2、癇癪と遊び
キレやすい若者。誰もが一度は聞いたことがあるだろう。そして、何か事件を思い出すだろう。
私の知り合いの話となるが、彼が、もっともそれに近い。
子供のように音を立てて食事をし、気に入らないことがあれば、大きく足音をどんどんと立てる。そして、怒るとき、はじめは努めて紳士的に振る舞うのだが、少しでも我慢がきかなくなると、突然、烈火のごとく、怒声をたてるのだ。まさに、子供が癇癪を立てている様子にそっくりだ。
もう若者というには、大分と年を経った彼のその様子は、滑稽を通り越して、哀れだ。
彼を含め、そういった振る舞いを行う今だ子供のような人たちに対して、おおむね、注意や忠告は、無下にされるだけでなく、余計に事態をややこしくすることが多い。
彼らがそう振る舞うのは、きちんとした理由がある。
彼らは、子供としての経験不足なのだ。彼らは、不足にも関わらず、不足にも気付かず、年をとってしまった。なんたる悲劇だろう。当然得られるものが得られなかった、悲壮が、今だ彼らを子供のような行為に駆り立てる。だからこそ、彼らに必要なのは、大人的な振る舞いの要求ではなく、子供の経験への誘いなのだ。
まずは、自分を思い返してほしい。私は、十分に子供であったか、と。子供の特権として、無条件に大いに愛され、大いに自由で、遊んでいたかと。
しかし、私を含め、今の社会が、子供に対して、大人的な態度、つまり過度に緊張し、委縮した心の在り方を要求する(擬似的な競争社会)である以上、十分に子供だった人はおそらく少数だろう。事は緊急を要する、心をすぐさまにほぐさなければならない。さぁ、アーティスト・デート、あなたの中の幼いアーティスト(一番遊びを知っている子だ)と、デートに出よう。
ジュリア氏いわく、アーティスト・デートにおいて、なによりも大切なのは、内なる子供(インナーチャイルドと呼ばれる)と一緒に過ごすことだ。今まで、いろんな言い訳をつけて、目をそむけたことに、目を向けることだ。モーニングページは、己の問題のありかを教えてくれる、アーティスト・デートは問題の解決策を与えてくれる、つまり、飛び切りに創造的になった自分と、素晴らしいアイデアが、ひょっこりと姿を現すのだ。
さて、具体的に、どんなところに出かければいいのか。先ほど述べた通り、過ごす時間が何よりも大切だから、ゆっくりとできれば二人きり(一人)の時間を満喫できるところがいい。
ジュリア氏の著作では、以下の場所が述べられている。
公園、子供向けの本屋、水族館、教会、おもちゃ屋、花屋、美術館etc
また、パイやプディングを作ったり、スケッチブックや風船を買うのもいい。
そして、自分の心の在り方をよく見てほしい。こんなこと馬鹿らしい!と叫び出すこともあるだろう。ただ、その中に、ちょっとした安堵も含まれれば、あなたが内なる子供と仲直りを始めた証拠だ。思いっきり楽しんでほしい。
ここからは余談になるが、もし、知り合いに、上述のような、キレやすい、情緒不安定な方がいらっしゃったら、声をかけてほしい。何か楽しいことあった?と。ただそれだけでいい。生の本来性は、楽しみと遊びなのだから。