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私、強盗になる。

 どうも、イトーです。

 ロリコン野郎に泊まっている宿の場所がバレたので、拠点を移そうと考えています。


 まったく。

 これじゃあ全く気が休まらないじゃないか。


 1つの街の中でコロコロ何度も宿変えるとか、お金がいくらあっても足りやしない。

 何とかしてこの状況を脱せねば、最悪ストレスで死ぬ。


 ……あ、なるほどそうか。

 これがストーカーで苦しむ女性の気持ちなのか。

 納得したわ。


 いや、別に知りたくもなかったけど。


 私はため息をつくと、うっかり例のチャラ男に遭遇しないようにと念の為部屋まで持ってきてもらった朝食を摂って、外に出ることにした。


 ちなみに朝食は野菜がメインのスープと、サンドイッチとホットドッグの中間を取ったようなものだった。


 めちゃくちゃ美味かったとだけ伝えておこう。


⚪⚫○●⚪⚫○●


 昨日教科書を買うついでに仕入れたフーデッドケープを身に纏い、いつも通り更に隠蔽スキルを併用して宿を後にする。


 このケープは生地が薄く、風通しも良いため、今日のようなちょっと日差しの強い日でも十分活用できるのだ。


 ちなみに、カラーは目立たないようにベージュにした。


 だって、黒とかだと昼間目立つし。

 白はもっと目立つし。

 中間とってこのくらいが一番無難でしょ。


 それはともかくとして。


 今日は制服を買いに行こうと考えている。

 冒険者学校の制服は、ギルド提携の衣料品店で取り扱っているらしく、場所はギルド会館からほど近いところにあった。


 ……そういえば、ここに来てまだギルド広場周辺しか探索したことないな。

 またいつか時間ができたらいろんなところを見回ってみるのも良いかもしれない。


 そんな事を考えながら、私は衣料品店『ツクモ屋』に足を踏み入れた。


「いらっしゃいませ〜」


 カランカラン、と気持ちいいドアベルの音が店内に響く。


 私はフードを脱ぐと、近くにいた店員さんに声をかけて、冒険者学校の制服がほしい旨を伝えた。


「はい、冒険者学校の制服ですね〜」


 柔らかな笑みを湛えながら応答する店員。

 さすが、これが営業スマイルとかいうやつか。

 やっぱり服屋の店員は他のとはちょっと違うな。


「あれ、銀髪ちゃん?

 奇遇だねぇ、こんなところで」


 少し待っているようにと言った店員さんの指示に従って、側の椅子に腰掛けていると、ふと私の耳に聞き覚えのある男性の声が聞こえてきた。


「あ、門番のおじさん!」


「や、元気してた?」


 声のする方に顔を向けてみると、そこには以前この街に来たときに地図をくれた例の優しい門番のおじさんが立っていた。


 その隣には、なぜかムスッとした表情の少年が、おじさんの手に繋がれて立っていた。


「ええ、元気ですよ。

 おじさんは今日は非番なんですか?」


 おそらく息子なんだろう少年の方をチラリと確認しながら、私は常套句を返すと、おじさんはくすんだ短い茶髪を掻きながら、『まぁね』と相づちを返した。


「息子が冒険者学校に入学するんだよ。

 それで今日はその制服の採寸に。

 ほら、ルーク。ちゃんと挨拶しな」


「ルーク・レデオロスだ。

 オレはお前なんかより腕っぷしは立つし頭のいい天才児だから、そこんとこよろしく」


 お、おおう。

 門兵の息子の名前がルーク(城壁)とは凄いやつだなぁとは思ったが。


 何だこいつ、すげー上から目線……つうか、威圧的だな。

 どこかのエルフといい勝負してるぞ、これ。


「止めんか。

 そんな高圧的だと友達できねぇぞ。ちゃんと謝れ」


 と、そんな風にちょっと引いていると、彼の頭におじさんの拳が直撃した。


 うわ、痛そう。


「フンッ」


 殴られたにも関わらず、尚もそっぽを向くルークに、おじさんはため息をついた。


「すまんな、反抗期なんだ。

 寛大に見てもらえると助かる」


「まぁ、それはいいんですけど」


 私は苦笑いで返すと、店員さんが戻ってきたのでおじさんとはその場で分かれることにした。


 子供の教育って大変そうだなぁ。と、改めて感じた私だった。


⚪⚫○●⚪⚫○●


 制服の採寸は滞りなく進み、ついでに体操着も2着購入して私は『ツクモ屋』を後にした。

 制服の完成は3日後になるらしい。


 結構ギリギリだけど、まあ、間に合うみたいだし別にいっか。


 ちなみに体操着は即日で買えた。

 ちょうどサイズの合う服が2着売れ残っていたのだ。


 私、今日はついてるかも。


 余談だが、体操着はブルマだった。

 宿に帰ったら後で試着してみようと思ってる。


 あと買わなければならないのが水着だ。

 残念ながらさっき行ったところでは私サイズの水着が売られていなかったのだ。


 店員さんに聞くところによると、私サイズで冒険者になる人は滅多にいないらしく、そもそも用意していなかったのだとか。


 加えて、水着の材料となるクリーパーと呼ばれる魔物の素材が、今年はあまり出回っていないらしく、作れる水着の量も制限されているらしい。


『水着はクリーパーから取れる樹液と、スライムの皮を使うんだけどねぇ。

 今年はクリーパーが少ないから……』


 とは店員さんの談だ。


 店員さん曰くクリーパーは子供でも倒せるくらい弱い魔物だから、採ってきてさえくれれば2日で作れるらしい。


 ――というわけで、私は今、森の中を歩いています。


 ……え?

 何で急に森の中に来たのかって?


 あー、それがな。

 あの後そのクリーパーの樹液とやらを採ってきたら、すぐにでも作ってくれるって話になったんだよ。


 それで、この世界に来てやっと冒険者らしいことができる!と息巻いて、半ばノリでここまで来ちゃったわけなんですが……。


「どこにいるんだよ、クリーパー……」


 私は木に背をもたれさせながら、ポツリとつぶやいた。


 昨日買った魔物学の教科書(というよりは図鑑)によると、湿気の多い森の中に生息する、木の蔓と蛇の中間のような姿をした魔物らしい。


 普段は木などに巻き付いて蔓植物に擬態しており、危険が迫ると口からトリモチのような粘液を吐き出すらしい。

 これがクリーパーの樹液と呼ばれる素材のようだ。


 なお、知能が低く臆病な性格のため、樹液を吐き出すと相手が戸惑っているうちにそそくさと逃げ出してしまうようだ。

 ただ、あまり体力がないので、樹液攻撃のあとは暫く硬直して動けない。

 なので、クリーパーを狩るときは、最初の樹液攻撃を回避して、相手が硬直している隙に仕留めるのだそうだ。


 ちなみに弱点は目と目の間。


 そこだけを狙うのは至難の業なので、大抵はナイフか何かで首を切り落とすみたいだ。


「……とはいえ、見つけるのが難しいんじゃ、どうしようもないんだよなぁ」


 湿気の多い森の中……つうと、やっぱり沢の近くだよなぁ。


 そう思って、森に流れてる川を最初に見つけることにしたが、なかなか見つからない。


 何?

 魔物狩りってこんなに大変なわけ?


 ラノベとかだともっと結構楽に倒してた気がするんですけど。


「ギギッ?」


 と、そんなことを考えていると、目の前の茂みからガサガサと音がして、1匹のゴブリンが現れた。


「うえっ」


 何度見ても気持ち悪い。


 私は顔を顰めると、すぐさまそこから逃げ出そうとして――ヤツの手に、何か植物の蔓のようなものが握られているのに気がついた。


「あれ……って、もしかしてクリーパー?」


 蔓のような蛇。

 うん、図鑑に乗ってた特徴と一致する。


「……」


 私の探していたクリーパーが、なぜゴブリンの手に握られているのかはよくわからないが、これはチャンスだ。


 私はニヤリと笑うと、ゴブリンに向かって手を伸ばした。


イトー

 「スティーールッ!」


ゴブリン

 「ギギッ!?(わっ、私のパンツかえしてぇ〜!)」


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