少年、刑事になる。
H31/4/3
長らくお待たせして申し訳ありません。
後半部の編集が完了しました。
今後、このようなことが起こらないよう善処致しますので、これからも本作品を宜しくお願いします。
どうも。
依然として囚われた桃状態のイトーです。
いや、私としては別にマ○オ的な救世主を求めている訳じゃないんだけどね。
いや、ホント。
またあのロリコンの変態チビ野郎に助けてもらうとか癪に触るどころの話じゃないから。
これ以上恩を受けてしまったら、私何して返せばいいかわかんなくなっちゃうし。
だから基本的に私は、なんとか一人で脱出を試みたい所存なのだが、いまいち上手い方法も思いつかないでいる。
(あれからどれくらい時間が経ったんだ……?)
時計は愚か、窓すらついていないこの牢獄では、もはや時間を図ることは不可能である。
感覚的にはかる〜く2時間くらい経ってるんじゃなかろうか。
邪魔な雑念だけが、私のステキな脱出計画の画策を妨げる。
「ぬぐぐ……。
ていうか、私の他に誰かいないの?」
あまりにも静かすぎる独房で、私は叫んでみた。
音が反響して、何重にも自分の声が重なって聞こえてくる。
しかし、それ以外は全く反応がなかった。
どうやら本当に、ここに居るのは私だけみたいだ。
「くそぅ……。
こんなところにこんな格好で放り込みやがって。
風邪ひいたらどうしてくれんだよ全く……」
外よりは幾分涼しい地下牢(たぶん)とはいえ、こんなところに放置されれば絶対体を冷やすだろう。
私は体を温めようと腕を擦りながら、硬い床の上で胡座をかいていた。
――と、その時だった。
「!」
カツン、カツン、カツンと、階段を移動する靴音が檻の隙間から見える扉の方向から聞こえてきた。
どうやら誰か降りてきたみたいだ。
(この感じは……多分1人か)
ふと、先程頭に浮かんでいた名(迷)案が脳裏を再び過った。
うん。
1人なら、不意を付けばもしかするとさっき考えてた無謀な作戦が成功するかもしれない。
作戦というよりは奇襲か。
いや、奇襲も立派な作戦だ。
気分は某アクション映画のスパイ。
不可能なミッションを次々と可能にしていく敏腕スパイメンだ。
私は暗号化スキルを上乗せした隠蔽スキルで影の中にハイディングすると、トリモチスキルの準備をして今か今かと獲物が罠にかかるのを息を潜めて待ち構えた。
――キィィィ……。
黒板を引っ掻くような、嫌な摩擦音を牢獄いっぱいに響かせながら、鉄扉が開いた。
――来る。
鉱石灯の明かりに照らされて、扉から現れる人影が扉の隙間からニョキッと生える。
それと同時に扉の影から姿を表したのは、ニワトリの頭をした獣人(いや鳥人か?)だった。
「っ!?」
もう1週間以上も異世界で過ごしていたおかげで、ある程度獣人の見た目にも慣れてきたと思っていたが、どうやらまだ急に登場するというパターンには慣れていなかったみたいだ。
思わず私は息を詰まらせてしまい、結果その瞬間だけ隠蔽スキルの効力が大きく弱まってしまった。
ギョロリ、と円とは言い難い瞳が、こちらを凝視する。
いくら隠蔽スキルとはいえ、このように直視されては隠蔽の意味もない。
……どうやら、奇襲作戦は失敗したみたいだった。
「ギンコ、時間だ」
鳥にしては筋肉質で、かつ野太い声が私の名前を呼びながら、懐から鍵束を出してジャラジャラと見せつける。
「……私に何する気?」
「それに答えることは許されていないんでな。
直接行って確かめてくるがいいだろう」
彼(?)はそう言うと牢の鍵を開けて、外に私を連れ出した。
どうやら特に拘束するつもりはないらしい。
……まあ、そうだとしても、この無骨な首輪に何か魔法的な効果でも付いていたりするのだろう。
自由になったからと言って、迂闊に行動するのは避けるとしようか。
もし拘束具でも持ってきていたなら暴れてやったところなんだが、それが無いということは多分そういう理由に違いない。
私はすんなりと牢から抜けると、前を歩くニワトリについて歩くのだった。
⚪⚫○●⚪⚫○●
冒険者学校初日。
俺の隣の席は空席だった。
最初は体調不良だと聞いていたから、あのテストの時は熱中症になっていたりと結構体調を崩していたし、まあそういうこともあるかと気にしてはいなかった。
だが、あいつは翌日になっても学校には来なかった。
その次も、その次の日も、そして休日を挟んだその翌日でさえ、あいつは学校には来なかった。
本当に体調不良か?
もう何日休んだ?
別に心配しているわけではなかったが、どうにも引っかかる。
このせかいじゃ、風邪を長引かせて死ぬことはザラだ。
治療系の魔法が使えるのなら問題はないが、風邪などの病を癒す《解毒》の魔法は、相当に知識が無くては使えない難しい魔法だからだ。
だから、風邪を癒すなら普通、治療院にかかりに行く。
だが治療院の医療費は高い。
学生証代わりになっている、仮の冒険者手帳があればそれなりにやすくはなるが、それでも銀貨一枚。
一人で歩き旅をしてきたらしいあいつは、それなりに高い宿に泊まったと聞いたから、治療代はたぶん問題ないだろうが、しかしあいつは小さい上に体力がない。
金はあっても治療院に行く体力が無ければ同じだ。
もしかすると宿の中で倒れているかもしれない。
そう考えるといてもたってもいられなくなった彼は、授業の資料を届ける名目で、イトーの見舞いに向かうことにした。
あいつの泊まっていると宿はあっさり見つかった。
何せあの銀髪にあの容姿だ、目立たないはずがない。
彼はイトーが泊まっていると聞いた宿に足を運ぶと、その宿の女将さんに、見舞いの旨を伝えた。
「え?
あの娘学校にも来てないのかい?」
「……どういうことだ?
まるで、最近ここには帰ってないような言い方だが」
女将の反応に彼は怪訝に眉をひそめる。
「あぁ。
あの娘、テストの日以来、宿には帰ってきてないんだ。
とりあえず家賃は数日分貰ってるから、その間部屋は開けておくつもりだけど……こういうのは迷惑なんd──ちょっと、どこ行くんだい!?」
ルークはその言葉を聞くなり、彼は彼女の言葉を後に、猛然と駆け出していた。
空はもうすでに赤く、時計塔の上で羽を休めていたカラスたちが、鐘の音に驚いて飛び立って行く姿が、噴水のあるギルド広場の空を横切って行く。
彼が向かっていたのは、冒険者育成学校だった。
幸いなことに宿からはそう遠くない距離にあったが、わざわざ普通に走るほど呑気にしてはいられなかった。
彼の頭の中に、一つの不快な予想がよぎったからだ。
その予想は、できれば当たって欲しくはないもので、しかし現状を鑑みればそうとしか思えない、一つの答え。
彼は脚を真っ黒に染め上げると、建物を迂回するのも鬱陶しいとばかりに隣家の屋根に飛び移り、街道をショートカットする。
(見えた!)
ものの数秒ほどで、彼は目下に広いグラウンドを見つける。
冒険者学校の運動場だ。
彼は眼下のグラウンドに誰もいないことを確認すると、ルーン文字の奇跡を描きながら、その手を横に薙いだ。
『落下被ダメージを零倍』
黒い魔力が、最後に『完了』を意味するルーン文字を空中に記す。
その瞬間、魔力が彼の指示した命令通りに流動し、複雑に絡み合い、一つの現象を引き起こした。
彼は難なくグラウンドに降り立つと、そのままの勢いで職員室へと駆け込んだ。




