01 オープニング
『みさぎのオハナシ 第一話 彼女の箱が開く刻 』
昨日と同じ今日。
今日と同じ明日。
世界は繰り返し時を刻み、変わらないように見えた。
――大きく変貌した世界。
その真実を知ってなお、何も変わらない日常がそこにはあった。
見て見ぬふりなのか、それとも本当に気づかずにいるのか。
たった一枚の薄布のその向こう。
蠢くものが彼女の心に爪を突き立てるその時に、きっと、その箱は開くだろう。
――ダブルクロスの烙印と伴に。
ダブルクロス The 3rd Edition
『みさぎのオハナシ 第一話 彼女の箱が開く刻 』
ダブルクロス、それは裏切りを意味する言葉。
GM:ということで、今回のセッションを始めていきたいと思います~!
一同:わー!!(ぱちぱち)
GM:それでは、それぞれにハンドアウトをお渡ししたいと思います。
【ハンドアウト① "箱入りの銃" 長月 架織】
シナリオロイス 客の紳士 推奨感情 P:誠意 N:厭気
「どうか、また本気で作品を作ってくれないか? 材料はこちらで用意してもいい」
月一のフリマに出店する度に、そう声を掛けてくれる紳士がいる。
彼のいう「本気の作品」は以前エフェクトを使用して作成したもののようだ。
貴女はその作品がきっかけでUGNの協力者として登録することになった。
以降、みだりにエフェクトを使わないようUGNから厳命されているのだが、どうしたものか。
GM:では、簡単に自己紹介をお願いします。
架織:はい。えぇと……長月架織です。大学生で、コードネームは“箱入りの銃”。 《巨匠の記憶》というエフェクトで、情報収集ができます。
キュロ:お! 素晴らしい!!←情報収集は得意じゃない
かどやん:助かるね!←情報収集は苦手
GM:お前ら……(笑)
架織:あとは、銃を作り出して、攻撃ができます。
GM:それと、イージーエフェクトをいくつか持ってますね。
架織:《壁抜け》《万能器具》《成分分析》《文書偽造》を取りました。
かどやん:いっぱい持ってる!
架織:プレイヤーは緊張しています。よろしくお願いします(笑)
GM:はい! よろしくお願いします。では、次~!
【ハンドアウト② "血の牢獄" 狩魔 人】
シナリオロイス 三笠原 なごみ P:有為 N:不安
「お時間よろしいでしょうか。美鷺化成のUGN担当、三笠原なごみです」
そう連絡をしてきた女性は、しかし最初、何もオーヴァードのことをしらなかった。
ここは「コードウェル博士の帰還」時にUGN支部が壊滅した街だ。
しかもUGNと協力体制を敷いていたはずの警察組織にも、大企業にも、オーヴァードのことを知る者がいなくなっていた。
オーヴァードに関する治安を守る者が誰一人いなかったはずのこの街は、にも関わらず平和なものだ。
この街における外部組織、唯一の協力者といってもいい三笠原も呑気すぎる。
今日の定期連絡でも「特に何も報告するようなことはないですよ」という。
その状況こそが、不自然だというのに……。
GM:では、自己紹介をお願いします。
キュロ(以下 狩魔):はい。狩魔人。観鷺市の支部長で、コードネーム“血の牢獄”でございます。
GM:魔を狩る一族なんだっけ?
狩魔:まあ、そうなんですが、そこまで一族の責務みたいなのは考えてません(笑)
GM:そーかい(笑)
狩魔:自分の血液を使って従者を作り、そいつらに色々させます。自分じゃあんまり何もしない。
GM:まあ、従者使いは、そんなもんですな。
狩魔:あと、上司に言われた「ペットを飼う」任務を遂行しようと、日々ペットショップに通っています(一同笑)
GM:おう、頑張れ(笑)。では、最後!
【ハンドアウト③ "堕とす弾丸" 金生 涼太郎】
シナリオロイス 客の紳士 推奨感情 P:好奇心 N:猜疑心
防衛隊をドロップアウトした君は、今はこの街唯一のUGNエージェントだ。
最初は大丈夫か?と懸念したものだが、今のところ事件らしい事件も起きていない。
君は退屈を持て余しながら日々街のパトロールなどしている。
イリーガルの様子を見て回ったりするのも任務のうちだ。
ふと、双眼鏡の向こうで、客の紳士と話し込んでいる"箱入りの銃" 長月 香織の様子が気にかかる。
先月も同じ人物と長らく話し込んでいたし、今回も先月と同じように架織の表情に戸惑いの色を感じる。
些細な出来事だが、せっかく暇なのだし、少しくらい気にかけてもいいだろう。
GM:では、自己紹介どうぞ!
かどやん(以下 金生):金生涼太郎です。コードネームは“堕とす弾丸”。できることは、狙撃だけです(笑)
GM:まあ、【感覚】の能力値が高いから、探知とかは得意なんじゃない?(笑)
金生:そうね。観鷺市のUGN支部唯一のエージェントです。ちっちゃい支部やで……。
GM:UGNの力が強くない街を作りたかったからね! 仕方ない!
金生:じゃあ仕方ないね!(一同笑)
GM:それでは、PC間ロイスを結んで頂きたいです。長月架織は金生涼太郎の、狩魔人は長月架織の、金生涼太郎は狩魔人のロイスを、それぞれ取得してください。
一同:はーい!
GM:それでは、プリプレイはここまでで、オープニングに移りますー!
●オープニングフェイズ
1 紳士の真摯なお願い シーンプレイヤー:長月 架織
ある穏やかな日の昼下がり。
この日、観鷺郷土の森自然公園では、フリーマーケットのイベントが催されている。
その出展者として長月架織はハンドメイド品を並べていたのだが。
(うーん……断ってるのになぁ。どうしよう)
目の前にいる男性に気づかれないように、長月架織はため息を漏らした。
GM:ではまず、架織さんのオープニングから。登場ダイスを振ってください。
架織:はい(ダイスを振る)あっ、10!
GM:では、侵食率を10上げてください。
架織:これって、上がりすぎると良くないんですよね……?
狩魔:まあ、今のところは、あまり気にしなくて大丈夫です。
GM:では、ハンドアウトでお渡しした通り、紳士然とした男性が、貴方の目の前にいます。
架織:はい。
GM:「どうか、また本気で作品を作ってくれないか? 材料はこちらで用意してもいい。」と言ってきますね。
架織:うーん……狩魔さんに止められちゃってるからなぁ。―――ここに並んでいる商品ではダメですか?
GM:「私が欲しいのは、君の“本気の”作品なのだ。ここにあるものではない。」
架織:そう言われましても……。
GM:「UGNに止められているのかな?」
架織:!!
GM:「君も、自分の力を存分に使いたいだろう? 我々と共に来れば、もっとよい作品が作れるのだよ?」
架織:でも……その、力を使いすぎると、怪物になっちゃうんですよね?
狩魔:という説明を、きっと私がしてるはず!(一同笑)
GM:そうだね(笑)。
架織:なので、すみません。ご期待には沿えません……。
GM:「……ふむ。仕方がないか。では、今日のところは帰るとするよ。何かあれば、こちらに連絡をくれたまえ。」と、紳士は名刺を差し出してきますね。
架織:それは、受け取ります。
(――――このこと、狩魔さんに伝えておいたほうがいい……よね?)
渡された名刺に視線を落としながら、一抹の不安を覚える架織だった。
2 運命の出会いを求める者 シーンプレイヤー:狩魔 人
観鷺市中央区にある、ペットショップわんだふる。
様々な種類の動物が並べられているその店内で一人、難しい顔をしているのが、観鷺市UGN支部長・狩魔人その人だった。
GM:では次。狩魔のシーン。
狩魔:はい。(ダイスを振る)侵食率は4上昇。私は、ペットショップに居ます。
GM:ああ、はい(笑)。では、店員さんのタイプを決めよう(ダイスを振る)えー……では、元気系の店員さんが声を掛けてきます。 「どんなペットをお探しですかー?」
狩魔:ああ、えっと……ペットでも飼ったらどうだ、と言われて、ここに来てみたのですが……どうにも勝手がわからず。
GM:「なるほどー。メジャーなとこでいくと、ワンちゃんとかはいかがですか?」
狩魔:ワンちゃん……。
GM:「ほら、こちらの子なんか、カワイイですよ?」と、小型犬を見せてくる。
狩魔:ああ、かわいいですね……。というところで、連絡が来る感じで。
GM:じゃあ、君のスマホが鳴った。相手を見ると、三笠原さんだね。
狩魔:ああ、すいません。ちょっと、仕事の連絡が……また来ます。と店を出て、電話に出ます。もしもし?
GM:「お時間よろしいでしょうか。美鷺化成のUGN担当、三笠原なごみです」
狩魔:ああ、どうもどうも。お世話になっております。
GM:「定期連絡でお電話しました。今日も特に、報告するようなことはありません。」
狩魔:そう……ですか。お疲れ様です。
GM:「前任者が残した資料があるのはいいんですが、引継ぎがされてないので、何から手を付けて良いのか、わからないんですよねぇ。」
狩魔:なるほどなるほど。あの……何かあれば、すぐに連絡を下さいね。
GM:「だから、その『何か』がどうすれば分かるのかがわからないんですってばー!」
狩魔:ああ、すみません。ええと、とにかく、よろしくお願いしますね。
そう言って、狩魔は電話を切る。そして、
「うぅん……ワンちゃん、かあ……。」
ぼんやりとした様子で独りごちるのだった。
3 訪れた非日常 シーンプレイヤー:金生 涼太郎
(なんてゆーか……異常に平和、だよなぁ。)
戦闘要員として配属されたはずの観鷺市の様子に違和感を覚えながら、金生は街を見回る。
GM:では最後のオープニングは、金生君です。
金生:はーい。(ダイスを振る)ぎゃー! 10上がった! ……で、平和なんだよね? 今んとこ。
GM:ですね。
金生:…………なんで僕、ここにいるんだろう?(一同笑)まあ、見回りをしますよ。
GM:はい。街を見回っているとですね、最近オーヴァードであることが分かった長月架織さんが……
金生:お。
GM:紳士然とした男性と話し込んでいる様子が見えますね。
金生:架織さんのオープニングであった事を見てるってことね。
GM:そうだね。この紳士は、以前にも架織さんに接触していました。
金生:ふむ……。
GM:見ていると、紳士は彼女から離れていきますね。
金生:――――よし。その紳士に接触してみよう。
GM:おっ、いいですよ。紳士は、タクシーを拾って何処かに行こうとしていますね。
金生:じゃあ、声を掛ける。……振られちゃいましたね?
GM:「……おや、見られていましたか。」
金生:フリマにいた彼女に、随分とご執心みたいじゃないですか。
GM:「彼女の作品は素晴らしいですからな。」
金生:でもちょっと、誘い方が強引なんじゃありません? 彼女、困ってましたよ?
GM:「――――だとすれば、どうするのですかな? UGNの貴男は。」
金生:っ! こっちのことも知ってるのか……。じゃあ、彼女に手を出すの、止めてくれません? って言う。
GM:「随分とまた、直接的ですな。」
金生:あいにく、搦め手は苦手なもんで。
GM:えー……では、紳士は呵々大笑して、「どうするかは、彼女が決めることですよ。」と言い残して、タクシーに乗って去っていきます。
金生:じゃあそれを見送ってから、……とりあえず、あの男のことを支部長に連絡しなきゃな。とスマホを出します。
GM:そんなところでオープニングは終わりにしましょう! 次からミドルフェイズに入ります。