⑥ わたしたち幸せに暮らしました。
~⑥~
舞踏会から数日が経ちました。
その日――
クーデレラたちの暮らす町外れのお屋敷へ、王子様が訪れました。
要件はシシルへのお礼と――プロポーズです。
クーデレラは王子がシシルへ指輪を渡そうとするのを、応接間のドアの隙間から盗み見ていました。
すべてクーデレラの計画通りです。
ここまでは。
「その……嬉しいですけど、お断りさせていただきます」
シシルは王子のプロポーズを断りました。
……え?
クーデレラは信じられませんでした。
シシルを除いた、その場にいた誰もがそうでした。
王子や家来、継母や姉たちも呆然としています。
そんな!
どうして!?
「あ、あたしには大切な人がいるからです!」
はにかんだシシルの声が聞こえました。
そして。
「クーちゃん! 聞いてるんでしょ!」
「!?」
クーデレラはびくりとしました。慌てて――
「にゃ、にゃー」
「なんだ猫か……って、騙されないよ!?」
「……くっ」
しくじりました。
下手な鳴き真似などせず、さっさと逃げてしまえばよかったのです。
観念してクーデレラは部屋の中へ入りました。
全員の視線が集まります。
クーデレラがうつむくと、シシルが駆け寄って両手で手を握ってきました。
まっすぐな目を向けてきます。
「あれやったのは、クーちゃんだよね!?」
「……なんのことですか」
「お城でみんなにドラゴン幻を見せたよね!?」
「――っ!? そ、それは」
「隠したってダメだよ! あたし見たんだから、あのおしりはクーちゃんだよ!」
見られていた!?
どうして……
幻影の魔術は完璧だったはずです。
自分に油断などなかった。
ですが、そうです。
舞踏会からの去り際――
ありえない未来を夢想したとき、気が緩んではいなかったでしょうか。
――あのとき、魔術の幻影が綻んでしまっていた?
「あ、貴方の勘違いです。シシル姉――」
「あのおしりはクーちゃんだよ! 白くてプリっとしてて、見間違えるはずがないよ。あんなに綺麗なおしりはこの世界にひとつしかないよ!」
「う……」
「どうして、あんなことをしたの?」
まっすぐな瞳で見つめられては、クーデレラは嘘をつくことはできませんでした。
シシルの前ではクールではいられません。
洗いざらい、話しました。
「つまりキミは王城に無断で侵入したということだが……」
すべて聞き終えて、王子が言いました。
「……」
「影のドラゴンを作り、城を混乱させたわけだ」
「……ええ。そうね」
「っ、待ってください王子様! クーちゃんは、あたしのために。だから罰するならあたしを!」
「そういうわけにはいかないよ。彼女が、多くの者に迷惑をかけたのは事実だ」
「それは……」
「いいのです。シシル姉様」
「でも! あたし、そんなつもりじゃなくて……」
「まあ待つのだ2人とも。私にいい考えがあるのだ」
王子はキラリと白い歯を輝かせました。
「受け入れてくれれば、其方の罪は不問としよう。なに、わるい話ではないはずだよ」
●
その後――
王子の提案により、クーデレラはシシルとともにお城へVIP待遇で迎え入れられました。
王国には魔女が居る。
彼女の魔術は敵国から恐れられ、王国に100年の繁栄をもたらすことになります。
クーデレラにはどうでもいいことでした。
そう。
隣にいるシシルが幸せそうでしたので――
ただ、ひとつだけ。
気になることが残っていました。
「ところでシシル姉様。あのとき言っていた、『大切な人』とは誰なのでしょう。よろしければ、その者と結ばれるのをお手伝いしたいと思うのです」
「あはは、クーちゃん。わかってなかったの? それはねぇ……」
「は、はい」
「ヒミツ、だよっ」
――END――
想定より長くなりましたけど、これにて完結です。
ここまでお読みいただいた方に感謝を!




