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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【企画進行中】  作者: 呑竜
「第八章:エルフヘイムへ!」

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「冒険の書二百一:船上での修行②」

 マリアベルに呪文の発動練習をさせるかたわら、ルシアンへの指導も行った。 

 といってもルシアンの場合、マリアベルとは異なり剣術の基礎はできているので、そこまでうるさく指導する必要はない。

 

 というか、そもそもこいつは弱くないのだ。

 普通の敵なら、今のままでも十分に戦える。


 ただ、ワシが想定しているのはもっと別の敵。

 それこそ『光の剣』をもってしても危ういような強敵相手なので、指摘もより細かい部分になる。


「ルシアン、おまえに足りないのは『バインド』の技術だ」


「バインド? 初めて聞いたが……」


「バインドというのは言うならば剣と剣を密着させた状態から勝ちにいく技法で、押し引きや力の角度を変えるなどして相手を崩すための手段のことだ。そこで問題なのは、おまえの武器である『光の剣』には重さが無いことだ。重心も剣の柄にあるため『押し』ても相手に圧がかからない。つまり押すことで優位に立つのは難しく……」


「だからこそ逆に、『引き』で優位に立つ。ということかい?」


「うむ、その通りだ。例えばこう――」


 ワシはうなずくと、魔法の三叉矛『海神の怒り(メーレスゴッド)』を手元に呼び出し、ルシアンの光の剣と打ち合わせた。

 鍔迫つばぜり合いの格好のまま、グイグイと押していく。


「ほれ、どうだどうだ? 上手く返してみせい」


「くっ……な、なんでこんなに圧力があるんだっ?」


 最初は余裕ぶっていたルシアンの顔つきが、一瞬で変わった。

 非力なエルフの小娘然としたワシの見た目からは想像もつかなかったのだろう圧に押され、じりじりと後退していく。

  

「ほれほれ、頑張って押し返さんと、どこまでも追い込まれるぞ?」


 グイグイ、グイグイ、グイグイ。

 必死に踏ん張ろうとするルシアンを、ワシは体ごと押し込んでいく。


「ほれほれ、ほれほれ」


「くっ……全然勝てないっ?」


 グイグイ、グイグイ、グイグイ。

 完全に追い込まれ、船の縁に押し付けられたルシアン。

 その首に、三叉矛に押しやられる形となった光の刃が迫る。


「ぐううう……っ?」


 このままいけば、自分の剣で首を斬り落とされて死ぬ。

 かといって、刃を消せば即座に三叉矛の餌食となる。

 どちらをとっても死あるのみ。

 そんな状況まで追い込まれたルシアンは、堪らず悲鳴を上げた。


「わかった、わかった、僕の負けだ」


 敗北宣言を聞いたワシが三叉矛を引くと、ルシアンは堪らずその場に座り込んだ。

 自分の首に傷がついていないか何度も触って確認した後、心底不思議そうな顔で訊ねてきた。


「しかし参ったね。いったい何をどうやったんだい? たしかに光の剣には重さが無いけど、純粋な力勝負なら師匠には負けないと思っていたんだけど……」


「ふん、見た目だけで判断するでない。ワシはただの子どもではないぞ。ジョブは『格闘僧モンク』だし、レベルも百超え。何より武人だ。力の使い方は誰よりよく知っている」


 前世からの積み重ねであることは秘密だ。


「種を明かすなら、テコの原理を使っただけだ。三叉矛は『長い柄を持つ棒状の武器』だからな。支点・力点・作用点と相手の抵抗を利用すれば、体格差を部分的に無視できるのだ。そうなれば、あとはやりよう。レベルが上の、しかも大人の男であったとしても押し勝てるというわけだ」

 

「なるほど、テコの原理か……ん? 相手の抵抗(・ ・ ・ ・ ・)を利用( ・ ・ ・)すれば( ・ ・ ・)と言ったかい?」


「ほお、今のやり取りで気づいたか。偉いぞルシアン、その通りだ」


 教えがいがあるのは教師役として嬉しいもの。

 ルシアンの反応の良さに、ワシは思わず笑みをこぼした。


「テコの原理の大前提は『反作用』。相手側に『踏ん張り』があって初めて成り立つものだ。つまりおまえが押し返さずに引いていたら、今のワシの勝利はなかったというわけだ」


「……っ?」


 よほど衝撃的だったのだろう、ルシアンは目を剥いて驚いた。


「最初に言っただろう? 『引き』が大事だと。おまえに必要なのは相手の力を利用して勝つ技術だ。引いて引いて、相手の力をいなして刃を回し、返す刀で首を斬り落とすのだ」 


「おおおお……っ!」


「うむうむ、嬉しいか。そうだろうそうだろう、『武の真理』を垣間見かいまみた瞬間の喜びというのは格別だものな」


「師匠が僕を褒めてくれた……っ」


「…………ん?」


「偉いぞルシアン、と言ってくれた……っ」


「ああ~……おまえはそこ(・ ・)に感動しとるのね」


 ルシアンは感動で頬を染めている。

 が、それは『武の真理を垣間見た』ことに対する感動ではなく……。


「あの師匠が僕を褒めてくれたっ。つまりこれは僕らの立場が並び立ったということだよねっ? その信頼は情を産み、情はやがて恋へと変わり、最終的に幸せな結婚をする流れが見えたのではっ?」


「あまりにも展開が早すぎるだろう。というかそもそも立場は並び立ってないし、結婚もせんし」


「そうだ、この喜びを日記に書き留めておこうっ。いつか夫婦になったふたりが読み返した時にほっこりと笑い合えるようにっ」


 貴族の息子らしく(?)日記を書く趣味のあるルシアンは、その場で日記を書き始めた。

 

「一応言っとくが、修行はまだ終わりじゃないからな? 引きの技術もそうだが、おまえの場合そうやって精神の安定性を欠くから……光の剣の出力が安定しなくて……ってダメだこいつ、まったく話を聞いておらん」 


 修行の最中に日記を書き始めるルシアン。

 ひたすら呪文の詠唱を練習し続けるマリアベル。

 船上での修行の日々は、そんな風に過ぎていった。


「やれやれ……まあいいか、『深淵樹海ノクスグローブ』到達まではまだ日もあるし。ふたりとも、もう少し鍛えればいい具合の戦士になるだろうし……」


 そう――この時まではまだ、ワシは状況を楽観視していたのだ。

 ふたりの成長が追いつけば、エルフヘイムまでの道のりに問題はないだろうと。

 仮に追いつけなかったとしても、ワシ・ルルカ・チェルチの三人がフォローすれば、たいがいのことはなんとかなるだろうと。


 そう思っていたのだが――

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