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昨日の襲撃から一夜明け今日は近所に住む薬師のトメばあちゃんの家で薬草の煎じ方を習っていました。
「そうそう上手いもんだ、そうやって潰しながら魔力を流してやると効き目が違うんだよ。」
少量ながら魔力のある僕は将来ヒーラーで生きていく積もりだけど、それだけじゃなく薬師としての技術を身に付ける事によって将来の生活をより良い物にしたいと思っています。
殆んど覚えて無いが恐らく前世で仕事関係で苦労した様な気がする・・・
何より、こうして薬作りをしていると、心が安らぎます。
殺伐とした争いの無い世界、僕の将来はこれで決まりでしょ。
ヒーラー兼薬師、僕は薬草に魔力を込めながら平和の有り難みを噛み締めていた。
そうして僕が穏やかな気分で薬作りに精を出していると不意に玄関のドアが激しく叩かれた。
"ドンッドンッドンッ!ドンッドンッドンッ!"
「おトメさん、急患だよ!」
そう言って血塗れの若者を戸板に乗せた村の衆が玄関の中に雪崩れ込んで来ました。
それを見たトメばーちゃんは一喝しました!
「ガタガタ騒ぐんじゃない、みっともない。どうしたね?」
トメばーちゃんの質問に戸板を持っていた為五郎さんが答えました。
「村外れにキンググリズリーが出やがった。間の悪い事に偶々、行商に来たこのアンちゃんを襲いやがったんだ。
このアンちゃん腕を食い千切られちまって、今皆で魔物を殺っちゃ居るが・・・」
そこまで聞いたトメばーちゃんは台所に走り出刃包丁を手に取ると走りながら重五郎に言いました。
「重五郎ちゃんはアタシについてきな!」
「為五郎はその子の血がこれ以上流れ出ない様に止血しときな!」
そう言われた僕がモタモタしてるとトメばーちゃんは凄まじい声で叱り付けた。
「仮にも人の命に関わる仕事に就こうってんだ、この程度でおたつくんじゃないよ!」
そう言うとトメばーちゃんは村外れに向かって走って行きました。
僕はとにかく云われるがままに後を追いかけました。
僕達が村外れに辿り着くと、そこでは村の衆とキンググリズリーの血で血を洗う戦闘がおこなわれていました。
キンググリズリーは体長4メートル腕の数が6碗の熊の魔物です。
村の衆も頑張ってはいるけど、未だに止めを刺せてはいませんでした。
それを走りながら見定めたトメばーちゃんは、一気に足を速めキンググリズリーに駆け寄りました。
一閃、
トメばーちゃんの出刃包丁がピカッと光ったと思ったらキンググリズリーの動きが止まり・・・そしてキンググリズリーは静かに倒れ込んだ。
トメばーちゃんは倒れ込んだキンググリズリーの腹をに出刃包丁を突き立て一気に腹を切り開いた。
「いいかい重五郎ちゃん、このての魔物は肉を咀嚼せずに丸呑みにする事があるんだ。」
そう言ってトメばーちゃんはキンググリズリーのお腹に手を突っ込みました。
「よし、あった!」
そう言ったトメばーちゃんの手には人間の腕が掴まれていました。
「重五郎ちゃんあんたは走りながらこの腕にヒールをかけ続けな!」
そう言うとトメばーちゃんは急いで自分の家に走って行きました。
僕もトメばーちゃんの後ろを走りながら渡された腕に必死でヒールを掛け続けました。
動きながらのヒールってはじめてやったけどこんなに難しいとは・・・それでも何とかトメばーちゃんの家に着くとトメばーちゃんは患者さんの腕の包帯を取り僕から腕を受け取りました。
「いいかい重五郎ちゃんよく見ておいで。」
トメばーちゃんはそう言うと切断された腕を患部にくっ付けながら凄まじい魔力を流し始めました。
骨や神経それに血管や筋肉がみるみる間にくっ付いていく。
僕はその凄まじい光景にただ呆然としていた。
-5分後-
そこには意識を回復した若者を優しく労るいつものトメばーちゃんがいました。
僕は感動の余りトメばーちゃんにどうしたらそんなに巧くヒールが使えるのかを尋ねました。
「其はね人体の作りって物をしっかり学んだからだよ。」
僕も何時かトメばーちゃん見たいになれるかな?
そんな風に尋ねるとトメばーちゃんは笑いながら答えました。
「何、戦場で1000人も敵をバラせば、重五郎ちゃんにも出来る様になるよ。」
・・・僕は全然笑えなかった。
人体実験ダメ絶対・・・そして僕の感動を返して!
恐いから言わないけど。