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冬が終わり雪解けの頃になるとどこの村でも1つの行事がおこなわれます。
成人式です。
そしてその季節になると街からお役人がやって来ます。
何をしに来るかと云えば各村の新成人を傭兵として登録をしに、来るのです。
そして今年この村からは僕と大五郎ちゃんが成人を迎えました。
僕と大五郎ちゃんが村長の家に呼ばれるとそこには街から来たお役人と村長の為五郎さんが待っていました。
そして村長は僕達を役人に紹介し始めました。
「今年はここにいる大五郎と重五郎の二人が成人を迎えました。」
「うむ、先ずは二人とも成人おめでとう、私は登録官の忠三郎だ。早速だが此れから成人の儀をおこなう。」
お役人はそう言うと帳面を出して、書き始めた。
「え~っと大五郎は身長178センチ体重60キロ右利き使う武器は槍っと・・・」
僕と大五郎ちゃんは唖然としました。
何でこの人、こっちの事が解っちゃうの?
僕は恐る恐る質問した。
「済みませんお役人様あの・・・」
お役人は今度は僕の事をマジマジと見てまた帳面に書き始めた。
「今度が重五郎、身長188センチ体重80キロ右利き使う武器は大型のメイス、ほう、ヒーラーかそれは素晴らしい。」
お役人は一通り書き終わると質問に答えた。
「私達の様な事務方の特殊スキルに鑑定と云う能力が在るんだよ。それを使うと今の様な事が出来る様になるんだ。」
ナニそれ怖いんですけど・・・
僕が怯えていると、お役人は笑いながら、だからと言ってその人の事が何でも解ると云うわけじゃ無いんだよと言って笑った。
お役人は笑い終わると帳面をこちらに向けて各自の名前の所に血を垂らす様に求めてきた。
「ここに血を垂らせば一応登録は終わりだ。」
僕達は云われるが間々に血判を押した。
「はいっ、ご苦労様これで君達は大人の仲間入りだ。此れからは大人としての自覚を持って行動するように。」
そう言うとお役人はイスから立ち上がり僕達と握手をした。
「二人ともこの後、村長から話があると思うが、最初の出稼ぎに行く前に必ず最寄りの街に来て登録カードを貰うように、以上だ。」
そう僕らに言うとお役人は村長と話をして部屋を出て行った。
「村長、これで終わりですか?」
大五郎ちゃんが尋ねると村長は一言
「フッそんな訳ねぇだろ、此れから成人式の飲み会だ、朝までコースだ!」
そう言って僕らを村の唯一の飲み屋に連れて行った。
その後、村の大人達と宴会に突入、アルコール度数の高い芋焼酎をしこたま飲まされました。
大五郎ちゃんは噴水の様なゲロを僕に吐きかけそれを被った僕も貰いゲロを吐きそのまま意識を失いました。
遠くなる意識の中で僕はお酒の強要はしちゃダメ絶対と思いました・・・たぶん。
こうして僕達は大人になったらしいです。
大人って・・・ナニ?
徹夜のどんちゃん騒ぎが終わりさんざん飲まされ意識を失って朝を迎えた僕にゲロまみれの大五郎ちゃんが笑顔で言いました。
「それじゃ街に行こうか!」
ハァ・・・ナニ言ってるのこの人、自分の状態分かってるの?
僕が呆然としていると、大五郎ちゃんは僕に近づき
「取りあえず重五郎ちゃんは水浴びをして仕度して来て・・・ゲロまみれだよ。」と言いました。
・・・お前もな大五郎
僕はとにかく大五郎ちゃんの寝言は忘れて家に帰って汚れを落としてから寝る事にしました。
そして僕が家で意識を失っている間に何故か最初の出稼ぎが決まっていました・・・
大五郎ちゃんに担がれた僕は近隣の街に登録カードなる物を取りにやって来たらしいです?
街は村から歩いて半日程の所にあり近隣の村々からの往来もあり賑わっているらしいです?
僕は朦朧とする意識の中で大五郎ちゃんに抱えられ傭兵ギルドの門を潜ったらしいです?
何で全部らしいかって?
・・・だってその時僕は熟睡してましたから、意識は遥か彼方の夢の国に居ましたから、記憶がありませんから・・・
僕が次に気付いた時には幌つきの馬車に載せられて戦地に運ばれてました・・・オイッ!
サスガに此には驚いて隣に居た大五郎ちゃんに掴み掛かったが大五郎ちゃん曰く、
「重五郎ちゃんがギルドの出した依頼書に読みもせずサインしちゃったんだよ、このまま重五郎ちゃんだけ戦地に送ったら何か寝覚めが悪いから僕もサインしたんだよ。」
そんな言い方で僕の追及をかわしてニッコリ笑ってたけど・・・
絶対に怪しい・・・こうして僕は知らぬ間に最初の出稼ぎに行くことになりました。