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異世界にとばされた社畜OLですが、ツンデレエルフと行商ライフを満喫中です!  作者: しらたき 茶々麻呂
06_エルフの里帰り編

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104/251

104_ビョルンおじちゃん

 ガロール族長が立ち去ったあと、バッシュさんが顔を輝かせて、ビョルンさんの肩に組み付く。彼はビョルンさんに相当懐(なつ)いているようだ。


「なぁおじさん! せっかく来たんだ、今日は泊まっていくだろ? なんなら、しばらく泊まっていくよな?」


「あぁ」


「やった!」


 バッシュさんはビョルンさんの返事に、少年のように顔を輝かせた。 


「さぁ、ルナもこっちだ。うちを案内するよ」


 バッシュさんを追いかけて足を踏み出そうとすると、なにかに引っかかったように重くなった。


「ん?」


 見下ろすと、小さなオークの子供が私のズボンを掴んでいた。まだ幼いのか、私の膝だけくらいしかない身長で、涎(よだれ)まみれの手で私のズボンを一生懸命に掴んでいる。


「かっ……!!」


 か、かわいいー!! ちっちゃい! お目目がくりくりで、ふかふかなほっぺたと手! なんて可愛い、天使のような子供たちなのか!


 私は荒ぶる脳内を押しとどめて、しゃがんで目線を合わせると、にこやかな笑顔を子供たちに向ける。


「こんにちは」


「……ちは」


 私の挨拶に少し恥ずかしがったように、男の子が返す。その片割れにいた女の子は、人懐こい笑顔を浮かべて、小さな赤いお花を差し出してくれた。


「いらっしゃい!」


 天使降臨!!!!


 私は天を仰ぎ、神に感謝した。私をこの天使に会わせてくださり感謝しますという祈りを込めて、両手を合わせる。


 差し出されたお花は、どうやら歓迎の証のようだ。花を宝物のように受け取ると、私は大切にスカーフに包む。丁寧に保管して、押し花にしよう。


「ありがとう。えぇと、じゃあお礼をしなくっちゃね」


 子供が喜びそうなもの、何かあったかな。腰のポーチをひっくり返す勢いで探すと、小さな小瓶を見つけた。その中にはキラキラとした鉱石、もとい鉱石を模したお菓子が詰まっている。


「ねぇ、ビョルンさん。この子達ってコレ、食べられますか?」


 ビョルンさんを見上げて尋ねると、彼は少し目元を緩ませた。


「オーク族も樹蜜を好んで口にする。問題ないだろう」


「やった!」


 これはポーションの余りで作った、樹蜜のキャンディだ。回復効果はなくて、ただ甘いだけの甘味。くちどけをよくしているから、小さな子供でも喉に詰まらせることはないはず。


「あのね、これはキャンディっていって、甘くておいしいお菓子なんですよ」


「きゃんでぃ」


「そう、宝石みたいでキレイでしょう?おひとついかがですか?」


 琥珀色のキャンディを西日にかざして、キラキラと光らせてみせる。子供たちの大きなグレーの瞳の中で星が散るように煌めいて、とても綺麗だ。


 子供たちに見せるように一つを齧ってみせ、カラコロと良い音を立ててみせた。べっこう飴みたいな味が口のなかいっぱいに広がる。さぁ、未知の食べ物に子供たちの反応はいかに?


「ちょうだい!」


「もちろん、どうぞ」


 女の子はキャンディを手に取って、一口で頬張る。それを見た男の子も続くように恐る恐る舐めてみた。そしてパァっと花が咲くように二人の顔に笑顔が浮かぶ。


「あまい!」


「おいしーい!」


「本当? よかった!」


 その子達の声を聞きつけて、他の子供たちまで駆け寄ってきた。キャンディはたくさんあるので、ちゃんと1つずつ行き渡って安心する。これはこの集落で私が溶け込むための第一歩、そう、信頼の証だ。


「私はルナ。よろしくね」


「ルナ、るーな!」


 挨拶をしながら微笑みかけると、子供たちはいっせいに私の名前を呼んでくれた。


 あぁ、なんという幸せ空間!


「ルナ、だっこして!」


 甘えるように抱っこをせがむ子供たちを腕に抱える。私の腕力では2人が限界だが、こんなに尊い子供たちが3人も腕の中にいるんだ。決して取りこぼしたりはしない!


「どっこい……しょ!」


 子供たちはそれぞれ見た目よりもどっしりと重たい。けれど、なんて愛おしい重みだろう!


「随分と懐かれたな」


「はい! 仲良くしていただけるみたいで、よかったです」


「そうか」


 ふっと口角を上げるビョルンさん。彼の表情から、どれほどこの里を想っているのかよく分かる。こんな優しい顔をするなんて、意外な一面だった。


 ぼうっとビョルンさんを眺めていると、腕の中の女の子が身動ぎして私の顔を覗き込んだ。


「るな、どうしたの?」


 私はふと思いついた疑問を、子供たちに投げかけてみる。


「ね、みんなから見て、ビョルンさんってどんな人?」


「ビョルンおじちゃん?」


 ころん、と首を傾げる仕草が愛らしい。ふふ、おじちゃんって言われてるの、なんだか愉快だな。


「すっごくやさしい!」


「すっごくつよい!」


「それでね、それでね!」


 子供たちが口々に語ってくれた話を要約すると、賛辞の嵐だった。


 子供たちとよく遊んでくれる。狩人たちの指導もしてくれる。女の人にも紳士的。物知りで色んなことを教えてくれる。族長様と仲良しで、同じくらい強い。


 普段のビョルンさんの釣れない言葉や態度からは考えられない、聖人君子っぷり。だけど、そんなに驚きはなかった。ビョルンさんは素直になれないだけで、優しい人であることは私も知っているから。

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