夢でありませんように
「ふふふ」
朝から気味の悪い笑みを浮かべているヨリに嫌な予感を覚える。
「私に感謝しなさい、マイフレンド。今週の日曜日、Wデートよ!」
ますます嫌な予感を感じながら私は「へぇ……」と呟きながら引きつり笑みを返した。
するとヨリは眉間に皺を刻み込み、驚くべき事を言ったのだった。
「何言ってんのよ。理沙も行くのよ」
「え、ええ!?嘘でしょ!?私、彼氏いないじゃん!」
「ふふふ」
「……何で笑ってるの」
含み笑いで、やらしい眼差しを向けてくるよヨリの睨み返す。
気味が悪い。
背筋に虫が這うが如き、ざわざわとした不快感を覚える。
「何と!そのメンバーは私と彼氏と、あんたと春斗先輩でーす!」
「ええっ!?」
ありえない。
にやにやと気持ち悪い笑みをはり付けながら、ヨリは何度も何度も頷いてる。
私は完全に逃げ腰になっていて、椅子から崩れ落ちないように必死に机の端につかまっていた。
ヨリは胸下で切りそろえられた黒髪を指先で巻きつけながら、こんな事を言った。
「実は私の彼氏が春斗先輩と仲良いんだな」
その事実は私にとって嬉しいと感じるよりも胸中、複雑な思いでいっぱいだった。
「私、そんな事頼んでない!」
日曜日って明後日だ。
「そんな急に言われても私にも予定ってもんが……」
「あるの?」
疑いをかけられ、私はウッと言葉に詰まる。
そして自問自答を繰り返す。
私は、春斗先輩と仲良くなりたくないのか?
「な、ないけど……」
「よかった!じゃあ、決まり!可愛い服着て来な!」
私以上に浮き足立っているヨリを横目に溜息を吐き出した。
「あ!春斗先輩は女の子らしい格好が好きなんだって」
振り返り際に思い出したように言ってきたヨリの眼差しに、もう泣きたくなる。
でも。
――でも、私は心の隅で願っていた。
夢でありませんように、と。