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校長、閃光弾になる。

 どうも。

 変な子供にオフニーとか言う謎行為を異様に勧められるという恐怖体験をして心が疲れていますイトーです。


 ……ホント、何だったんだろうあの娘。

 謎すぎるだろオフニー。


 ……いや、もっと言えばそれを広めたらしいシュノークローゼンも謎だわ。


 ミラさんは幼女大国って言うし、武器屋のクライム……なんとかってところで買った日本刀もシュノークローゼンの伝説の刀匠の作品だとか言うし……。


 天才は変人とはよく言うが、まさに変人だわな。


 いやはや、馬鹿と天才は紙一重ってよく言ったもんだよ。

 あれはきっとそういう意味だったに違いない。


 それはさておき。


 私は今、体操着に身を包んでテスト会場である闘技場へと向かっている。


 体操着はブルマで、その下は水着という現代日本の感覚においては些か刺激が強すぎる格好だ。


 水着を購入したときに、一度だけ着慣らしておこうと袖を通した時は、水着を着るということにかなり躊躇してしまったものだ。


 ……何せ、心は男のままだし、前世の記憶も、ほんの僅かではあるが残っているのだ。

 躊躇してしまうのは仕方ないだろう。


 ……え?

 制服はどうだったのかって?


 あー、制服な。


 この学校の制服は、セーラーではなくブレザーだ。

 紺色のブレザーに白のワイシャツ、それから紺色のプリーツスカートと赤いネクタイ。


 幸い、ネクタイの結び方は知識として残っていたので問題はなかったが、知識と経験は別物。やはり初めてはなかなかうまい具合に格好良く締まらなかった。


 まあ、そこは練習したから問題ないけど。


 ……え?

 そんなことを聞いているんじゃない?


 ですよね……。


 はい。

 わかりました、スカートのことだよな?


 いつもはスカートではなくズボンを履いていたからな。

 まあ、でもこれは意外と大丈夫だったぞ?


 この世界に来た初日はノーパンどころか素っ裸で森の中彷徨いてたからな。そのおかげか、跨がスースーする事は慣れてしまっていた。


 なんだか男をやめてしまった気分になって少しだけ切なくて泣いちゃったのはまた別の話だが。


 とはいえ。

 スカートを履くことに慣れていない私は、どうしてもパンツが見えてしまうのでは?ということを気にして、初めのうちはまともに歩けなかった。


 あと背徳感って言うの?

 スカート履いてるのがちょっと恥ずかしかったんだよな。


 そこで、そういえばこの間下着売り場でマーリンさんに買ってもらった中にスパッツみないなのがあったことを思い出したんだ。


 それでもしかするとと思ってスパッツを履いてスカートを履いてみればあら不思議。

 かなりマシになってしまった。


 ぴっちりしたズボンを履いている感覚といえばいいのか。

 股引を履いていると、謎の安心感に襲われて、冬はもうそれなしでは生きていけなくなるというが、おそらくあの感じに似ている。


 そんな回想をしていると、遠くに急ぎ足で闘技場へ向かう体操着姿の生徒たちを見つけた。


 数は数人程度。

 急ぎ足なところを見ると、テスト開始までもう時間がないみたいだ。


「よかった、ギリギリセーフ!」


 私は、遠くに見えるコロッセオのような建物を見つけると、それに向かって全力で駆け抜けた。


⚪⚫○●⚪⚫○●


 闘技場は、レンガで覆われた巨大なアーチが、いくつも連なって形成されていた。

 高さは大体50メートルくらいか。

 見上げるほどの高さを持つそれは、はっきり言って壮観だった。


 走る生徒に倣って、レンガのアーチを抜ける。


 アーチの前には教師なのか警備員なのかはわからないが、人が2人立っていた。


「組分けテスト開始まで、あと5分です!

 急いでくださーい!」


 兵士っぽい出で立ちをした2人組の声を尻目に、私は走る速度を上げる。


 ……が、如何せん私には体力がない。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」


 私は荒い息を上げながら、アーチを潜った。


 あー、これからは抜刀だけじゃなくて、走り込みの特訓も追加しないとだなぁ。

 じゃないと、冒険者なんて滅茶苦茶動く職業務まらねぇし。


 ……つぅか、抜刀自体アレで動きあってるのかすら分かんないんだよなぁ。

 一応、見様見真似っていうか、知識として覚えてる感じでやってはいるが。


 今一刀に振り回されている感があるから、そこをなんとかしたい。


 ワガママ言うと、抜刀スキルなんて物があるんだから、システム補正とかそういうのがあってもいいと思うんだけど。


 私が思ってるスキルとこの世界のスキルって、ちょっと違ってたりするのかな?

 ……いや、違ってて当たり前か。

 こんなの妄想なんだし。


 そうこうしてあれこれ考えていると、やがて私はアーチを抜けて廊下に出た。


 おお、さすが異世界クオリティ。

 雰囲気あるなぁ。


 レンガ造りの廊下の壁際にはランタンが吊られ、日の差さない廊下を照らしている。

 ランタンの中身が蝋燭ではなく何かよくわからない石っぽいものってところが、ますます異世界っぽい。


 私が名付けるとしたなら、鉱石灯といったところか。


 ……え?

 ネーミングセンス無さすぎ?


 だまらっしゃい!


 閑話休題。


 小走りで廊下を駆けながら、私はその光景にワクワクと胸を高鳴らせた。


 これは、今後の授業が期待できそうだ。


 廊下を抜けると、突き当りに大きな広間に出た。

 いや、広間というかアリーナだな。


 中心に巨大な舞台があって、その上に数多くの生徒たちと思われる体操着姿の男女がひしめき合っていた。


 ここから様子を見るに、どうやら別に整列しているというわけでもなく、各々好きな場所に立っているようである。


 ……それにしても。


「人、多いなぁ……」


 思ってたものの2倍くらい人がいる。

 ざっと数えて200人くらいか?


 私は、余りの人の多さに驚きながら、舞台に上がる。


 舞台の高さは大体1メートル程で、所々に階段がついていたので、それを使ったのだ。


「あれ、見覚えのある白髪しらがだと思ったら。

 お前、親父の知り合いの幼女じゃねぇか」


 と、その時だった。

 ふとどこかで聞いたような気がする少年の声が、私の耳に届いた。


 見回してみると、そこにはいつかの門番のおじさんが制服を買いに連れてきていた中学生くらいの身の丈の茶髪の少年を見つけた。


 名前は……たしかルークだっけ?

 門番の息子で名前が城壁ルークってすごい名前だなぁって思ってたの思い出した。


「白髪言うな、銀髪って言え」


 幼女なのは認めるが、せめて銀髪を白髪って言うのはやめろよ。

 傷つくだろ。


「一緒じゃねぇか」


「違う、こっちには光沢があるんだよ!

 一緒にすんな」


 ったく。

 急に話しかけてきたかと思えばいきなり悪口かよ。


 私は眉を顰めて彼にそう言い返す。

 ルークはそんな様子の私に見向きもせず、ムッスリとした顔でそっぽを向いていた。


 そういえばこいつ、前に遭ったときもこんな顔してたな。

 これがこいつのデフォルトなのか?


 ……何にしてもウザい奴だ。

 門番のおじさんには寛大に見てやってくれとは言われたが、悪いけど、こいつとらあんまり関わらないようにしよう。


 私はそう心に決めると、少しでもルークから離れようと人混みの外、比較的人の少ない場所を選んで移動する。


「よし、後ろの方ならあんまり人もいないな」


 段々と落ち着いてきた呼吸に、ふぅ、と一息つくと、私は前方に見える朝礼台(?)に目を向けた。


「うぉ、眩しっ!?」


 瞬間、視界が真っ白に塗りつぶされる。


 びっくりした……。


 あまりにも突然だったものだから、思わず声に出してしまった。


 たぶん、ガラスか何かに反射した日光がたまたま直接私の目を貫いたんだろう。

 うん、よくあることだ。


 ……にしても。

 いくら反射したとはいえ、視界を塗りつぶすほど強い光になるのだろうか?

 ピンポイントでこちらを狙ってきたならまだわかるんだが……。


 何となく気になり始めた私は、その光を放ってきたものの正体を探すべく、視界を彷徨わせた。


「諸君、今日は遠路遥々当校に足を運んでくれたこと、誠に感謝する!」


 ――が、どうやら必要なかったみたいだ。


 石製の台(今は朝礼台っぽくなっている)の上に立っている人物が、その場にいた生徒、教師すべての視線を注目させる。


 ……すごい。

 さっきまでざわざわしていた生徒たちの犇めきが、彼の一声で自然と静まってしまった。


 いや、そんなことよりも――。


「我輩の名はスキンヘン・ハーゲン!

 この街――『はじまりの街』の冒険者育成学校の学校長、及び冒険者ギルド『はじまりの街』支部のサブマスターを務めている!

 諸君らとは度々顔を合わせるだろうから、顔と名前は覚えて帰ってほしい!」


 彼の頭が、眩しいほどにツルツルでピカピカだった。


 どうやら、先程の目くらましの正体は彼のスキンヘッドのようだった。


 ……彼の頭の光の反射がすごすぎて、ちょっと神々しくなってるのはおそらく気のせいだろう。

 そういう事にしておいてあげよう。


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