② クールではいられません。
~②~
その気になれば継母の精神を操り、裸で逆立ち城下一周をさせることもできるクーデレラ。当然、現在の立場にあまんじているのには理由があります。
魔術に使う植物に水をやりに、ジョウロを手に裏の畑へ向かたところで――
「あれ? クーちゃん?」
クーデレラは声をかけられました。
振り返ると、花のような笑顔を浮かべた少女がクーデレラのもとへと走り寄ってきます。
彼女は、3人いる義理の姉たちの1人でした。
末の姉です。
軽く跳んで、クーデレラの前にぴょんと着地してきました。
「いつもありがとう、クーちゃん!」
クーデレラは、屈託のない笑顔から目をつっとそらします。
「……貴方にお礼言われる理由はないと思いますが。シシル姉様」
「でも、家のことをいつもやってくれるのは、クーちゃんだもん」
「……言いつけですから」
「だから、ありがとうだよ!」
末の姉――シシルの言葉に、クーデレラはうつむきました。
その耳は真っ赤になっています。
シシルの前でクーデレラはクールではいられません。
「でも、つらかったらいつでも言ってね? あたし、クーちゃんのためなら、母さまや姉さまにもガツンと言ってみせるから!」
むんっ、と顔の前で握り拳を作るシシル。
「……ありがとうございます。シシル姉様」
クーデレラはうつむきました。
隠した口元を、そっとほころばせます。
末の姉のシシル――
彼女の存在がクーデレラの《理由》なのでした。
弱い立場でいれば、こうして気にかけてもらえるのです。
つづく
次回更新は明日です。