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第三話〜涙

遅くなりました。申し訳ございません。この章は少し長くなりました。表現がくどいような気もするのですが。お楽しみいただけましたら幸いです。

「よお」

それはいかにも快活そうな男の声だった。実にこの場に似つかわしくない声。声だけで判断するならば、歳の頃は30程だろうか。カムランよりはかなり若いのは間違いなさそうであった。

「あんたも遭っちまったようだね。このゴミ拾いウォークで。まあ、こんな馬鹿げたウォーキングに参加させられりゃそれあ誰だって落一度や二度は、遭っちまうさ。嫌なことのひとつやふたつには、ね」

馴れ馴れしい物言い、そして歳上を尊重しない物言いにカムランは少し腹が立ってきた。まるで他人事のようでもある。それにこの哀しい時にできるなら誰とも話したくはない。

「あんたも?まるで自分も遭ったみたいな物言いだね」

溜息をつきながらカムランは振り返った。

黒い喪服のようなスーツに男は身を包んでいた。スーツは泥だらけで、見る影もない。

カムランは、一番気になることを思い切って訊いてみた。

「いつから見ていたんだ?見ていて助け舟を寄越さなかったということなのか?え?」

が、男は不敵にわらった。

「いつから?始めからさ。いや。正直それが始めだったのかはオレにはわからない。気になることなのかい?」

男の捻くれたような笑い方はカムランには不快でならなかった。繰り返した。

「何故助けなかった?男2人で戦えば何とか無事にあのロボットを破壊できたのかもしれないのだぞ」

男の嗤いがぴたりとやんだ。カムランは拳を握り締めた。

が、男は平然と答えた。

「何とかなる?あれはこの国で最高品質のAIを搭載してるのだぜ。あいつは頭が良いんだよ。オレが参戦するような気配を察知したら、川の中からさらに応援のロボットを出現させたハズだぜ」

──結局一対一の闘いがひとつ増えただけなのか。それでは確かに彼は役に立たなかったのかもしれない。どの道、シュラビがやったように捨て身の覚悟で電磁むちを引き千切るしかなかったわけか。

「この国のことに関しては詳しいのだな」

カムランは溜息をついた。と、男は、

「あんたあ外国からの動員かい?どうせCMか書籍に騙されてやってきたのだろ?一生分を二か月稼げます、とか?」

カムランはまた溜息をついた。男が畳み掛けた。

「まあいいや。ところでオレの名はジルコ。あんたは?どうせ何処にもなかまらしい仲間なんていないんだ。協力し合おうぜ」

ジルコは握手を求めてきたが、その泥だらけの手を握り返そうとは思えなかった。

「どうやらゴミ拾いもはかどってなさそうじゃねえか。それじゃ午前中のノルマには足りないぜ。よし。オレのゴミを少し分けてやるわ。袋を出しな」

命令口調には相変わらずイライラするが…とはいえ、どうやら悪い奴ではなさそうであった。

礼を言おうとすると、ジルコが遮った。

「そういや、いんた。あんな哀しい死別れをしなきゃならなかったのに、一度も涙を見せてねえな。痩せ我慢かい?泣いてもいいんだよ」

「歳上からひとつ良いことを教えてやる。あまり余計なことは言わない方が良いよ。訊いた相手が滅茶苦茶イラついていることもあるからな」

カムランは捨てるように言うと、再びゴミを求めて歩き出した。

表向きは慈善運動であるゴミ拾い なのだが、平気で参加者を殺す さっきの AI ロボットといい、ただの慈善運動だとも思えなくなった。

確かにカムランは泣いてはいなかっま。その理由は…彼自身にもわからないのであった。気持ちわかるだろうとも思えた。

食料も自前で確保しなければならなかった。

お読みになっていただきまして誠にありがとうございました。次のお話も乞うご期待。椎名誠先生の武装島田倉庫のようでもあります。

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