③ カボチャの馬車の作り方。いいえ、変態ではありません。
~③~
夜になりました。
継母と義姉たちはクーデレラを残して、お城へと出かけてゆきました。
シシルはクーデレラもいっしょにと言ってくれましたが、クーデレラは謹んで辞退しました。
――自由に動くことができなくなりますから。
「さて。行きましょうか」
誰も居なくなった屋敷でクーデレラは呟きます。
彼女はすべての衣服を脱ぎ捨てて素っ裸になると、そのうえに漆黒のマントを羽織りました。
裸マントです。
変態だからではありません。
もっとも効率よく魔術を扱うことができる、魔女としての正装でした。
屋敷の扉を開け放ちます。
青白い月の光の下――
クーデレラの前には、数千匹のネズミが整然と並んでいました。
「いい子たち」
クーデレラはつぶやくと、手に掴んでいたカボチャをネズミたちへと放りました。
すると――なんということでしょう!
小さくみすぼらしかったカボチャは、見る間に巨大に膨れあがると匠たちの働きによって姿を変えていくではありませんか。
身の詰まった中身が、ランプの光の揺れる快適空間へ。
炎を怖がる本能を押さえつけてまで実行する、匠の拘りを感じる仕上がりでした。
漆黒の外套を翻し、クーデレラはカボチャの中へ入ります。
「お城へ。誰にも見つからないように。先回りをするの」
クーデレラの指示を受けてネズミたちはカボチャを運び始めました。
夜闇に紛れ、一直線に城へ向かいます。
川があってもネズミたちは体を組み合わせて橋を作り、なんなく超えていきます。そうしてクーデレラの乗ったカボチャをすごい勢いで運んでいきました。
途中で――
「へくちっ」
クーデレラは、一度だけ可愛らしいくしゃみをしました。
裸にマントだけでは、やっぱり寒いのです。
つづく
次回は明日更新予定です。