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瀬戸内レモンサイダー  作者: 昼間 ネル
瀬戸内のお宝奪取 編

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2/11

第2話 兵庫「白金の城」

皆様、ようこそ『激闘のエージェント紀行』の世界へ。

第1話で華麗な(?)、あるいは泥臭いスタートを切った内海哲哉と、相棒の賢すぎるサル・五右衛門。今回彼らが降り立ったのは、かつて「白鷺城」と呼ばれ、今はハイテク企業の要塞と化した兵庫県・姫路。

この物語のテーマは**「新旧の衝突」**です。

1940年代のヴィンテージ・バイクが、最新鋭のナノテクノロジーを食らい、進化していく。そんなデタラメで最高にクールなロードムービーの第2幕を、どうぞお楽しみください。

第一幕:月下のホワイト


播磨の夜風は、潮の香りと共に電子回路の焼ける臭いを運んできた。


かつて白鷺城と称えられた姫路城は、今や巨大複合企業『播磨ヘビー・インダストリーズ』の実験棟へと成り果てている。漆喰の壁にはナノプロジェクターが埋め込まれ、目に刺さるような幾何学模様のホログラムが城郭を覆っていた。


「……趣味が悪いな。先祖が見たら、腰を抜かして切腹もんぜ」


内海哲哉は、城の北側に広がる原生林の影で、愛車――1940年代製ハーレーダビッドソン・ナックルヘッドに跨ったまま、アンティークな煙管キセルをくゆらせた。


その背中には、ハッキング用デバイスを背負ったサルの五右衛門が、赤いフードを深く被って座っている。


「ピポ、ポ。哲哉、正面ゲートの赤外線グリッド、周期2.4秒。誤差0.01。……いける。」


「上等だ。派手に行こうぜ、五右衛門」


哲哉がキックペダルを踏み抜くと、戦前のアナログなエンジン音が、静まり返った城下に雷鳴のように轟いた。


第二幕:天守閣の「禁忌」


監視ドローンの銃弾を、紙一重の蛇行で回避しながら、哲哉は城の石垣を垂直に駆け上がる「磁気吸着タイヤ」を起動させた。


目指すは天守閣の最上階。そこに隠されているのが、今回の獲物――『播磨の白金プラチナ』だ。


表面上は「国宝・姫路城を永久に保存するための修復材」と発表されているが、その実態は、いかなる打撃を受けても瞬時に結合を再生させる自己修復型ナノ合金。


一度その「種子」を装甲に植え付ければ、その兵器は戦場において無敵の死神となる。

「おい、そこをどけ。その鉄クズは、アンタらには重すぎる」


天守閣の扉を蹴破った哲哉の前に、全身を強化外装で固めた『播磨守護代』を名乗るサイボーグ兵士たちが立ちはだかる。


哲哉は煙管を逆手に持ち替え、スイッチを押した。先端から青白い電磁火花が散る。


第三幕:一閃、電磁の舞


「一、二、サン……ヒャッハー! 播磨の太鼓はちっとばかり重いぜ!」


哲哉の身体が加速ブーツの噴射で加速する。

サイボーグ兵士たちのガトリング砲が火を噴くが、哲哉は踊るようなステップでその弾道を縫い、煙管の柄で電子頭脳の急所を的確に突いていく。


ドッドッドーン!!キィー!!


五右衛門が背中で端末を叩くと、城内の防衛システムが逆流し、敵の強化外装が自ら火花を散らして沈黙した。


混乱の中、哲哉は真空パックされた銀色の金属――『播磨の白金』を奪取。

それは月光を浴びて、まるで生きているかのように脈動していた。


第四幕:旅立ちの咆哮


脱出に成功した哲哉は、夜明け前の飾磨埠頭しかまふとうで、奪ったばかりの合金をハーレーの燃料タンクへと流し込んだ。

銀色の液体が、錆の浮いた古い鉄に吸い込まれていく。


次の瞬間、ひび割れていた革のシートは艶を取り戻し、凹んでいたマフラーはみるみるうちに元の滑らかな曲線へと戻っていった。


「……これで、長旅にも耐えられそうだな。」

「ピポ。哲哉、西から。強力な信号。……次の宝、岡山にある。」


哲哉は満足げに鼻で笑い、瀬戸内レモンサイダーを一口含み「っか〜〜〜! 染みる〜ぜっ!」


朝日が昇る。白鷺の城を背に、伝説の宝を巡る「激闘のエージェント紀行」の幕が上がった。

第2話「兵庫と白金の城」を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

姫路城を「実験棟」に変えてしまうという、歴史好きの方には少しばかり「切腹もん」な設定にしてみましたが、いかがでしたでしょうか。哲哉が愛飲する「瀬戸内レモンサイダー」の酸っぱさが、激闘の後の心地よい余韻を引き立てていれば幸いです。

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