私、クモになる。
どうも、イトーです。
紆余曲折あって水着の材料となるクリーパーの樹液集めをしていたら、ゴブリンがクリーパーを握っていたので強奪してみました。
別に、モンスターから奪ったんだから犯罪にはならないだろう?
と、いうわけで、ゴブからクリーパーを盗った私は、そのままゴブと戦闘にならないうちに逃走スキルで安全そうなところまで逃げてきました。
……え?
ゴブ退治はしなかったのかって?
……。
だって、まだ何か動物殺すこととか馴れてないし。
ゴブリンつっても人型だし。
なんか妙に拒絶感あるし。
あとちょっと怖いし。
はぁ……。
もしかしたら私、冒険者らしく武器振り回して魔物退治〜!なんて、実は向いてないかもしれないなぁ。
「えーっと、ナイフで腹を裂けば良いのか?」
しばらく歩いて、ちょうど良さそうなところに出た私は、奪ったクリーパーから樹液を絞り出す作業を始めた。
うん。
人型じゃない魔物なら、私でもなんとかなるようだ。
私は、護身用に装備していたナイフを腰から抜くと、空き瓶の口の上に吊るしたクリーパーの腹を裂く。
「うぇ……っ」
ドロッ、とした白濁液が、蛇の傷口から垂れる。
正確に描写するとR18に抵触しそうな感じだ。
あと、めちゃくちゃゴム臭い。
燃やしたプラスチックみたいな臭いがする。
「けほっ、けほっ」
あまりの臭さに咳き込みながら、小瓶の半分ほどまで溜まった液を睨む。
「まるでせ○液だな……」
臭いは全然違うけど。
私は、全て瓶の中に落ちたことを確認すると、瓶に蓋をして死骸をそこらへんの地面に投げ捨てた。
「目標まで、あとだいたい20匹くらいか?」
1匹で250mlくらいの瓶の半分くらい溜まった。
地道な作業だ。
隠れるのが上手いうえに逃げるのも早いとなると、倒すのは簡単でも手に入れるのがすごく難しい。
最悪、クリーパーを追いかけた挙げ句森の中で遭難しかねない。
何か、もっと楽にクリーパーを……いや、樹液を集められる方法はないだろうか。
「罠を作る?無理だな、作り方がわからん」
そもそも狩りっていきあたりばったりで捕まえたりはしないんじゃないだろうか?
罠を張って、掛かった獲物を捕まえる。
前世の世界だとそっちのがセオリーだった気がする。
けど、ゲームだとそこら中に魔物がいるから、そもそも罠を張る必要がなかった……という。
まあ、この世界はゲームじゃないけど。
「はぁ……。
手から樹液出せたりしないかなぁ……なんちって」
そんなうまい話、あるわけ無いよな。
私は頭を振ると、瓶をポーチの中に詰めて、クリーパーのいそうな場所へと移った。
⚪⚫○●⚪⚫○●
数時間後。
私は、自分の掌から滴り落ちる白濁液を見つめながら、渋い顔をしていた。
……はい。
早くもフラグ回収してきました。
……え?
回収早すぎ?
いいんだよ別に。
そんな引っ張るものでも無し。
事の発端は、どうにかして楽して樹液集めができないかと考えたことからだった。
そこで思いついたのが、強奪スキル。
強奪スキルとは、通常攻撃に泥棒スキルを併用して発動するスキルで、これによって相手の生命を奪うと、同時にその対象の保有しているスキルをランダムで獲得できる……という、ちょっと使いどころのわからないスキルだ。
攻撃しながら泥棒……って、いまいち意味がわからないよな。
んー。
たとえば、相手が武器を持っていたとする。
こっちは武器を持ってない。
粉状態だと相手が有利だから……とかだったら、普通に遠くからスティールしたほうが楽だし。
通常攻撃中にスティールなんか発動しても、多分邪魔になるだけだろうし。
……あ、そっか。
太刀取りとかそういう感じで使うのかな、これ。
……とまあ、それは追々考えるとして。
どうやらこの強奪スキルとやらは、相手のスキルも盗むことができるらしいのだ。
但し、それで相手の命を奪ったらという全文がつくけれど。
そこで私は考えた。
もしあのクリーパーのトリモチ攻撃がスキルによるものなのだとすれば?
この強奪スキルを使えば、難なくクリーパーの樹液を集めることができるのでは無いだろうか。
そういうわけで、いざ実践!
私は水の流れる音だけを頼りに、湿気の多いところまで移動。
クリーパーを探しだし、見事予想が的中。
私は掌からクリーパーの樹液を発生させるスキルを手に入れたのだった。
「にしても、掌からクリーパーの樹液て……」
私は、スキルを奪われて死んだクリーパーの死骸が、硝子のように砕け散るのを横目に見ながらポツリと呟いた。
「臭いしベトベトするし気持ち悪いし、素材集め以外どこで使えるっていうんだよ。
むしろ冒険者からクリーパーの樹液専門店でも開いた方が儲かるんじゃねぇの、これ?」
……まあ、お値段がどれくらいになるかは全くわかりませんけども。
私は手から溢れ出る樹液を小瓶の中に詰めると、はぁ、と息をついた。
「あー、疲れたぁ。
何、このスキル。使うたびに体力消耗していくんだけど」
……いや、体力というよりかまた別の何かと言ったほうが近いか。
こう、精神的……でもない、体力的でもない。
別のエネルギーが体から抜けるのを感じる。
「……もしかして、これが噂に聞く魔力枯渇か?」
魔力を使うと疲れる、という描写がされるラノベは少なくない。
きっとこれもそのうちの1つなのだろう。
……あれ?
でもそうなると隠蔽スキルとか泥棒スキルって、どれくらい使っても疲れないんだけどアレはどうなるんだ?
「もしかして、スキルには魔力を使うものとそうでないものの2種類があるんだろうか?」
むう、どうなんだろ。
もしそうなら、どれがそのタイプかとか知っておかないと危険な気がする。
魔力を使いすぎると死ぬとかいうラノベも少なくないわけだし。
この世界がどうかは知らないけど。
まあ、それもきっと学校に行けば教えてくれるでしょ。
「……いや、待てよ。
だいたいそういうのって常識化されてるはずだから、逆に教えてもらえないって可能性も無きにしもあらず……」
ぬーん。
やっぱりこれは、自分で調べる他ないか。
私は魔力(?)が回復したのを感じると、再び小瓶を開けて樹液を注いだ。
結果、手がめちゃくちゃゴム臭くなった。
「『ツクモ屋』にこれ届けたらお風呂入りに行こう。
もう3日もお風呂入ってないし」
⚪⚫○●⚪⚫○●
森から街に帰る頃には、すでに日は西に傾き、空はオレンジ色に輝いていた。
「お、銀髪ちゃんお帰り。
どうだった、今日の収穫は?」
街の関所。
数日前にこの門を通ったときに声を交わしたアクション映画に出てきそうなイケメンのおじさんが、私の方を見ながらにこやかに尋ねる。
「なんとかなりましたよ」
「そりゃ良かった。
あ、泊まってる宿とかに変更はないか?
あれば教えてほしいんだが」
「変わりないですよ。
夕焼け亭に泊まってます」
「そうか。
なら別にいいんだが」
審査官のおじさんは、少し意味ありげに顔を伏せると、私に先を促した。
(何だったんだろう、アレ)
私は少し頭の中にモヤっとしたものを感じると、しかしすぐにどうでも良くなったので、その場をあとにした。
その後、私は『ツクモ屋』に依頼分のクリーパーの樹液を届けると、そのまま温泉に直行することにした。
「えーと、温泉温泉……」
街中で地図を広げながら、温泉のある場所を探す。
この街は大きく、各地から冒険者志願の人がやって来るために『はじまりの街』とも呼ばれているが、それに目をつけた商人たちが、ここに様々な品物を持ち込んでくるため、貿易の中心地ともなっている。
そんな性格を有しているからか、いろんな場所から様々な文化がこの街に流入するため、この街の歓楽街とかは結構な賑わいを見せている……らしい。
なんかそんなことがこの街のパンフレットに書いてた。
そんなことを思い返しながら、風呂屋の場所を探していると、ふと後ろから呼びかけてくる声があった。
「あっれ〜?
銀子ちゃんじゃないか!」
「!?」
聞き覚えのある嫌な声に、私はビクッと肩を震わせた。
(し、しまった……!
フード被るの忘れてた!)
私はサッとフードを被ると、地図をポーチの中に突っ込んで早足でその場から逃れるために移動を始めた。
「こんなところで何してるんだい?
良ければ一緒にお茶でもしない?」
しかし、それでもチャラ男は着いてくる。
鬱陶しいことに、歩幅まで合わせてぴったり後ろにつきまとってきやがった。
「最近オープンした『白樺』っていうカフェがあるんだけど、そこのコーヒーがすっごく美味くてさぁ!
銀子ちゃん、今から一緒に行かない?
あ、今日が無理なら明日でもいいぜ!オレ午後から暇だし」
更に勝手に1人で話を進めはじめるチャラ男。
しかし私は無視する。
ホント最悪だ。
今日はあの門番のおじさん非番だって言ってたし、頼るのはなんか悪くて気が引けるし、かと言ってあのロリコン変態野郎のミラさんに頼るのは癪に触る。
審査官のおじさんは今お仕事中で手が離せないだろうし……どこかに衛兵さんとかいないかな。
いたら思いっきり突き出してやるんだけど。
私は無言で歩く速度を上げた。
こういうのは構うから余計付きまとわれるんだ。
だったら完璧に無視してやれば、いずれ飽きてどこかに行くだろう。
「ねぇ、銀子ちゃん聞いてる?
もしかして放置プレイってヤツかい?
いいよ、オレそういうのもキライじゃないし!」
「ウザい消えて」
「おおう、辛辣〜。
でもそういうのも嫌じゃないぜ!
むしろもっと罵ってくれ!」
「……」
なぜそうなったし。
なぜそういう結論になったし。
何こいつ。
もしかしてマゾなの変態なの?
やめてくれるそういうの。
ホントマジで勘弁。
ストーカーな上にマゾヒストとか最悪の組み合わせじゃねぇか。
「……あ、あれ?
怒った?」
「……」
チャラ男は私の目の前に回り込むと、目の前で手をひらひらさせながら呼びかけてくる。
ウザい。
私は方向転換すると、そのまま別の道へと入っていく。
「お、おーい?」
チッ。
足が痛くなってきた。
ここ最近歩きっぱなしだから慣れたと思ってたけど、やっぱりストレスがかかると違うものなんだな。
……とはいえ。
早くこいつをどうにかしないと。
なんか使えそうなスキル持ってたっけ?
私は頭をフル回転させながら、自分の持っているスキルでこの状況を打開する策を練り始める。
(アレしかないか……)
手が臭くなるのはちょっといやだが、やるしかない。
私は逃げる足を止めると、未だ何やら話し続けているチャラ男の方に振り返った。
「――来週がだめならその次でもいいぜ?
オレいつでも時間開けるから!
……ん?どしたの銀子ちゃん?」
怪訝そうに首を傾げるチャラ男。
うっわ、可愛くねぇ〜。
逆に気持ち悪い。
「んー?
銀子ちゃんもしも〜s――ッ!?」
と、次の瞬間だった。
私は、チャラ男が口を開けた瞬間を見計らって、その口に向かってトリモチを手から射出した。
「〜〜ッ!?」
衝撃でチャラ男の足が1歩後ろに下がる。
どうやら体幹を崩すには威力が足りなかったようだ。
まあ、それでも口を塞ぐ効果は十分みたいだが。
続けて、私は彼の足にめがけてトリモチを放った。
1発で結構疲れるけど、体感上全く問題ない。
3発目で両足をトリモチで地面に縫い付けると、ようやくチャラ男はバランスを崩してそのまま倒れた。
よし、これでしばらくは動けないだろ。
私は口角を釣り上げると、してやったり顔でやつを睨みつけ、最後に捨て台詞を吐いてその場を立ち去ることにした。
「二度と近づくな、このゴミムシが」
まるでスパイd(ry




