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私、呆然になる。

 長らくお待たせいたしました!

 最新話、ようやっと登場です!


 これからもまあ、こんな具合でだいぶ間が開く事もありますが、そこはご愛嬌とでも思ってお付き合いいただければ幸いです。


 それでは、どうぞ。

 ……あ、どうもイトーです。

 まさか服を買うのがこんなに疲れるとは思いませんでした……。


 あのアパレル店員……めちゃくちゃ強引なのに服のセンス良すぎてホント困るわ……。

 おかげで金貨10枚(1,000,000円相当)ぐらい飛んでいったぞ……。


 私はお店の更衣室で、買ったばかりの服に着替えながら引きつった笑みを浮かべる。

 姿見に映る自分が、どこか嘆かわしい。


 私は、黒の吊りミニスカンツのボタンを留めると、ニーハイを履いて鏡の前でくるりと回ってみせる。


 ワイシャツの前立てと襟にあしらわれたフリルが、胸元の蒼いリボンと供に揺れる。

 肩から伸びた黒いサスペンダーは背中でX字状に交差して、腹部を巻くコルセットベルト(といってもそんなに締まりは強くない)につながり、丈の短いスカンツに繋がっている。


 そのスカンツの裾が、胸元のリボンとゆらゆら揺れて、私の銀髪と碧眼に雰囲気がマッチしていてとても愛らしい。


「うん。

 我ながらかわいいな、これ」


 流石10万円相当の衣服は違う。

 ……ただ、これが前世の日本だとセットで1万と数千円とかそれくらいの値段なんだよな……。


 そう考えると、この世界って服の物価が高すぎる気がする。

 いや、この世界ではかなり上等な服なのだから、相場的には違いないのかも知れないが。


 うん。

 でもやっぱりかわいいものはかわいい。


 別に私はロリコンであるということでもナルシストであるというわけではないが、これはこれで風情がある。

 そう、例えば精巧すぎるビスクドールのような。


「……」


 私は、少しヒラヒラするスカンツの裾の下から、少しずつ尻に食い込んでくるパンツの裾を直すと、新調した靴(運動靴は売ってなかったので、軟らかいカジュアル系のシューズを買った)に履き替えた。


 無論、脱いだ服は怪しまれないように、他の衣類同様、もらった手提げカバンの中に入れてある。


「……どうしても、そのケープは外さないんですか?」


 試着室から出ると、着替えを待っていた店員さんが、少し残念そうに尋ねてきた。


「はい。

 命に関わるので」


 ホントに。

 これだけは絶対外せない。

 はずしたら絶対、即チャラ男に見つかる。


 ……この前は油断してフード被ってなかったからな。

 今ならトリモチでなんとか撃退はできそうだが、出会でくわさないならそれに越したことはない。


 私は決意固くそう店員さんに答えると、彼女は『そんな大げさな……』と呆れ顔を浮かべた。


「それでは、ありがとうございました」


 私はそんな彼女に軽く礼を告げる。

 ここにはもう用はない。

 そう思い、その場をあとにしようとしたその時だった。


「待ってください!」


 店員さんに呼び止められて、振り返る。


 すると彼女の手には、黒いカジュアルデザインのフーデッドケープが引っ掛けられていた。


「せっかくかわいいのに、そのケープじゃ全体の景観を損ねてしまいます!はっきり言って勿体無いです!」


 言いながら、ケープを押し付ける店員さん。


「えぇ……」


 いや、たしかに私はかわいいけれども。

 これ以上かわいいと、無差別に『君カワうぃ〜ねぇ〜!』と通り魔的に話しかけてくるチャラ男に釣られてしまう。

 フードで顔を隠す意味がなくなってしまうのだ。


「そこを!

 そこをなんとか!

 特別にお代は私が持ちますから!」


「え、マジで?」


 それってつまり、タダでくれるってことだよな?


「マジです」


 疑わしげな目で見上げる私に、ギラギラとどこか危ない光を持った目で頷く店員。


 ぐぬぬ……。

 そこまで言われると引くに引けなくなってくるぞ……。


 私は、とりあえず押し付けられたケープを手にとって広げてみることにした。


 ケープの裾は前後非対称で、背中側が腰辺りまであり、お腹側がちょうど今着ているコルセットの上辺りまである。

 フードの裾からケープの前たて、裾にかけて金色の刺繍が施されており、襟首は大きなボタンで留めるようになっている。


 そして、フードの頭にはなんと猫耳を模した飾りがついており、ケープの裾の腰のあたりには猫のしっぽの飾りがついていた。


「……」


 私はそれを確認すると、無言でそれを折り畳んで、店員さんに返した。


「……あれ?」


 困惑する店員さん。


 ……いや、そうでしょ。

 普通こんなのタダであげるなんて言われても受け取らないでしょ。

 恥ずかしすぎるよこんなの。

 てかいつ着るんだよ。

 こんなの着るならまだ今被ってるベージュのフーデッドケープのほうがまだマシだよ。


 私は、やれやれと首を振ると、踵を返してその場を後にすることにした。


 はぁ……。

 今度からは、あそこには立ち寄らないようにしよう。


 そう、心に固く決める私であった。


⚪⚫○●⚪⚫○●


 『ツクモ屋』に着いた。

 予定の時間ギリギリだが、どうやら間に合ったようだ。


 私はホッと一息つくと、フードを被ったまま店に入――


「ねえ、君スッゴイ美人さんだねぇ。

 仕事終わってからでいいからさ、お姉さんオレとお茶しない?」


 ――ろうとして、開きかけた扉をガチャりと閉じた。


 なんで居んの、こいつ。


 私は、突然現れたチャラ男の存在に驚きながら、心の中で愚痴を吐いた。


 私が会いたくない!って思った側からなんで現れんの?

 何なのこいつ、もしかして宇宙人とかじゃないよな?

 君かわうぃ〜ね〜銀河からやって来た『ちょっとお茶しない?』星人じゃないよな!?


 ……。


 何言ってんだろ、私。

 動揺しすぎたのか、自分でも何言ってるかわかんないぞ……。


 私は首をふるふると横に振ると、さてとこの難題をどう乗り切るかに思考を馳せはじめた。


 さて、どうする私。


 1.チャラ男が去るまで待つ。

 2.もういっそこのまま突撃してしまう。

 3.隠蔽スキルでこっそり忍び込んで店員さんに事情を話す。

 4.日を改める。


 ぬーん、パッと思いつくのはこの4択くらいか……。

 となれば、ここから行動を選択しないといけないわけだが……はたしてどうする?


 私は頭の後ろをフード越しに掻きながら、目の前の扉を睨む。


 あいつのせいで時間を潰す羽目になるのはなんか腹が立つから論外だな。

 なぜ私があんなやつの為に時間を無駄にする必要がある?

 よってこの選択は却下。

 同じ理由で4番もナシ。


 となれば、無視して店に入るか?

 ……いや、無いな。

 そんなことしたら真っ先に捕まる。

 店の中で暴れるわけにもいかないし、この選択肢も却下だ。


 ……となれば、3番か。


 こっそり忍び込んで、手の空いている店員さんに事情を説明してこっそり事を済ます。


 ……うん。

 これが妥当だな。


 私は意を決すると、フードを目深にかぶって隠蔽スキルを発動――


「あれ、銀子ちゃんじゃん!」


 ――しようとしたら、なんでだろう。


 私は、ドキリと肩を跳ね上がらせながら、声のする頭上を見上げた。

 すると、そこには今一番会いたくない野郎第一位に光り輝く、そして同時にその頭も金ぴかに光り輝いている青年の姿があった。


「……何なんですかお前は……」


 恨み9割、諦め1割のジト目で、私は彼を睨めあげる。


「何って、そりゃ酷いだろ。

 オレたちマブダチだろ?」


「そんなものになった記憶は無いんだけど」


 淡々と、私は現実を伝える。


 何なのこいつ。

 もしかして妄想癖まで入り混じってるの?

 ストーカーな上にロリコンでさらに妄想癖とか、もうコイツ誰も救えないんじゃねぇの?

 いっそ憐れみまで覚えてくるんだけど。


 私は重心を低く取りながら、いつでも逃走できるように準備する。


「そんなぁ!?

 じゃああのときの約束は嘘だったっていうのか!?」


 あのときってどの時だよ。


 私はこめかみに青筋を立てながら怒りを込めて静かに怒鳴る。


「嘘も何も、お前と約束なんかした覚えはない。

 とっとと失せやがれ変態ストーカードMロリコン妄想癖野郎」


「うわぁ、辛辣ぅ〜。

 でもいいぜ、銀子ちゃん。キミのその愛はオレにちゃんと伝わってるから!」


 ( ´∀`)bグッ!とサムズアップするチャラ男。


 やべぇ、こいつ全っ然伝わってねぇぞ!?


 私はあまりにも度が過ぎるポジティブ思考(?)に絶望しながら、地面に両手をついた。


 いや、わかってたけどさぁ……。

 もうコイツ、絶対誰にも――いや、誰からも助けられないところにまで落ちてるぞ……。


 あと、好きなタイプではないがそこそこ顔が良いのが余計に腹立ってくる……。


 あ、ちなみに私はもう少しワイルドな方が好きです、はい。


「……爆ぜればいいのに」


「ホントにねぇ」


 と、そんなことをしていると、私の背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 振り返ってみると、そこには巨大なメロン……いや、スイカをぶら下げている成金みたいな格好をした女性がいた。


 マダムである。


「げっ、先生……!?」


「こんにちは、イトーちゃん。

 あの後大丈夫だったかしら?」


 鬼でも見たかのような奇声をあげて仰け反るチャラ男を尻目に、マダム・マーリンは私に挨拶を送った。


 この人はマーリン。

 数日前にランジェリーショップで知り合い、下着をいっぱい買ってもらった人だ。

 そして一昨日、温泉の更衣室で爆乳を晒して私を気絶に追いやった張本人でもある。


 そういえば、温泉宿の宿泊代奢ってもらったのまだお礼言ってなかったな。


 私はこくりと頷くと、彼女に挨拶を返すついでにそのお礼を言う事にした。


「あ、あのときはありがとうございました。

 その、宿代まで奢ってもらっちゃって」


「いいのよ、別にそんなこと。

 ただ、いずれは精神的にお返ししてくれると嬉しいかしらね?」


 彼女はそうニコリと微笑むと、私の服を透視しようとでもするかのようにジッ……と視線を向けた。


 ……うん、把握したわ。

 これ、絶対に精神的なお返ししたらダメなやつだ。


「あはははは……。

 出世払いでお願いします(真顔」


「ダメよ。

 それ、絶対出世しない子の常套句だもの」


 ちっ、ダメだったか。

 これは早急に恩返しを考えなければ、私の心が羞恥心で多分死ぬ。

 いや、絶対死ぬ。


「ところで……」


 ふと、思い出したかのようにマダムが私の後方に視線を向けた。

 つられるようにして、私の視線も自然と後ろを振り返る。


 するとそこには、差し足摺り足忍び足といった風にコッソリとその場から退場しようとしている金髪の青年の姿が映った。

 チャラ男である。


(うへぇ、嫌なもの見ちまった……)


 もう視界にすら入れたくないほど不愉快な男を呼び止めたマダムに、かなり恨めしげな視線を送る。

 すると彼女はウインクを1つ、再度視線をチャラ男に戻した。


「な、なんスか先生?」


 マーリンの事だろうか?

 彼は至極嫌そうな顔をしながらこちらを振り向いた。


 まったく、嫌な顔したいのはこっちだってのに。


 とりあえず侮蔑する顔をして睨んでおく。

 侮蔑するような(・・・)ではない。

 100%侮蔑している顔である。

 私が不良ならタンまで吐きかけているような顔である。


 まあ、しないけど。


「貴方、まだ懲りていないのかしら?」


「えーっと……何のことかオレにはさっぱり……」


 とぼけるチャラ男。

 一方でマダムの方は笑顔だが目が笑っていない。


「とぼけないでくれるかしら?

 この私が知らないとでも思っているのかしら?」


「……」


 黙るチャラ男。

 その目線は申し訳なさそうに――という色が全く見えない角度でそっぽを向いている。


 ……こいつ、口にトリモチ貼っつけて息の根止めてやろうかな。


 それから、マーリンによる説教が始まった。

 話を聞くところによれば、以前もこのように叱りつけたのだが全く懲りずにナンパしまくっていた様だ。


 知りたくもなかったが、今回もこれで懲りるとは考えられないだろう。


「というわけで、今回は禁固刑を追加しようと思っているのよ」


「き、禁固刑!?」


 ここに来てようやく取り乱すチャラ男。

 いい加減早く話し終わらせてほしいんだけどなぁ。

 いちいち反応されるの困るわ。


 ちらり、とツクモ屋の方に視線を向ける。

 するとそこには、至極関わりたくなさそうな顔でこちらを見ている店員さんの姿があった。


 さっきこいつにナンパされてた人だ。


 あ、目があった。

 あ、苦笑いされた。


 ご心境お察ししますってか?

 大変だなぁ、この人も。


 あとで女子会でも開くか。

 ……いや、止めよう。何話していいか全くわかんねぇし。


 意識をマダムに戻す。


 どうやら私が意識を店員さんに傾けている間に話は進んでいたようだ。


 マダムがイヤイヤをするチャラ男に判決を下す。


「というわけだから、貴方には10年の禁固刑を言い渡すわ。

 せいぜい独房で右手の恋人でも口説いていればいいかしらね」


「そんなぁ!?」


 彼女はそう言うと、カツン、とそのヒールを床石に叩きつけた。


 するとどうだろう。


 彼の周囲に紫色の魔法陣が4つほど現れたかと思えば、そこから金色の鎖のようなものが射出し、チャラ男の肉体を拘束した。


 なんだ、あれ?

 あれも魔法なのか?


 そんな驚きが顔に出ていたのだろう。

 マーリンはそんな私の表情を見てニコリと笑いながら解説してくれた。


「アーティファクトを見るのは初めてかしら?」


「アーティファクト……?」


 アーティファクトっていうと、アレか。

 ラノベとかだとめちゃくちゃ高性能な魔道具とか、古代の大魔法時代の遺産だとか、概ねそんな設定で登場するアイテムだよな?


 まさか、こんなところでアーティファクトが見られるとは思わなかったぞ。


「このアーティファクトは《貪り食う者(グレイプニル)》とでも呼べばいいのかしらね。

 この鎖に捕まると、魔力や闘気、スキルの一切が使えなくなるのよ」


 にこやかな笑顔を浮かべながら、そうのたまうマダム・マーリン。


 何てチートだよそれ!?

 そんなのあったら、魔王なんてイチコロじゃねぇか!?

 むしろそれRPGで魔王が持ってるようなアイテムだろ!?


 なんでそんな物持ってるのこの人……?


 彼女はそんな私の反応が面白いのか、クスクスと笑いながら縛り上げたチャラ男を宙に浮かせた。

 見てみれば彼はげっそりとした顔でぐったりとしている。


 ははっ、ザマァ!と言ってやりたいところだが、突然のアーティファクト登場でそんな気分ではない。


「これで、すくなくとも10年はこいつとオサラバだから安心してくれていいわ。

 それでは、私はこれからごうも――もとい用事があるから、ここでお別れするわ」


 彼女はそう宣うと、呆然と見送る私を尻目にその場を後にした。


 ……さっき拷問って聞こえた気がするけど、聞かなかったことにしよう。

 マーリン裏ボス説。

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