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ピアス

「ねえ、ピアス開けないの?」

ぼんやりと黄色いソファに座り込んでいた僕に、優香が突然尋ねてきた。

丸い目を見開いて、じっと見つめてくる。

「開けてもいいけど、なんで?」

「いや、開けてる男の子少ないから。おしゃれだなと思って」

少数派をおしゃれとくくるのは問題があるぞ、と思いながら優香のよく動く唇を見つめる。

「だからさあ、秋人くんも開けとこうよ。ピアス。私とお揃いだし」

後半はローテーブルの木目を見ながら発せられた。どこから取り出したのか、ピアッサーをいじらしく触っている。これは言うことを聞いてあげるのが優しさなのか、一生物の傷を思って耳朶を触った。軽く引っ張る。

「秋人くん、似合いそうな顔してるんだよね。肌が薄くて色が白い感じ。そういう人がしたら厳つくないし、かっこいいよ。どうかな。開けてみたりしない?」

ひと月前に告白して付き合い始めた優香は、今が一番可愛い時期だった。控えめに、でもだからこその断りにくさを持って強引にピアスを勧めてくる。

リスのように丸い目が伺うように見つめてきた。

口が勝手に動いた。

「でも痛いんでしょ?」

抵抗はしたいようだ。

「痛く無いよ。ちょっとだけだよ。大丈夫。すぐ無くなるから」

痛く無いのにちょっとだけとはこれいかに。人の体に穴をあけといて大丈夫とは何事か。言えそうで言えない言葉を飲み込んで唇の端をもぞもぞと動かした。

「どう、秋人くん。開けてみない?」

これはイエスと答えなければ永遠に終わらない。覚悟を決める。

「いいよ。優香、開けてみて」

なんとなく目を閉じ、髪をかきあげる。

「大丈夫。きっと痛く無いから。多分ね」

不穏な言葉とともに、鉄の触れる冷たい感触がした。

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