染まった脚を伸ばして、ちょうど三角絞めの形になるように首と脇を締め上げた。


 子供の脚では強靭な肉体を持つ獣人の気道を絞め上げるのは難しいので、頸動脈を締めて脳の酸欠を狙う。


「このガキッ、調子乗りやがって!」


 怒鳴るジャガーの獣人アインズバーグ。


 怒りで頭に血が登るが、しかし頸動脈は私の脚で絞められている。

 酸欠になるのも時間の問題だろう。

 それにこの位置関係なら、私をどうこうできるほどの威力のある攻撃は届かない……はず。


 すると、そんな風に高をくくっていた私の脇腹に、突如として鈍痛が走った。


「ぐぶぉはッ……!?」


 視界が軽く明滅して、痛みに耐えきれなかった体が極っていた三角絞めから獣人を開放する。


「けほっ、けほっ……」


 結果としてベッドの上を転がって硬い床に体を打ち付ける。

 ギリギリで受け身をとったから頭に衝撃はなかったが、殴られた衝撃とベッドから床に撃墜された衝撃が合わさって、内臓が気持ち悪く蠢いた。


 すぐに戻る視界の中で何かに濡れた掌を見ると、赤い血が張り付いている。


 どうやら、内臓が破裂したらしい。


「さっきまで穏やかだったのに、随分な変貌だな」


 空元気に気勢を振り絞る様にして、口元を拭いながら皮肉る。


 いくら落下の衝撃を受け身で抑えたとはいえ、内蔵が破裂したダメージは深い。

 気力で踏ん張るのが精一杯だ。

 これ以上は流石に体力も気力も保ちそうにない。


(さて、どうするか……)


 こんな状況で、使えそうな手段はトリモチのみ。

 しかしあれはエネルギーの消費が激しい。

 最近は練度も上がってきたのか、放てる量も増えてきた……ような気がしないでもないが、アレは使い切った後の頭痛が怖い。


 ゲーム風に言えば、INTが大幅に下がりそうなレベルの頭痛だ。

 正確な判断力を奪われる事態にはなりたくない。


 ……つまり、実質(というかこの首輪をされている時点で)詰みなわけだが。


 私はこちらを睥睨する獣人に、絶対逃げ帰るという強い意思を孕ませた赫い眼光で睨み返した。


 ――と、その時だった。


「ちょ、ちょっと待ってくださいアインズバーグ博士!

 それ以上は困りますって!」


 部屋の扉の向こう――このジャガーの獣人が入ってきたあの部屋から、彼の支持で場を外していたニワトリの獣人が、銀色に反射する鉄板?みたいな物を片手に慌てて諫言を放った。


 その言葉に、博士のヘイトがニワトリに移る。


「……ヴィスマルク。

 お前はモルモットに殺されかけても同じことが言えるのか?」


「殺されかけても……?

 まさか、そんな子供に博士が殺されかけたっていうんですか?」


 肩をすくめて、私とアインズバーグを交互に見やるニワトリ。


 たしかに、その部分だけを見れば、身体能力で上回るはずの獣人が、あの状況からこのような小娘に殺されかけるような事態になるというのは間抜けにしか見えないだろう。


 若干彼(?)のセリフに笑いの調子が混ざっていることから、その言葉の裏に『くならもっとマシな言い訳をしろよ』という感情が見て取れる。


「我が嘘を言っていると?」


 低い声でヴィスマルクに唸る博士。

 しかしそれはこの現状を見れば嘘であるということは先ずないだろうことは、そこのニワトリにも理解できた。


 故に、しばらくの間硬直して、彼はそのジェスチャーを取りやめた。


「……まさか、ホントに?

 あの状況からどうやって殺すんです?」


「我はまだ死んでおらん!」


「ひぃッ!?」


 あのニワトリのおかげで、ジャガーのヘイトや意識は完全にこちらから外れている。

 ……今なら、隠蔽スキルをフルに活用すればここから逃げられる筈……!

 私は、そんな様子の2人を見て、逃げるなら今のうちだと考え隠蔽スキルを行使した。

 ついでに詐欺スキルを併用して影分身を作り出し、元の場所に配置する。


 よし、準備完了だ。

 あとは足音を立てないようにゆっくり向こうの部屋に移動して、解毒剤を手に入れるだけ。

 首輪の解除は……ミラの空間魔法でこの首輪だけを違う場所に転移できるかどうか、それに賭けるしかない。


 ……帰ったら絶対魔法勉強しよ。

 じゃないといざという時の手札が少なすぎる。

 せめて自衛できる力はこれから絶対身に着けないと……。


 私はそんな事を思いながら、言い合いを白熱させる2人を迂回して、最初にジャガーの獣人が出てきた部屋を目指すことにした。

 毎度お読みいただきありがとうございます!

 もしまだブックマークしてなかったりしたら、是非ともブクマして私を応援してください!


 ……あ、ついでに言うとこれからしばらく同じくらい投稿までの期間が伸びるかもしれないです。

 なので見切らないでくださいホントにお願いしますホントに!


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