でもやっと知り合いになった感じかな
「ごめーん、待った~?」
鼻につく甘ったるい声でヨリが参上したのは、待ち合わせ時刻から二十分過ぎた頃だった。
ヨリの爪は、鮮やかな桜色に塗られていて、その手は彼氏の腕に巻きついている。
「いやぁ、ごめんごめん」
ヨリの彼氏とはこれで会うのは二回目だが、相変わらず優しそうな目をしていた。
私と春斗先輩は意外にも他愛もない話で盛り上がっており、そんな待たされている感じはしなかった。
「もっと遅刻して良かったのに。ね?」
春斗先輩にそう同意を求められ、私は少々慌てた。
ね?って……。
答える術が見つからなくて俯くと、先輩は愉快そうにクスクスと笑みをこぼした。
「ちょ、ちょっと」
そんな私と春斗先輩の間を裂くようにして割り込んできたのは、ヨリだった。
だけどヨリの手はヨリの彼氏を掴んでいるから必然的に二人もの人間が挟まってくる。
「どどどどういうこと!?凄く仲良さげな感じじゃない!私がいない間に何があったのよ!」
こそこそと耳打ちしてくるヨリだったが、思ったより声が大きい。
私は苦笑をもらしながら、
「結構お話したよ。でもやっと知り合いになった感じかな」
「充分進歩してるじゃないの!」
まるで自分の事のようになって夢中で話すヨリを見てこういう友人は一人必要だなと感じた。
それから私達四人は、商店街をあてもなく歩いた。
時にゲームセンターに入ったり、時に洋服店に入ったり。
そして十三時をまわろうとしていた頃、春斗先輩が小さなレストランを指差した。
「お腹すいたし、あそこで食べようか。美味しいらしいよ、あの店。前TVに出てたって」
饒舌なヨリの彼氏がそう説明したが、私はあまり乗り気ではなかった。
何故なら、あの店は海江田くんと喧嘩した店だったからだ。