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第1話 僕はお化けになっちゃった!(2)

 深夜、パジャマ姿の令太は物音で目を覚ました。誰かが家の鍵を開けて、入ってくるようだ。すでに家族は寝ているのに、何事だろう。まさか、知らない人が来たんだろうか? 家族に何かが起こりそうで、怖いな。


「誰やろ」


 令太は怖くなって、布団にくるまった。まるで、昨夜の夢でお化けに取り囲まれた時のように。


「怖い! 怖い!」


 令太は目を閉じていた。その時、令太は気づかなかった。自分が光に包まれて、お化けになっていくのを。


 目を開けた令太は戸惑った。ベッドの上にいるのだ。布団にくるまっていたのに、どうしたんだろう。まるであの時の夢のようだ。


「あれっ!?」


 令太は昨夜の夢の事を思い出して、あの夢と同じように鏡を見た。鏡の向こうには、あの夢と同じ、令太と顔がそっくりのお化けがいる。


「お、お化け? 僕、お化けになっとる!」


 なんと、令太はお化けになっていた。まさか、自分がお化けに変身するとは。あの夢の内容はやっぱり本当だったんだな。


 だが、その声に誰も反応していない。誰もお化けになった令太の声に気付いていないようだ。もしかして、僕は死んだんじゃないかと思い、ベッドを見て、めくった。だが、令太はいない。あの夢と同じように、自分の体自体がお化けになったみたいだ。


 と、令太は思った。今さっきの物音は何だろう。


「そや!」


 気になった令太は、何が原因なのか、姿を消して見てみようと思った。令太はさらに怖がった。すると、姿が透明になった。こうすれば、お化けにしか見えないだろう。


 姿を消して、令太は2階に向かった。大広間に行くと、そこには見知らぬ男がいる。男は黒い服を着ていて、いかにも怪しい見た目だ。男は厨房に向かう階段をゆっくりと降りていた。どうしてゆっくりなんだろう。見つかったらいけないんだろうか?


 その様子を見て、令太は思った。ひょっとしてあれは泥棒だろうか? 店の売り上げを盗もうというんだろうか? ならば、許さない。


「あれは、泥棒?」


 男は厨房に入った。厨房は暗くて、静かだ。昼間の活気がまるで嘘のようだ。男は売り上げの入った引き出しを開け、売り上げを取り出した。男は笑みを浮かべている。令太はその様子を見て、拳を握り締めている。何とかしないと。令太は店の明かりをつけるスイッチの前にいる。だが、男は全く気付いていない。令太が姿を消しているからだ。


「さて、出よか」


 それを見て、令太は手に力を入れ、電気をつけた。


 出ようとしたら突然、電気がついた。本当は令太が電気をつけたのを、男は知らない。


「あれっ、電気がついた・・・」


 えっ、誰かいたのか? 男は一瞬ビビった。男は辺りを見渡した。だが、誰もいない。


 その間に、令太は竹刀をイメージした。すると、令太は竹刀に化けた。これが化ける方法なのか。だが、そう考える時間は全くない。今は男を叩く事に専念しよう。


 と、男は何かの気配を感じ、振り向いた。そこには竹刀がある。しかも、その竹刀は浮いている。実はその竹刀は、令太が竹刀に化けたものだ。


「えっ!?」


 竹刀は男の頭を何度も叩き始めた。


「痛っ!」


 男は痛がっている。だが、竹刀は叩くのをやめない。まるで強盗をやっつけているような感じだ。


「痛い!」


 そして、竹刀はいつの間にか消えた。家族が来る気配を感じて、令太は姿を消して、2階に戻っていった。


 と、そこに令太以外の家族6人がやって来た。男の声で目を覚まして、ここにやって来たようだ。文也と花子は目をこすっている。


「何や、何の騒ぎや!」


 達郎は驚いている。どうしてこんな時間に人が入っているんだろうか? まさか、強盗だろうか?


「お前、誰や! なんでこんな時間に店に入っとるんや! どっから入ったんや!」


 平吉は怒っている。どうやってここに入ったんだ。こんな時間に入ったらダメだぞ。もし、強盗でもしていたら、警察に言わないと。


 と、達郎は開いた引き出しが気になった。まさか、売り上げが盗まれているのでは? 達郎は引き出しの中身を見た。すると、引き出しの中の売り上げが全部なくなっている。きっと、あの男が盗んだんだ。


「父ちゃん、こいつ売り上げ盗んどるぞ!」


 それを聞いて、平吉の顔が一気に怖くなった。それを見て、男はますます怖がった。


「お前・・・」

「ごめんなさい・・・」


 男は謝った。だが、盗んだ事は確かだ。警察に言わないと。


「達郎、警察に電話せぇ」

「おう」


 達郎は店の電話を使って、西成署に電話した。


「なんでこんな事やったんや!」


 平吉は怒っている。どうしてこんな事をしたのか、正直に答えろ。


「お金があらへんから・・・」


 平吉は納得した。だが、売り上げを盗むのはいけない事だぞ。わかっているな。


「その気持ち、わかるけどな、やったらあかんぞ!」

「本当にごめんなさい・・・」


 男は謝った。だが、どんなに謝っても、逮捕される事に変わりはない。


 と、末子は令太がいない事が気になった。令太はどこに行ったんだろうか?


「あれっ、令ちゃんは?」


 その声を聞いて、2階にいた令太は元の姿に戻った。だが、誰もそれに気づいていない。元の姿に戻り、令太はほっとした。自分は死んでいないんだな。ただ、お化けに変身しただけなんだな。


「どないしたん?」


 令太の声だ。末子は振り向いた。令太は階段の先にいる。令太の姿を見て、末子はほっとした。無事だったようだ。


「あっ、令ちゃんおったんやね」


 令太は眠たそうだ。早く寝たいようだ。


「泥棒じきに捕まるんやろ? もう寝るわ。おやすみ」

「おやすみ」


 令太は3階の部屋に戻っていった。部屋に戻る間、令太は思っていた。ひょっとして僕は、布団などの布にくるまり、怖がったらお化けに変身できるのかな? それが本当なのか、部屋に戻ったら試してみよう。


 令太は部屋に戻ると、すぐに布団にくるまった。そして、心の中で怖がった。すると、令太は光に包まれ、お化けに変身した。今度は目を開いていて、その様子がよくわかる。


 令太は鏡に向かい、自分自身を見た。鏡の向こうには、お化けに変身した自分が映っている。


「やっぱり・・・」


 令太は横を向いて、尻尾を振った。こんな外観なのか。こうして見ていると、不気味だけど、どこかかわいいな。だけど、お化けは人によっては怖いと思われるから、自分だけの秘密にしよう。それに、もし見られたら、世間が大騒ぎになるに違いない。自分の部屋に1人でいる時は姿を消さなくていいけど、それ以外では絶対に姿を消そう。お化けに変身すると、いろんな事ができる。でも、お化けの力は悪い事に使いたくない。誰かのために使いたいな。


 お化けに変身する方法がわかったし、強盗は逮捕されそうだ。もう寝よう。明日も学校だ。


「はよ寝よ・・・」


 令太は元の姿に戻り、再び寝入った。


 それからしばらく経って、西成署の警察官がやって来た。すでに文也と花子は寝ている。こんな深夜に強盗とは。警察官は驚いている。


「お邪魔します、西成署です」

「こいつです!」


 達郎は男を捕まえている。男は降参して、下を向いている。


「逮捕する!」


 警察官は男に手錠をかけた。男は警察官に連れられて行く。


「くそっ、竹刀で叩かれた!」


 それを聞いて、達郎は首をかしげた。


「あれっ? 父さん、ここって竹刀あったっけ?」

「ないで」


 平吉も知っている。平吉も首をかしげた。どうして竹刀なんだろうか? 強盗の妄想だろうか?


「えっ・・・」


 まぁ、強盗の言っている事なんて、信用できない。そんな強盗は放っておいて、もう寝よう。


「まぁええか。ほな、みんな寝よか」

「おう」


 平吉は電気を消して、それぞれの寝室に向かった。




 その後、男は警察でも、竹刀が襲い掛かって来たと言っている。だが、警察官たちはその言葉に全く聞き耳を持たない。へんげ屋には竹刀なんてない。それに、竹刀が襲い掛かってきたって、なんか子供っぽい発言だな。どうしてこんな事を言っているんだろうか?


「だから、竹刀が襲い掛かってきたんやて! 勝手に襲い掛かってきたんやて!」


 警察官は男を平手打ちした。いかにも子供らしい妄想だからだ。竹刀がひとりでに襲い掛かってくるなんて、ありえないだろう。


「アホ! あの店に竹刀なんてあらへんぞ! それに、何の妄想や! おかしいやないかい!」

「本当に襲い掛かってきたんやて!」


 それでも男は叫んでいる。だが、警察官が全く聞き耳を持たない。竹刀が勝手に襲い掛かってくるなんて、ありえない事だからだ。




 翌朝、令太はいつものように通学団の集合場所にやって来た。へんげ屋は強盗が入ったために今日は臨時休業になったという。現場検証が行われるためだ。


「おはよう」

「おはよう」


 そこに、優がやって来た。今朝のニュースで、へんげ屋に強盗が入ったと聞いた。まさか、ここの近所で、よく家族と行っている店でこんな事があったとは。


「昨日は大変やったね」

「おう。でも捕まってよかったわ」


 令太はほっとしている。あたかも、自分がやっつけたのを知らないかのような態度だ。


「ほんまほんま」


 だが、優は気になっていた。へんげ屋さんに竹刀ってあったっけ? どこを見ても、そんなのないよ。


「うーん、あの店、竹刀あらへんよ」

「せやね。きっと泥棒の妄想やねん。やよね、令ちゃん」


 文也は妄想だと思っているようだ。花子もそう思っているようだ。


「そうそう。あいつの妄想やて。ハハハ・・・」


 令太は高笑いをした。本当は自分が竹刀に化けて何度も叩いたのに。

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