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私、幽霊になる。

 どうも、イトーです。

 今日は先日オーダーしていた水着を受け取りに行く日です。

 正直、あの臭い白濁液からどうやって水着を作るのかが非常に気になります。


 それはさておき。


 あの店で売られていた学校指定の水着は、所謂旧スクと呼ばれる型でした。


 そう。

 ピッタリと上半身ボディに密着するエロティカルなワンピースタイプの上衣と、ブルマのような形である意味で扇情的ともさえ言えるデザインの下衣が組み合わせられた、ロリコンの鼻(二重解)を殺す日本の旧スク(蛮勇)である。


 もしかしてこれを作ったのって日本人なんじゃねぇのか?ってくらい、デザインが似ていた。


 正直なところ、それを私が着る事に対してかなり抵抗感があるんだけど、学校の授業で必要なのだから仕方ないと思うしかないだろう。


 ……だって、制服なんてスカートなんだぜ?

 採寸してもらってる時とか超恥ずかしかったよ。


 ほら、あの格好で毎日学校に通うこととかを考えるとさぁ?


 なんか、こう、罰ゲームうけさせられてるみたいな気分になる。


 はぁ……。

 憂鬱だ。なぜTSなんかしたんだろうう?


 ここはもう諦めて、自分が幼女であることを楽しむしか……いや、無いな。

 それは無い。

 そんなことして変なおっさんに気持ち悪い視線を向けられるのはまっぴらゴメンだ。


 一人称は仕方ないにしても、心まで持っていかれては大惨事になること間違いなしだからな。


 私はホモではない、ノーマルなのだ。


 ……あれ?

 でもこの場合ノーマルと言ってしまうと恋愛対象が男性になってしまうのでは……?


 いやいやいや。

 私にそんな性癖は一切ない。

 断じてない。


 恋愛対象はいつだって女性だ。


 チッパイでもデッパイでもどちらでも来いだ。

 ただし、柔らかくて形がいいのが前提条件である。


「って、私は朝から何を語っているんだ……」


 私は日課の刀の自主稽古を終えると、1階で借りた桶に井戸の水を淹れて、持ってきたタオルを濡らした。


 現在の時刻は午前7時。

 受け取り予定時刻は昼の1時だから、それまでにまだ時間がある。


 この時間は暇になってしまうので、日課のあとは昨日獲得したスキルの使い方とかを確認するつもりでいる。


 昨日はもうなんか、面倒くさくなっちゃったからな。

 やる気ある今のうちに、色々把握しておいたほうがいいだろう?


 私は濡れたタオルを絞ると、シャツの下から手を入れて汗を拭き始めた。

 衝立か何かあればよかったんだけど、無いみたいだからな。


 庭の奥の物陰でこっそりやるくらいしかない。


 ……え?

 部屋に持っていけばいいじゃないかって?


 それもそうなんだけど、持っていく途中で水をこぼしたりとかしたら嫌じゃん?

 それに、井戸の近くならいちいち水を取りに戻ってこなくていいし。


 そんな訳で、幸いなんのハプニングも起こらず体を拭き終えた私は、桶の水を庭垣に沿って掘られている排水口に流して宿に戻ることにした。


 宿に戻ると、少し遅めの朝食を摂る。


 今日は、レタスとトマトっぽい野菜とオーク肉のベーコンを挟んだサンドイッチ。

 間に目玉焼きとチーズも挟んである。


 めちゃくちゃ美味かった。


 ただ……この小さい体にはちょっと量が多すぎるんだよなぁ。

 なかなかボリューミーなサンドイッチだからか、それ1つでお腹いっぱいになる。


 ちなみにお値段は銅貨50枚。

 日本円換算でだいたい500円くらいだ。


 ……だったのだが、何故か今日は野菜の量が少ない。

 いつもの半分くらいの量だ。


「あれ、今日は野菜少ないですね?

 何かあったんですか?」


 気になったので部屋まで運んでくれた中居さんにチップをいつもの2倍渡しながら質問する。


 ちなみに部屋まで運んできてもらうのは、偶然を装って例のチャラ男やらに遭遇しないためである。


「実は、少しトラブルがありまして。

 詳しくは知りませんが、なんでも数日前から畑にゴブリンが出るんだとか」


「ゴブリン……?」


 ゴブリンっていうと、アレだよな?

 最近よく森の中で見る、私と同じくらいの身長のキモいやつ。


 ラノベだと偶に『ゴブリンに畑を荒らされて困ってます、助けてください』みたいな依頼がやってくるのはよく見るけど……。


「そんなにすぐこんな影響出るものなの?」


「さあ?

 私はそこまで詳しくありませんから」


 彼女は少し申し訳なさそうに応える。


 んー、私もよくわかんないけど、こういうのって大概すぐに冒険者が対応してくれたりしそうだし、そのうちなんとかなるでしょ。


 私はニコリと笑みを浮かべると、『ありがとう』と礼を言った。


⚪⚫○●⚪⚫○●


 さて。

 朝ごはんも食べたことだし、早速スキルの練習をするとしようか。


「えーっと、まずは……暗号化スキルから始めてみるか」


 私は判定紙に映された文字列を見ながら、うんと頷く。


 暗号化スキルとは、スキルの解説を読んでみると『対象の情報を暗号化して認識を妨害する』というものらしい。


 イマイチ、対象の情報を暗号化っていうのが何なのかよくわからないが、何にせよ認識を妨害するスキルらしいということは読み取れる。


 また、どうやらこのスキル、『隠蔽スキルと詐欺スキルの発動時に少しボーナスがある』と書かれているが、どうやらこの『少しボーナスがある』という文言は、スキルを意識して確認してみるに、今回だと隠蔽スキルと詐欺スキルの効力が、このスキルを所持しているだけで上昇する……ということらしい。


 まあ、簡単に言えばパッシブスキル的な効果を孕んでいるということだろう。


「ということは、今までより隠蔽スキルの精度が上がるっていうことでいいのか?」


 多分そういう意味だろうとは思うが、まずはやってみないとわからない。


 とりあえず隠蔽スキルの精度がどうのというのは、対照実験ができないし、暗号化スキルの効果だけを試してみようと思う。


「んじゃあ、とりあえずそこのベッドにでも仕掛けてみるか」


 私はそう呟いてベッドに手を向けると、暗号化スキルに意識を傾けた。


 全身から、血の巡る感覚を感じる。

 そして、その流れは濁流のように掌に集まっていき、やがて決壊した。


「――ッは!?」


 途端、全身から何かが流れ出す感覚が襲い、私は急激な疲労感に見舞われる。


 体力的な疲労ではない。

 精神的な疲労でもない。


 これは、トリモチスキルを使ったときのと同じ感覚の疲労だ。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 あまりに突然すぎる疲労の波に悶えながら、私は地面に手をついた。


 やばい。

 めっちゃしんどいぞ、これ……。

 心臓がバクバク……はしてないけど、めちゃくちゃ疲れる……。


 私は疲れた体を無理やり起こすと、目の前のベッドを見て――何も変わったことがないことを認識した。


「はぁ……はぁ……はぁ……?」


 力が足りなかった……のか?

 いや、それとも継続して力を流し込むタイプか?


「……どっちにしろ、今の私にはコストがでかすぎて使えないわなぁ」


 検証結果。

 暗号化スキルをベッドに使用したが、何も起こらなかった。


 考察。

 スキル発動時に使用されているのだろう何らかのエネルギーが足りなかった。

 もしくは、そのエネルギーを継続して注ぎ込まなければ効果は発動しない。

 もしくはその両方。


 問題を解決するには……そうだな。

 もっと小さいやつに使ってみる、とか?


 例えば、ペンとか。


「……よし、試すか」


 体力(?)も回復してきたし、問題ないだろう。


 私は早速、机の上に置きっぱなしにしていたペンを手に取ると、暗号化スキルを発動させた。


「……あぁ、なるほど。

 暗号化ってそういうことか」


 結果は上場。

 スキルは問題なく発動した。


「なるほどなぁ」


 私は、自分の握っているペンを見て呟く。


 なんと説明すればいいのか。

 そうだな、簡単に言えばこのスキルは、人為的にゲシュタルト崩壊を起こすスキルだ。


 ゲシュタルト崩壊っていうのを簡単に説明するとだなぁ……。

 うーん、言葉で説明するのは面倒くさいので、実際に体験してもらうこととしよう。


 少し、下の文字群を見てもらいたい。



 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ

 ええええええええええええええええええ



 この『え』という文字の集まりを見て、君たちはこう思ったことだと思う。


 即ち、『あれ?『え』ってこんな形してたっけ?』


 ――そう。

 その感覚こそがゲシュタルト崩壊だ。


 このゲシュタルト崩壊と呼ばれる現象を人為的に引き起こす。

 それが暗号化スキルの効果なんだろう。


 あと、もうひとつわかったことがある。


 それは、このスキルは使用している間、継続的にエネルギーを消費する、ということだ。


 対象の大きさに応じて消費するエネルギー量も増減するとなると、今の私ではせめて小物程度を隠すのがせいぜいだろう。


 ぬーん……。

 コスパの悪いスキルだなぁ、これ。


⚪⚫○●⚪⚫○●


 粗方スキルの確認を終えた私は、早めに昼食を摂って宿を出ることにした。

 もちろん、暗号化スキルでブーストされた隠蔽スキルを発動しながらである。


 時計塔の頂上に取り付けられた巨大な時計を確認する。


 時刻はまだ午後1時には遠い。

 あと1時間半くらいある。


 ……え?

 こんな早くにご飯食べて何をするつもりなのかって?


 ほら、私って服はこの1着しか持ってないでしょ?

 白いワイシャツに紺色のベスト、あとは少しダボついた男物のズボンと、顔を隠す用のフーデッドケープ。


 下着はマーリンさんに大量に買ってもらったからいいんだけど、流石に持ってる服がこの1着っていうのはいろいろ不便なんだよ。


 昨日だって森に行って汚れたし、ついでに今朝は刀の自主稽古でちょっと汗臭くなってしまった。


 宿の部屋にいる間は脱いで下着姿になるにしても、あのままでは汗でカビが生える。

 要するに洗濯とかしたいわけよ。


 ……もうそろそろ、汗で臭くなってきてるし。


 いや、体は大丈夫なんだよ?

 昨日ちゃんと、まあ、久しぶりだったけどお風呂入ったし。


 まあ、そんな訳で。

 水着をもらう前にちょっと服屋さんに行って、お買い物しておきたいのさ。


 と、そんな訳で服屋にやってきたのだが。


「いいですねぇ!

 とってもお似合いですよ、お客様!

 あ、こちらのカーディガンなんてどうです?

 お客様の銀髪がよく映える上、オトナな印象も――」


「んー。

 でも、私はこういうのよりもっと丈夫で激しい動きに耐えられそうなのが――」


 私は、鏡に映る銀髪の美少女を見つめながら、強引に迫ってくる店員さんに苦笑いを浮かべた。


 言わずもがな、自分である。


(なぜ、こうなってるんだろう……)


「大丈夫ですよ!

 冒険者活動以外の休日や、お友達とのお顔物にでも着ていけますし、それに何よりとてもお似合いですよ!」


 店員さんはニコニコと笑いながら、次から次へとお出かけ用の衣服を持ってくる。


 ぬ〜ん。

 それにしてもこの店員さんめちゃくちゃ強引だなぁ。


(入る店、間違えたか?)


 冒険者として外で動き回れるような服が欲しかったんだけど。


 ちらり、と店員さんの持ってきた衣服の値札を見てみると、そこには銀貨53枚の文字が。


(げ、5万3000円相当……)


 高すぎじゃね?

 いや、この時代にしてはかなり上等な服だとは思うんだが。


 物の相場がわからないのは痛いかもしれんなぁ。


 他にも、試着済みの洋服(ワンピースとかガウチョパンツとか吊りスカートとか)を見てみると、一番高いもので銀貨78枚。安くても32枚はする。


 ぬぐぐ……。


 結構気に入ってしまったデザインが多いだけに、この店員さんの腕の良さに思わず戦慄を覚える。


「……とりあえず、保留で」


「はい、お買い上げありがとうございます!」


 保留っつってんだろ!?

もう一度ゲシュタルト崩壊を体験してみよう!


ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ

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