表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/154

「冒険の書九:冒険者ギルドにて」

 ギルドのドアを開けると、皆が一斉にこちらを見た。


 魔物を狩り、ダンジョンを攻略し、クエストを達成することで生計を立てている専業冒険者たち。

 酒場も兼ねているギルドの一角で一日の疲れをねぎらっていた連中が、ジロリと無遠慮な視線をこちらに投げてきた。


「なんだ、浮浪者と思ったら『落ちこぼれーズ』かよ」


「うへえ、みすぼらしいカッコだな。どこで何してきたんだよ」


 ワシらの格好に驚き、顔をしかめる者たちと――


「死んだって聞いたけど、生きてたんだな」


「まさか『魔の森』から生還するとはな……」


 ワシらの生存を驚く者たちの二種に分かれた――


「……ふむ、事の経緯を知っていればそういう感想にもなるか」


 ディアナとルルカ、通称『落ちこぼれーズ』が『魔の森』の奥に放置されたのだ。

 生きているどころか帰ってこれるはずすらないと思うのが当然だろう。


「……む? いや待てよ? おかしいな?」


 するとひとつの大きな疑問がでてくる。

 

「なあルルカ。不思議ではないか? 『魔の森』の奥地で追放するなど、普通に考えて殺人行為(・ ・ ・ ・)だ。冒険者にとって、仲間殺しは最大のご法度はっとではなかったのか? なぜこいつらは、普通のこと(・ ・ ・ ・ ・)のように受け止めているのだ?」


 いかに冒険者が自己責任前提の危険な職業とはいえ、ギルド職員までノータッチというのはいかにもせん。

 そんなことを許したら、暴力も殺人もなんでもありの無法者だらけになってしまうではないか。

 そんな疑問を抱いていると……。


「ルルカちゃん!」


 カウンターの奥から、ひとりの受付嬢が走ってきた。


「あ、エーコさん……わぷっ!?」


 ルルカに抱き着いたのは、目元に泣きボクロのある女だ。

 二十代半ばぐらいだろか、女盛りの肉体をギルドの制服に包んでいる(ちなみに豊満な胸に顔が埋まったルルカが苦しそうにもがいている)。


 名前はエーコ。

 目に浮かんだ涙や喜びの表情、ルルカのなつき方からしても、信頼に値する相手のようだ。


「ディアナちゃんも! あなたたち、生きてたのね!?」


 ワシに気づくと、エーコはルルカを離して抱き着いてきた。

 豊かな胸を押しつけるようにして、ぎゅうぎゅう、ぎゅうぎゅう。

 さすがに苦しい。


「う、うむ無事だ。というか胸が……」


「『魔の森』の奥で逃げたって聞いたから心配してたんだけど……。あそこは強い魔物が多いから」


「なんてことはなかったぞ。ワシとルルカで容易たやすく突破できた。と、ともかく離せ」


 胸を押しやるようにして距離をとると、エーコは「ああん……」と名残惜しそうにつぶやいた。


「あそこを容易く突破した? ディアナちゃんとルルカちゃんだけで……んん? ワシ(・ ・)


 そこでようやくワシの変化に気づいたのだろう、エーコは頬に手を当てると。


「っていうかディアナちゃん、言葉づかいおかしくなってない? そんなおじーちゃんみたいな……」


「エーコさんっ。実はディアナちゃん、頭を打って記憶がなくて……っ」

 

 話がこじれる前に、と考えたのだろう。

 率先そっせんして間に入り、かくかくしかじかと事の次第を説明してくれるルルカ。


「言葉遣いも強さもイケメンムーブもおかしいんだけど、間違いなくディアナちゃんなんだよっ」


 まっすぐ、熱意にあふれたルルカの説明。

 そのすべてを聞き終えたエーコは目を閉じると、深くため息をついた。

 いったい何を言い出すのかと思えば……。


「あの『ツンツン』ディアナちゃんが『ワシ』っ子キャラにチェンジか。それはとっても残念なような……これはこれでギャップ萌えのような……はっ? 何言ってるのダメよエーコっ。大事なお友達の危機に萌えるだなんていけないわ……っ」


 と、頭のおかしな発言をしてみせた。


「……おいルルカ、大丈夫かこいつ?」


 顔をしかめるワシに、ルルカは汗をかきかき必死でフォロー。


「え、エーコさんはいい人だよっ。ベルキアのナンバーワン受付嬢で仕事はバリバリだしっ。ナイスバディで男の人にもモテモテだしっ。ただ、時々変なスイッチが入るだけでっ」


 受付嬢エーコ。

 仕事はできるが頭のおかしい変な奴、という認識でいいだろう。


 と、それはともかくだ。


「エーコよ、おまえさっき、変なこと言っておらんかったか? ワシらが『魔の森』の奥で逃げた(・ ・ ・)とか」


「……ん? ああ、しばらく前に戻ってきた『紅牙団』から聞いてるわよ。ダンジョン攻略後に、あなたたちふたりが魔物に怯えて逃げたんだって。探したけど見つからなかったから諦めて帰って来たんだって」


「ああ~………………なるほどな。わかったぞ、あいつらのしていたことが」


 仲間殺しがご法度の冒険者稼業にもかかわらず、どうして『魔の森』の奥で追放なんて真似ができたのか不思議だったが、要はワシらが『自ら逃亡した』ことにしたわけだ。

 そうすれば『紅牙団』は罪を問われず、荷物のスペースが空くからと。


「実に実に、ズルいことを考える奴らだのう~」

 

「え、違うの? あなたたちが逃げたんじゃないの?」 


「ワシが逃げる? バカを抜かせ」


 ワシはふんと鼻を鳴らした。


「武人が逃げたりするものか」


 といっても、以前のディアナしか知らない奴に口で説明してもわかってはくれまい。


「ま、口でああだこうだ言ってもしかたないか。ここは冒険者らしくいくとしよう。実績提示(・ ・ ・ ・)だ」


「実績提示……?」


「おいエーコ、献納品だ。魔物のコアと魔物素材を献納させろ」


「え、ええ……では、こちらへどうぞ?」


 エーコの案内してくれた献納カウンターのテーブルに、ワシは背負い袋の中身をぶちまけた。

 ドサッと、勢いよく。

 この一か月間の狩りの(・ ・ ・)成果を( ・ ・ ・)

新キャラもほどよく頭がおかしいです!

ディアナ(ガルム)たちの狩りの成果は次回のお楽しみ!


★評価をつけてくださるとありがたし!

ご感想も作者の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ