プロローグ〜発端
と久しぶりです。久々に書けそうな気がしてきまして、思い切って書かせて頂きました。
人々は、自分たちが何故、何の目的で歩いているのか、知らなかった。ただ、それは慈善事業の一環だとだけ教えられた。それに参加するのは名誉なことだとも。
いや、正確には目的は知らされていた。それは、ゴミ拾いをひたすら行い、ゴミの含有成分であるヒマネ油を回収せよ、というものだった。
人々ら、巨大な船も航行できそうな程、幅のある河川に沿って川下に向かう形で歩いていたのだ。
確かに不法に投棄されたゴミを拾い集めながら歩いていく、というのは一見、慈善事業ぽくもあった。
が、皆、ヒマネ油の利用法など知ってもいないのだから、ゴミ拾いのモチベーションは、極めて低い水準をキープし続けたのである。
それでも、集った人々の数は数えたわけだはないが、2000は下らないようには見えた。実際、カムラビ夫妻の歩く 周辺だけでも、100名をこえそうであった。
これだけの人が動員はれるのだから、その内の数人くらいは何か、主催者の意図するところとか、ヒマネ油の利用法だとかを知ってる者もいるかもしれなかった。、訊いてみようか知っているかもしれなかった。
カムラビ=ブルーンは、妻であるシュラビの身体を案じていた。
シュラビは、虚弱体質なのだ。少しのことで風邪は引いたし、階段を二段転げただけでも簡単に骨折した。消化器系の持病も持っていたし、片頭痛も常に抱えていたのだ。
だからカムラビ=ブルーンは常にシュラビの心配をした。この強行軍のなかで彼女がいつ倒れてもおかしくはないと覚悟もしていた。
しかし、この「慈善事業」から逃げるのは容易いことではなさそうだった。
彼ら夫婦は何度も脱出を試みもした。




