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異世界にとばされた社畜OLですが、ツンデレエルフと行商ライフを満喫中です!  作者: しらたき 茶々麻呂
エルフの里帰り編

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109/123

109_卵は完全栄養食

第109話です。

ポーション屋の仕事は、誰かを癒し元気にすること。いちおうこれも、ポーション屋の仕事ということで

「……このままじゃ、あの子の体力が持たないよ」


 屋敷の外に出ると、そこには昨夜の賑やかさが嘘のような、沈痛な面持ちのジルキさんとドーラさんがいた。二人は厨房の入り口で、手付かずのスープ皿を抱えて途方に暮れている。

 

「ジルキさん、ドーラさん。どうしたんですか?」

 

「あ、ルナ……。実はね、ユフィリア叔母さんがこの間からほとんど食べてくれないんだ」

 

「あんなに食いしん坊だった子が、お粥すら喉を通らないなんてねぇ」

 

ジルキさんが大きな溜息をつく。妊婦である彼女の顔にも、隠しきれない疲労の色が滲んでいた。何かできることはないか、と思っていたけれど……これは私が役に立てるチャンスなのではないか?

 

私は拳を握り、鼻息荒く一歩前に出た。

 

「あの! 私に協力させてください! 病人でも食べやすくて、栄養たっぷりなもの、作れます!」

 

「あんたが? 料理得意なのかい」

 

「はい! 厨房、お借りしてもいいですか?」


 私の気迫に押されたのか、二人は顔を見合わせて『それじゃあ、お願いしようかね』と道を開けてくれた。


 さあ、何を作るか。


 オーク族の食事は基本的に「ワイルドな肉料理」だ。弱った胃には重すぎるし、噛むのも体力が要るだろう。ならば柔らかく煮たものがいいかな?


 厨房の棚を隅々まで鑑定グラスで覗き、栄養豊富なものがないか探す。


 「あ……!」


 それはカゴに入れられた、大きな卵だった。鑑定グラスに表示された説明文を読んで、私は拳を叩く。


 『コカトリスの卵:滋養強壮効果(大)』

 

「これだ! ジルキさん、この卵をいくつか使ってもいいですか?」

 

「あぁ、コカトリスの卵かい。好きなだけ使いな」


「ありがとうございます!」


小麦粉(オーク族が使っている粗挽きのもの)、樹蜜、そしてコカトリスの卵。材料はとてもシンプルだが、これを美味しく料理するのが私の仕事だ。


「作るのは『たまご蒸しパン』です!」

 

「むし、ぱん?虫をいれるのかい」

 

「いえいえ、『蒸した』パンってことですよ。私の故郷では蒸し料理が精進料理としてとても人気だったんです」

 

不思議そうな顔をする二人に微笑みかけて、私は調理を開始した。

 

まずはコカトリスの巨大な卵を割り(殻が岩のように硬かったけれど、ドーラさんが拳で割ってくれた)、たっぷりの樹蜜を加えて、泡立て器の代わりの枝でひたすら混ぜる。

 

「ルナ、それ何してるんだい?」

 

「空気を混ぜ込んでるんです! これがふわふわの秘訣ですよ!」

 

二人も興味津々で手伝ってくれた。ジルキさんが粉をふるい、ドーラさんが繊細に混ぜる。

型なんてないから、大きな葉っぱを器にして、それを大きな鍋に並べて、土台の下に水を敷く。

 

そして、待つこと数分。蒸気が上がると同時に、厨房いっぱいにあまくて幸せな香りがふんわりと広がった。


「……っ! なんだい、これ! 甘くて、すっごくいい香りだね」

 

蓋を取ると、そこには黄色く膨らんだ、ほかほかの蒸しパンが出来上がっていた。コカトリスの卵の濃厚な黄色が、太陽を浴びて宝石のように輝いている。


「ドーラさん、ユフィリアさんのお口に合うか味見をしていただけませんか?」


「うんっ! 食べてみるよ!」


ドーラさんはそっと蒸しパンを手に取り、そして恐る恐る齧る。パンは彼女の牙が必要ないくらいに柔らかく、ほろりと崩れる。その食感にドーラさんは驚いたように目を見開いた。


「あ……あまい。こんなにふわふわして、柔らかいもの…食べたことないや」


ドーラさんはそう言うと、二口、三口と止まることなく齧り付いて、あっという間に平らげてしまった。


「お口にあいましたか?」


「うん……うん! これ、すっごいよ! 噛む必要がないくらい柔らかくて、甘くっておいしい! これならユフィ叔母さんも喜んでくれるよ!」

 

ドーラさんの様子にジルキさんは満足そうに微笑んで、私の背中を叩いてくれる。

   

「ありがとうよ、ルナ。さっそく昼飯の時間にユフィに持っていってやっとくれ」

 

「わかりました!お任せ下さい!」


私は出来上がったばかりの蒸しパンを籠に詰めて、ユフィリアさんのいる屋敷へと駆け出していった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

次回も引き続きよろしくお願いいたします

画面下より☆の評価、感想、レビュー、リアクションなど、ポチっとお気軽にいただけると嬉しいです!いつもしてくださる方、本当にありがとうございます。励みになります。

※次回第110話『ユフィリアの昔話』更新は3月25日18時です

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