少年編
大陸北方の小国サーツマ
夏は短く冬長い、作物の生育には全く向かない厳しい土地、そんな国にも少ないながら名産品が在ります。
サーツマ名産それは傭兵です。
他の国の方々からはサーツマの畑では、作物の代わりに傭兵が採れる等と言われています。
この地域に暮らす蛮族は体も丈夫な上に戦闘能力も大変優れています。
何より彼等は契約に対しては非常に真面目です。
その為、他の亜人種と比べると非常に使い勝手が良いと評判を頂いております。
皆様も是非ともご利用下さい。
傭兵王国広報課より
僕の生まれたサーツマ王国は人口1万人に満たない小国だが近隣の国々はウチの国をサーツマとは呼ばず傭兵王国と呼んでいる。
実際自分達も傭兵王国と呼んでます。
でもさすがに畑で傭兵は採れません、傭兵の多くが出稼ぎの百姓の為その様な呼ばれ方をするようです。
申し遅れました。僕の名前は重五郎、年は12才そろそろ出稼ぎに出されそうな転生者です。
そうなんです。恥ずかしながらワタクシ転生しちゃいました。
まぁこの世界、過去にも異世界転位だの異世界転生者はそれなりに居た様です。
なんせ国の名前がサーツマで国民の名字は代々シーマズ・・・ハァ
まぁ僕の場合、辛うじて前世とやらの記憶を持っている程度ですが、その為でしょうか?
どうにも我が国の出稼ぎ制度に馴染めておりません。
村の中心で戦争反対と叫びそうになる今日この頃、残念ながらその様な事をすれば、あっという間に村八分にされるかその日の内に家を追い出される事でしょう。
この国では出稼ぎに出てしっかり稼いで来て始めて一人前の大人として扱われる、非常に残念なお国柄でございます。
あ~引きこもりたい。
「重~五郎~君~遊びましょ~」
僕が精神世界に逃避を図っていると隣の家の大五郎君が来ました。
大五郎君はワタクシと同じ年の12才、家が隣という事もあって出不精のワタクシを何時も気遣ってくれる気持ちの優しい少年です。
「は~い、今行くから一寸待ってて~」
僕は腰に護り刀を指し手作りのメイスを片手に持って、大五郎君の待つ玄関に向かった。
はいっ!
ここで疑問を持ってくださった皆さんは良識のある証拠です。
スルッとスルーした貴方はファンタジーに毒され始めてますよ!
子供が武装して遊びに行くような社会、おかしく無いですか?
残念ながらそれが僕のいる世界です。
ワタクシが玄関の扉を開けるとそこには思い思いに武装した子供達が集まって居ました。
「重五郎あんまり遅いから迎えに来たぞ。」
そう言って怒ってらっしゃるのは近所の子供達のリーダ格の凶四郎君です。
名前程危ない性格では無いのですが如何せん変に真面目でワタクシは少々彼を苦手としております。
出来れば僕を忘れて置いていってくれるとありがたいのですが・・・
「さぁ重五郎も揃ったし皆で遊びに行こう」
「所で今日は何処に行くの?」
僕としては川で水遊び位にして欲しいとの願いを込めて聞いてみました。
しかしその答えは、
「今日は西の山の中にゴブリンの集落を見つけたのでそこを襲おうと思ってる。」
凶四郎君の答えに皆が大喜びしておりました。
大五郎君の嬉しそうな笑顔・・・大五郎お前もか!
ええ、分かってはいたのです、ウチの国民皆蛮族だって。
しかしそれについていけないと言えない所が・・・ツラいです。