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異世界にとばされた社畜OLですが、ツンデレエルフと行商ライフを満喫中です!  作者: しらたき 茶々麻呂
エルフの里帰り編

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106/123

106_オーク族の宴

第106話です。

OLは食いっぷり飲みっぷりがいいので、お母ちゃんお父ちゃんたちから好かれそうだなと思っております。

 カンカンカン!!


 誰かが鍋を強く叩く音がする。それは広場の隅にある調理場からの音で、そこからは肉の焼ける香しい匂いが立ち込めていた。


「さぁ野郎ども、料理ができたよーッ!」


「宴だ、宴だ!」


 戦士が太鼓を叩き、若者たちが火をつけた松明を宙に飛ばす。それは弧を描くように一回転して、中央の焚き火に飲み込まれていった。それはたちまち轟々と燃え上がり、日が暮れた里の景色をオレンジ色に染めていく。


 それを皮切りにして男たちは酒を注ぎ、若者たちは肉に食らいつき、戦士たちはビョルンさんを囲んで騒ぎ始める。


「おいビョルン! 肉食え、肉!」


「狩ったばっかりの肉だ。美味いぞ!」


 ビョルンさんは荒々しく骨付き肉に齧り付いて、満足そうに長いため息をつく。


「あぁ……美味いな」


「おじさん! こっちのは俺が狩ってきたんだ、こっちも食ってくれよ!」


「わかった、わかった」


 バッシュさんと若い戦士たちは木にくくりつけられた魔物の肉を担いで現れた。その魔物は鹿のような大きな角が生えていて、その肉を大きなナイフで削いで食べるらしい。シュラスコみたいなものかな。


 一方私はというと、あっという間にオークの女性たちに囲まれ、巨大な木のジョッキを握らされた。


「ほらルナ、ウチの名物、黒エールだよ」


「ありがとうございます」


 ジョッキに満たされた黒い液体は、黒麦のような爽やかな香りがした。口に含むとパチパチと微かな炭酸と麦の香りが鼻に抜けて、のどごしもスッキリしていてとても飲みやすい。


 ゴッ、ゴッ……と一気に煽ると、その場の女性陣から歓声が上がった。


「おやまぁ! いい飲みっぷりじゃないか!」


「とってもおいしいです!」


 ブラック企業特有の、飲みニケーションで鍛えた肝臓は伊達じゃない。あと、この黒エールはすごく美味しいのでいくらでも飲めてしまいそう。


「ねぇあんた、バッシュには会ったんだろ?」


「はい。最初にお会いしましたよ」


 1人の若い女性がおかわりのエールを注ぎながら、話しかけてくれた。彼女は三つ編みを編み込んだ艶やかな黒髪を揺らして、人懐こい笑みを浮かべていた。


「そっかそっか。あたし、ドーラ。バッシュの妹なんだ、よろしく」


「ルナと申します、ドーラさん。よろしくお願いします」


「いーよいーよ、かたっくるしいのヤだからさ。歳も同じくらいだし、仲良くしてよね」


 ドーラさんは私のジョッキにガツン!とジョッキをよくぶつけて、勢いよく煽った。私もそれに続いて2杯目を煽る。


「こっちのシチューは、あたしが作ったんだ。ここらのブラックディアの肉は柔らかいよ!」


 差し出されたのはブラックディア(鹿)のシチューだった。そういえば鹿肉は食べたことがないから、少し緊張する。


 スプーンで掬っただけでホロリと溶ける肉と、甘みの強い脂身が口の中を満たす。肉は淡白な赤みなのにサシが入っているように柔らかく、脂身はまるで砂糖菓子のように甘い。そしてアクセントに木の実のカリカリした食感が楽しい。私は長いため息をついて、そのシチューをゆっくりと味わった。


「す……っっごく、おいしいです、ドーラさん……!!」


「あっははは! 見りゃわかるよ。おかわり、いるかい?」


「ぜひお願いします!」


「あいよ。たんとお食べ」


 ドーラさんはケラケラ楽しそうに笑って、シチューのおかわりをついでくれた。


「あ、母ちゃん! シチュー美味いってさ」


「そうかい?よかったねぇ!」


 ドーラさんのお母様が厨房の奥から顔を出した。その女性も一際大きな身体……いや、お腹が大きい妊婦さんだ!


「あ、わ……! あの、ご飯もお酒も本当に美味しいです!ありがとうございます!!」


 妊婦さんを立たせるわけにはいかない!と思ってすぐさま立ち上がるが、彼女はまるで気にするなというように大きく手を振った。


「私はタッドの嫁、ジルキだ。タッドってのは族長の長男坊さね」


 女性は広場にいる族長の傍らの男性を指さした。左目に傷のある無骨で屈強そうな男性は、ジルキさんの視線に気づくと静かに頷いた。私も彼に向かって深く一礼をする。 


 ジルキさんは私の隣に座ると、優しく話しかけてくれた。ジルキさんに釣られるように、調理場の奥様方が私のお皿に肉や野菜を盛り付けてくれる。見たことの無い形をした色とりどりで面白い野菜を口に含むと、独特な苦味と酸味が口の中に広がった。


 ピーマンにちょっと酸味を足したような味だけど、肉の脂と相まってとてもエールが進む。とても美味しくて、ポイポイと口に放り込むと、奥様方は私の食べっぷりに満足してくれたみたいだ。


「ねぇルナ、あんたビョルンの世話をしてくれてるんだって? 大変だろ、あの子は昔から頑固でさぁ」


「そうだそうだ。あいつは何言っても野菜だけは素直に食わないんだ。ちゃんとバランスよく食いなって言ってんのに」


 ジルキさんや奥様方の、まるで母親が息子のことを話すような口調がなんだか微笑ましい。釣られて笑顔になってしまう。


「ビョルンさん、昔から野菜嫌いだったんですね」


「そうとも。でもね、とっておきの裏技があるんだよ」


「とっておき?」


「シチューでクッタクタになるまで煮れば、文句言わずに食うって寸法さ。溶けちまえばフォークで取り出すことはできないからね!」


「あぁ、なるほど!」


 その手があったか! と、私は片手で膝を打つ。


「その分、手間がかかるんだけどねぇ」


「まったく。うちのガキ共と同じじゃないか」


「あははっ! 奥様方から見たら、ビョルンさんもまだまだ子供なんですねぇ」


 アハハハ! と奥様方やジルキさんの賑やかな笑い声が大きく響く。


 火を囲み、賑やかな笑い声が絶えない集落。ワイルドで、暑苦しくて、けれどとても温かい場所。

 ここが、クールなビョルンさんの故郷だと思うと、少し感慨深いものがある。そして彼が愛する故郷に、私を連れてきてくれたことも、なんとも言えず嬉しかった。


 私はほうっとため息をついて、残りのエールを飲み干したのだった。 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

次回も引き続きよろしくお願いいたします

画面下より☆の評価、感想、レビュー、リアクションなど、ポチっとお気軽にいただけると嬉しいです!いつもしてくださる方、本当にありがとうございます。励みになります。

※次回第107話『毛布争奪戦、開幕!』更新は3月22日18時です

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