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異世界にとばされた社畜OLですが、ツンデレエルフと行商ライフを満喫中です!  作者: しらたき 茶々麻呂
エルフの里帰り編

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100/126

100_幸運の兆し

第100話です。

本日より第二章開幕です。その中でもまず最初は『エルフの里帰り』編をお送りします。お付き合いいただけると幸いです。

「通っていいぞ」


関所の衛兵が、ビョルンさんの商人ギルドの証書を見てぶっきらぼうに言った。 


「ありがとうございます。お仕事おつかれさまです」


私は衛兵に笑顔を見せて、軽く会釈する。向こうは表情を崩さないままだったけれど、私が大きな石を踏みかけた時に手を差し伸べてくれた。


「ようこそ、漁業都市ポルタ・サレへ」


 


関所を抜けると、水平線を見下ろすことが出来た。ルーンデールから続く森をぬけた先に、港までの坂道が続いている。

  

「やっと目的地が見えてきましたね! 」


ルーンデールを出発してはや一週間。長いような、短いような行商旅だった。


これまで私たちは「自分の足で歩き、自分の目で探す」という、まさに地を這うような行商スタイルをしてきた。背中にはアニタさんが融通してくれた大きな背負子。歩くたびに、ポーションの瓶がカチャカチャと心地よい音を立てる。


と、そこで街道の脇の草むらが目に入った。鑑定グラスを覗き込み、効果がありそうな薬草を摘み取っていった。ご機嫌に鼻歌を歌いながら採集する私を、ビョルンさんは不思議そうに見ている。 

 

「何をニヤついている」

 

「だってこれ、『癒痕草』の若芽でしょ?乾燥させればポーションの定着率を上げるんですよ。積み取っておかないと」

 

ビョルンさんは肩を竦めて、若芽を太陽の光にかざす。


「効果は認めるが、味がひどい。ドブを革靴で煮詰めた味がする」  


「うげぇ」


味を想像して、思わず呻いた。しかし効果があるものをみすみす見逃す訳にはいかない。 

  

「そこをどうにかするのが、我々商人の努力義務です。この間の毒消し草の応用ですよ」

 

「スライムの体液の在庫が少ない。中心街に着くまでにダンジョンに潜っても構わないと?」


「う……善処、します」


そんな意地悪に私が口ごもると、ビョルンさんは機嫌良さそうにクックッと喉を鳴らして笑った。 


「もう。すぐ意地悪言うんだから」 

 

道端にしゃがみ込み、手際よく薬草を摘み取っていく。ブラック企業時代、山のような資料から必要な1枚を探し出していた集中力は、今や薬草探しに全振りされていた。

 

「お!」

 

「……なんだ」

 

「四つ葉のクローバーですよ!」

 

私は薬草の間に生えていたクローバーを見つけて、思わず子供のように叫んだ。

 

「へぇ、この世界にもあるんですね」

 

「ただの雑草だろう」

 

「何言ってるんですか。このクローバーは幸運の証ですよ。見つけた人にはラッキーなことがあるんですからね」

 

しかし興奮する私を他所にビョルンさんは呆れたように腕を組んで鼻を鳴らす。

 

「くだらん」


「ちぇ。夢がないんですから」 

 

くだらないと一蹴されてしまったので、仕方なく足元のクローバーに視線を落とす。摘んでしまうのはなんだか可哀想なので、そのままそっとしておいてあげることにした。

 

あらかた周囲の薬草を摘み終わって、街道に戻ってきた。ビョルンさんは『やっとか』みたいな顔をして、大きな欠伸をした。

 

「おーい、そこの行商のお嬢ちゃん! ちょっと止まってくれ!」

 

「ほら、早速ラッキーが舞い込んできましたよ、ビョルンさん。お客様です」

 

街道の向こうから、汗だくの若手冒険者三人組が駆け寄ってくる。一人が腕から血を流して、顔をしかめていることから、何か問題事を抱えているように見えた。

  

「 藪の中でトゲネズミにやられちまって……」

 

「災難でしたね。回復ポーションがご入用ですか?」


「あぁ、頼むよ」

 

私は背負子を下ろし、中から特製の小瓶を取り出した。これはルーンデールからポルタ・サレの道中で採集したハーブを調合した新作であり、自信作だ。

 

「お客様は幸運の持ち主です。ただの体力回復ポーションではありません」


私はまるでイチゴシロップのように真っ赤なポーションを陽の光にかざす。すると中の液体がキラキラと煌めいた。 


「ルーンデール名産のハーブを加えてあるので、飲むと鼻がスッと通って、戦闘後の火照りも引きますよ。名付けて『シャッキリ・ポーション』! お値段は破格の銀貨1枚です!いかがです?」


私の口上に、冒険者たちの目は釘付けだ。美味しそうな見た目にするために、材料の配合を工夫した。一般的な回復ポーションはもっと鈍い色をしているから、こんなに透き通ったポーションは新鮮に見えるはず。私は栓を抜いて、冒険者たちに差し出した。 

 

「たしかにいい匂いだ。しかも、ポーションにしちゃ安いな」


一人の冒険者が匂いにつられてポーションを煽る。ごくん、と大きく喉が鳴って、顔に血色が戻っていった。 

 

「おぉっ!苦くないし、なんか元気が出た気がする」


「ほんとか?じゃあ俺たちにもくれ。ストックも切れちまったから、五本買う!」


喜びの色を見せた冒険者たちは、銀貨を五枚渡してくれた。過不足なく、ピッタリの売上に私はにっこりと笑みを浮かべる。 

 

「ありがとうございます!道中、お気をつけて!」

 

「お嬢ちゃんもな!」

 

チャリン、と革袋に落ちる銀貨の音。自分の足で稼いだという実感。これがなんともたまらない達成感を産む。

見守っていたビョルンさんが、呆れたように鼻で笑った。

 

「貴様のネーミングセンスはよく分からん」

 

「商品名は分かりやすく端的に、が定石です。ビョルンさんも一本どうですか? 眉間のシワ、少しは伸びるかもしれませんよ」

 

「いらん」

 

ビョルンさんは素っ気なく言って、また歩き始める。私はその背中を追いかけるように足早に坂道を降りていった。 


最後まで読んでいただきありがとうございます。

次回も引き続きよろしくお願いいたします

画面下より☆の評価、感想、レビュー、リアクションなど、ポチっとお気軽にいただけると嬉しいです!いつもしてくださる方、本当にありがとうございます。励みになります。

※次回更新は3月16日18時です

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