「冒険の書百:だいじょぶだいじょぶ」
その日の夜。宿でのことだ。
夕食(宿の名物、『豚・鳥・牛のミックスかつ定食』。チェルチは三人前食った)を終え部屋に戻ったワシは、ルルカとチェルチに情報を共有した。
コーラスの正体とウルガの思惑を知った二人は最初こそ驚いていたものの、すぐに気を取り直すと……。
「そうなんだあ~。考えてみればおかしなことが多かったもんね~。食生活とか。ああ見えて超怪力なとことか。性格もね、あまりにクールすぎるというか……。まああれはあれでカッコいいと思うけど……ほら、わたしにはまっっっったくないものだからさ。何があっても落ち着いてる感じ? 自分を保ってる感じ? ディアナちゃんに通じるものがあるな~、いいな~、と思ってて……」
ルルカは僧侶だが、そういったことに寛容な『豊穣と慈愛の女神セレアスティール』の教徒なので問題なし。
ドジで慌てんぼうな性格を治したいと思っているので、ちょっと尊敬すらしているようだ。
一方、膨れたお腹をポンポンしながらいかにも御満悦、といった顔のチェルチは――
「……げふ。ま、いいんじゃないか? 秘密があるって意味じゃ、そもそもあたいも似たようなもんだしな。あとあれだ。あいつ、家から持ってきたパンしか食べないからさ、余った給食あたいに全部くれるんだ。いい奴なんだよ。だからあたいは、いいと思う。人造人間、問題な〜し」
いい奴の基準が『飯をくれるかくれないか』というのはどうかと思うが、共に『秘密を抱えた者同士』でもあるチェルチも気にはしていない模様。
ま、それに関してはワシも同じだしな。
実はドワーフで、かつての勇者パーティの一員だという秘密を、未だに誰にも言えずにいるし。
「じゃあまあ、ワシら三人としては問題ないということでいいな? あるとすれば……」
「Fクラスのみんなは……ってこと? どうかなあ~……薄々察してはいると思うけどお~……」
ルルカはこめかみに指を当てると、うんうん唸った。
「あれだけ違和感のある振る舞いをしていたらさすがにバレるか。コーラスも特別隠している様子はないし……いやでも、万が一ということもあるしな」
「一応、バレないように隠したほうがいいかな? バレて変なことになっても困るし?」
「うう~む。どうするか……」
ワシとルルカがああでもないこうでもないと議論していると……。
「なんだよ、そんなん本人たちに聞いてみればいいじゃん」
チェルチがあっさり、お気楽な調子で言った。
「本人たちに聞くって、おまえそんな簡単になあ~……」
顔をしかめるワシに、しかしチェルチはあくまでお気楽に。
「だいじょぶだいじょぶ。聞いてみて、『あ、ヤベっ』と思ったら『いえ~い、冗談でした~☆ てへっ☆』っつって誤魔化せばいいだけだから」
王都で流行っているとかいう裏ピース(?)とやらをキメて見せた。
★評価をつけてくださるとありがたし!
ご感想も作者の励みになります!




